「シアロア」は、マンガ家、ミュージシャンとして活躍する田口囁一のロックバンド・感傷ベクトルのWebサイトで、2011年6月から10カ月にわたり展開されたメディアミックス企画。架空の音楽ユニット・シアロアとそれを巡る人々を描いたマンガ、そしてそのストーリーをテーマにした楽曲が毎月1話と1曲ずつ連載され、話題を呼んだ。
本作がLINEマンガに発表の場を移し、約6年ぶりに再始動することを記念し、ナタリーでは特集企画を実施。感傷ベクトルの成り立ちをはじめ、今もなお多くのファンの心を掴み続ける「シアロア」について解説する。また音楽ナタリーとコミックナタリーではゲスト2組を招き、その言葉を通じて本作の魅力を紐解いていくインタビュー記事も展開していくので、併せてお楽しみあれ。
Introduction
作中曲を実際に作ったら? 「シアロア」の始まり
感傷ベクトルの結成は、同人シーンを中心に活動していた田口が、自身のマンガに作中曲のCDを付けて販売してはどうかと思い立ったのがきっかけ。そのCD制作にあたり、田口は高校時代のバンド仲間・春川三咲にサポートを依頼。2人で手がけた作品は同人誌即売会で好評を博し、その後春川は楽曲だけでなくマンガの制作にも参加することに。
2011年、2人はマンガと音楽の二軸で紡ぐ作品集「シアロア」の連載を自身のWebサイトでスタートする。ボーカル、ギター、ピアノ、作詞、作曲、作画を担当するのは田口、ベースと脚本を受け持つのは春川。1つの作品を異なる手法で表現する形が世間から高く評価されるとともに、Webで活動する覆面バンドということが劇中バンド・シアロアとリンクし話題を呼んだ。
Story
June 2011 ~ March 2012
架空の音楽バンド・シアロアを通した青春群像劇
「シアロア」は、基本的に1話完結の連作短編集。さまざまな境遇に置かれた登場人物が、架空の劇中バンド・シアロアの生み出す音楽に影響を受けることで物語は動いていく。
ボイスドラマ化された3つのエピソード
ここでは物語の中心となるシアロア、そして彼らに心を掴まれたキャラクターたちの主要エピソードを紹介する。ボイスドラマのエンドロールでは感傷ベクトルによる楽曲も流れるので、併せてお楽しみあれ。
「ストロボライツ」
親や教師からの期待を少し窮屈に感じていた優等生の東幸久(CV:木村良平)は、ある日突然、クラスの問題児・渡瀬速水(CV:細谷佳正)からバンド結成の誘いを受ける。学校でゲリラライブをしようという渡瀬の提案に、始めは乗り気でなかった東だったが、その誘いの理由を聞いて、彼の心は大きく揺れ動く。
「シルク」
小西康樹(CV:宮野真守)と森澤香織(CV:佐藤利奈)は2人きりの天文部部員。森澤は小西に聴かせてもらったシアロアの曲に背中を押され、悩んでいた海外留学を決断した。彼女に対し恋心を抱きながらも、なかなか思いを伝えられずにいた小西。そして訪れた最後の天体観測の日、それぞれの想いを胸に、2人が交わす言葉は……。
「ラストシーン」
森澤の留学後、小西1人きりになった天文部に後輩の篠原由紀(CV:高橋美佳子)がやってきた。憧れていた小西と距離を縮め、ゆるく楽しい部活動を続けていた由紀。友人の千波(CV:生田善子)にも「眺めてるだけで満足」と言い張る彼女だったが、その恋心は次第に、大きく、切なく……。そして、由紀は彼を初めての天体観測に誘う。
New Story
December 2017~
再び紡ぎ出される、「シアロア」の物語
2017年12月初旬、LINEマンガにて再び連載が始まった「シアロア」。初回には第1話「ストロボライツ」とともに、第0話「リユニオン」が公開された。「リユニオン」は、大学生となった「ストロボライツ」の東と「シルク」の小西の、“変化”をテーマに描いた新作エピソード。本作はLINEマンガのアプリで閲覧すると、同名タイトルの新規書き下ろし曲が流れるショートムービーも再生される。約6年ぶりに再始動した物語の行く末を、期待しながら見守ろう。
2018年1月18日更新
Comments
「シアロア」の連載開始を記念し、数々の著名人から応援コメントが寄せられている。
(順不同、敬称略)
木村良平(声優)
演じて数年たつにもかかわらず、タイトルを聞いた瞬間、引き戻されました。
久しぶりに読んで感じたのは、この作品が持つテーマや空気は、色褪せないということ。
ぜひ、彼らの楽曲を聴きながら楽しんでほしいです。
Neru(ボーカロイドプロデューサー)
物語上のシアロアという存在はさも少年等の揺蕩であり、 物語以上に実体をもって姿を表すシアロアという音楽は、 その現象どおり少年等の心を私達の目の前に強く映し出します。
そして、音楽という何者でもなく、何者にもなれず、何者にもなり代わらない容器。シアロアは、少年等であり私達そのものなのかもしれません。
じん(ボーカロイドプロデューサー)
『音楽』と『物語』は繋がると確信させてくれた作品です
春川三咲(アーティスト)
音楽や漫画に夢中になることに意味なんて無い。
そうかもしれませんが、そうじゃないかもしれない。
それでいいのだと思います。
横槍メンゴ(マンガ家)
コミカライズじゃ得られない、メディアミックスじゃ得られない、極限の一体感、その理由は「本人が描いている」に尽きるんじゃないでしょうか?
同じ音が、空気が、まったく違う媒体にも流れることを証明した貴重な漫画表現です。必読です。
ミト/クラムボン(アーティスト)
『シアロア』の存在を知ったのは結構早い方だと思う。
ネットで漫画とそのテーマソングを作って配信している若いチームがいると聞いて、即座にその音楽と漫画を読んだ。
そのあと、その書いている人間と楽曲を制作している人間が同じと聞いて、すこぶる嫉妬した。
中学の頃自分が思い描いてた漫画と音楽を自身の手で完結するという夢を、何世代も後の人たちに軽々とやられてしまったことが悔しかった、、、
僕はとにかく、画が上手くなくて、それでサークルも途中で抜けてしまったものだったから。
久々に読んで、あの時のヒリヒリするような才能は、今でもしっかりこの漫画に宿っているのを確認する。
そして、思う。
ああー!!いーーーなあーーーーーー!!!好きだわしょうがないわ!!!!
って。
生田善子(声優)
シアロアのLINEマンガ連載おめでとうございます!
私はボイスドラマで千波ちゃんを演じたこともあって「深海と空の駅」が一番好きです!それぞれのお話がどこかで繋がっていたり、ちょっと考えさせられたり、本当に魅力的な作品だと思います!
赤坂アカ(マンガ家)
シアロアという作品は美しさや儚さの形を纏った叫びだと思っています。
耳を傾ければ、押し殺していた幾つもの悲鳴が聞こえてくるはずです。
きっとこれが僕らの、あるいはあなたの「あの頃」です。
Annabel(アーティスト)
「退屈の群像」のコーラスを担当したとき、実はまだ漫画の内容は知りませんでした。
それでも、とてもいい曲だなと思っていましたが完成して曲と一緒に作品を読んだ時、「ああ、こんな物語があったんだ」と楽曲にとても奥行きを感じたのを思い出します。
自分たちと変わらぬ誰かの物語や情景をはっきり浮かべながら読み聞く「シアロア」はエモーショナルに心に響く体験として新たな可能性を感じています。
そして、あの子たちがその後どうなったのか…新作が待ち遠しいです。
佐藤利奈(声優)
音楽の中にも物語があり、その曲がまた漫画の物語たちに繋がって…『シルク』大好きなお話です。
シルクの序奏を聴くと、収録が昨日のことのように思い出されます。
心の柔らかいところがギュッとなる、シアロアの物語たち。
今回新作も描かれるとのこと!楽しみにしています!!
ゆーまお/ヒトリエ(アーティスト)
人の創造物はとても不思議なもので、目を通して聴いた人は一目瞭然『シアロア』の漫画も曲も同じ統一された田口囁一の表現方法を感じることができる。
友として、そして尊敬する同世代のアーティストとして、彼の透き通るような世界観に触れてみて欲しい。