shallm「夢幻ホログラム」インタビュー|18歳の実力派ボーカリストlia初インタビュー (2/2)

事務所の先輩がレコーディング現場に

──「夢幻ホログラム」はレコーディング直前まで歌詞を書いていたとのことでしたが、レコーディング本番ではすんなり歌えました?

実はレコーディング当日にAdoさんが応援に来てくださったんですよ。でもレコーディング中、私はブースにいたので、来てくださったことに最初は気付いていなくて。私が「Adoさんならどうやって歌うんだろう?」「Adoさんならもっと上手に歌えるのに」と言っていたのをずっとご本人に聞かれていたんです。しかも、この曲はAdoさんのライブを観に行ったときのことを書いているので、余計に恥ずかしくて1人で騒いでいました。

──その後のレコーディングはどうでしたか?

もう、どうやって歌えばいいかわからなくなっていたんですけど、そのあとしばらくしてAdoさんが帰られて……。再度レコーディングに向き合いました。それでも、自分で書いておきながら難しい曲なので歌い方に迷ったんですけど、サウンドプロデューサーのNaoki Itaiさんにディレクションしていただいたおかげでなんとか歌い切れました。

──Itaiさんはどのようなディレクションを?

基本的に「今のめっちゃいい。その感じでもう1回やってみよう」みたいな前向きな言葉をくださって。それに対して私も「あ、はい!」と、いいテンポで録っていけたから、無事終われたというか、私だけで録っていたら絶対に1日じゃ終わらなかったでしょうね。

──「自分で書いておきながら難しい曲」とおっしゃいましたが、具体的にどんなところが?

特にサビの4行が、1行ごとの間隔が短すぎて「どうしよう? 息継ぎができない」「あれ? これひょっとして歌えない?」とめっちゃ焦りました。歌詞を書くのに必死で、もちろん書きながら口ずさんだりはしていたんですけど、完成した歌詞をもとに歌を練習する時間があんまりなくて。いざブースに入ってから「あ、そっか。レコーディングって、上手に歌わなきゃいけないんだ……」と。だからレコーディング中はずっとギリギリで、ひいひい言っていましたね。

──「夢幻ホログラム」の編曲クレジットもItaiさんになっていますが、liaさんから何か要望を伝えたりは?

本当に、口だけ出させてもらった感じですね。例えば「夢幻ホログラム」の歌い出しはギターのみの伴奏になっていますけど、当初はもっといろんな音が入っていて華やかだったんですよ。でも、私としては初々しさやギターロック感を出したかったので「ここはあまり音を足さずに、ギター1本でどうでしょう?」みたいなことを言った記憶があります。

lia

バンド名「shallm」に込められた力強い意志

──liaさんは「シンガーソングライター・lia」ではなく、あくまで「shallm」というバンドのボーカリストとして歌っているわけですが、バンドという形態に何かこだわりが?

基本的に、考え方がバンドマンなのかもしれません。ソロシンガーとして歌っていくよりも、バンドプロジェクトで歌っていくほうが性に合っているというか。あんまり“私”という個人を前面に出したくなくて、それよりも曲を聴いてほしいという気持ちがあります。

──ボカロやアニメソング以外に、バンドも聴いていたんですか?

はい。Cö shu Nieや凛として時雨、amazarashiのようなバンドが好きです。

──わりとクセの強いバンドが好みなんですね。なんか、わかる気がします。

歌も「シャー!」みたいな感じで、すごくカッコいい。

──ちなみにバンド名「shallm」の由来は?

shallmは英語の「shall」と、フランス語、ドイツ語の「charme(シャルム)」を組み合わせた造語で。まず「charme」には「魅力」という意味があって、一方の「shall」はいろんな意味がある中で、その状況が必然的に起こることを示す単純未来(「~だろう」)と、強い意志(二、三人称に対して「~させよう」)という意味合いを引っ張ってきて、両者をくっつけて「必ず聴いてくれる人を歌で魅了する」という思いを込めました。

──「charme」という単語はご存知だったんですか?

いや、全然知らなくて、とにかく響きがきれいな言葉を調べていたときにたまたま見つけて「シャルム? え、すごくかわいい!」と思ったんです。私は名前を付けるのも苦手なので、自分の中でいくつか候補ができてもそのたびに自問自答してとても悩んだんですけど、「shallm」という造語ができた瞬間に「あ、いいじゃん!」と、サクッと決まりました。

歌とキャラのギャップはイメージ戦略として成功!?

──「夢幻ホログラム」はジャケットもインパクトがありますね。

色田さんという、私が大好きなイラストレーターの方に描いていただきました。ホログラムのようなキラキラ感と、ステージに立っている女の子のアイドル的なキラキラ感をビビッドな色味で表現してほしいとか、構図に関しても色田さんの描く女の子の表情がちゃんと見えるように、引きではなく寄りでとか、そんなことをお願いしました。もう、大満足です。

shallm「夢幻ホログラム」ジャケット

shallm「夢幻ホログラム」ジャケット

──shallmの文字がだいぶ小さいですが、いいんですか?

最初は曲名とバンド名が真ん中にバーンと出ていたんですけど、それだと女の子の顔よく見えないので小さくして右下にずらしてもらいました。ちなみに曲名とバンド名の文字は色田さんの手書きです。すごくかわいい。

──YouTubeに上げているカバー動画にも、同じく色田さんのイラストが使われていますね。

はい。カバー曲に関しては、楽曲の情報やラフミックスの音源をお渡しして、そこからイメージしたものを自由に描いていただいていて。完全にお任せなんですけど、いつも想像の100倍いいイラストを描いてくださるので大大大満足です。キャラクターのお顔も、色味も、線の描き方も全部好きです。

──liaさんはサウンド面だけでなく、ビジュアルやアートワークに関しても自分の見せ方や見られ方を考えているタイプですか?

けっこう考えていますね。もともとファンタジー系のアニメが好きなので、アートワークとかも非現実的な感じにしたくて。歌詞も、「夢幻ホログラム」はわりと現実寄りですけど、ほかの曲では現実と非現実が混ざっていると思います。私が曲で伝えたいことは現実的というか日常的なことだけれど、モチーフを非現実的なところから持ってきちゃうから、そういう現象が起こっているのかもしれません。

──音源で聴いたliaさんの歌声はクールかつパワフルでしたが、今こうして対面しているご本人は意外とふわふわしていて、けっこうギャップがあります。

本当ですか? それはある意味、イメージ戦略としては成功しているというか、自分としてはカッコいい女になりたいんですよ。でも、まだまだ修行が足りなくて。もっと落ち着いていて、あんまり笑わないタイプの女性に憧れます。

──読者の方には伝わりにくいかもしれませんが、お話ししているときはほぼ笑っていますよ。

しゃべるとすぐにボロが出ちゃうんですよ(笑)。なので、人前に出たときが心配です。

──でも、今後はライブ活動などもなさっていくわけですよね。

はい。ただ私は軽音部のときもMCが本当にできなくて。だからライブをするなら、MCはナシのほうがいいかもしれないです。私自身、MCナシで曲だけ淡々とやるバンドが好きなので、shallmもそういうバンドになりたいなあ。

──そのライブに関して、「夢幻ホログラム」の歌詞に「向かっていこうあのステージへ」とありますが、立ちたいステージはありますか?

米津玄師さんが初ライブをした代官山UNITで、米津さんと同じ位置に立ちたい……。

──聖地巡礼みたいですね。

自分でも気持ち悪いなと思ってちょっと引いているんですけど、米津さんの通った道を私も通れるかもしれないと思うと、とてもモチベーションが上がります。もちろん「夢幻ホログラム」の歌詞を思いついたさいたまスーパーアリーナのステージにも、いつか立ってみたいです。

プロフィール

shallm(シャルム)

自ら作詞作曲を手がける18歳のボーカリストliaによるクラウドナイン所属のバンドプロジェクト。バンド名はフランス語およびドイツ語で「魅力」を意味する「charme」と、英語の「shall」を組み合わせた造語で、「必ず聴いてくれる人を歌で魅了する」という思いが込められている。初のオリジナル曲である「夢幻ホログラム」を2023年3月に配信リリースした。なおliaはshallmのYouTube公式チャンネルにて、さまざまなカバー動画を公開している。