shallm、メジャーデビュー曲の主人公はセンチメンタルな“ラッキーガール”

shallmがメジャーデビューシングル「センチメンタル☆ラッキーガール」を9月18日に配信リリースした。

shallmは18歳のボーカリストliaが中核を担うバンドプロジェクト。3月に初のオリジナル曲「夢幻ホログラム」、5月に2作目となるバラード「短夜の星」と立て続けに楽曲を発表したのち、このたびユニバーサルミュージックのVirgin Musicからメジャーデビューすることとなった。メジャーデビューシングル「センチメンタル☆ラッキーガール」は、現在MBSほかで放送されているドラマ「女子高生、僧になる。」のオープニング主題歌。軽快なビートが印象的なポップなラブソングだ。

音楽ナタリーではliaにインタビューを行い、ドラマの世界観に寄り添って作り上げたというメジャーデビュー曲について話を聞いた。

取材・文 / 須藤輝

shallmのバンド像を作りたくない

──liaさんは今年3月、shallmとして初のオリジナル曲「夢幻ホログラム」をリリースされましたが、気持ち的に変わったことなどはありますか?

今までカバー曲はYouTubeにアップしていたんですけど、やっぱり自分で書いた曲を発表したときは緊張感がまったく違って。聴いてくれた人からどんな反応があるのか、そもそも反応自体があるのか不安だったんです。でも「『夢幻ホログラム』を聴いて『がんばろう!』という気持ちになりました」といったコメントをもらって「えっ、本当に!? うれしい!」みたいな。

──「夢幻ホログラム」は不安を抱えながらも憧れのステージに向かっていこうとする曲でしたからね。

そうなんです。私自身にとってもこの曲は、聴くと「がんばろう!」と奮い立つ曲になりました。

──その後、5月には2ndシングル「短夜の星」をリリースされました。「夢幻ホログラム」がアッパーなギターロックであったのに対し「短夜の星」はエモーショナルなバラードで、ソングライターとしてもボーカリストとしても幅の広さを示せたのでは?

だとしたらうれしいです。shallmはバンドなので、当然バンドサウンドが基盤になっているんですけど、その中でいろんな雰囲気の曲を作りたいなって。どんなバンドにも、そのバンド固有のバンド像みたいなものがあると思うんです。例えば「この曲は、めちゃめちゃこのバンドっぽいよね」みたいな。そういうバンド像をあんまり作りたくないというか、あえて作らないのも面白いんじゃないかと今は考えていて。だから1stシングルと2ndシングルでそれぞれタイプの違う曲を出せたのは、自分としては満足しています。けっこう、自分の音楽の好みもコロコロ変わるので。

──前回のインタビューでは、好きなシンガーソングライターとしては米津玄師、好きなバンドとしてはCö shu Nieや凛として時雨、amazarashiを挙げていましたが……(参照:shallm「夢幻ホログラム」インタビュー)。

もちろん皆さん引き続き好きなんですけど、今すごく聴いているのはChilli Beans.ですね。かわいくてカッコよくて、もう大好きです。それからフレデリック、ハヌマーン、GLIM SPANKYなど、いろいろハマっています。以前は好きになった曲を何度もリピートして聴いていたんですけど、最近それをやめまして。サブスクの自動再生でいろんな曲を発見するのを楽しんでいます。

それって、恋じゃん?

──メジャーデビューシングル「センチメンタル☆ラッキーガール」は、「夢幻ホログラム」とも「短夜の星」とも違う、ポップでダンサブルなナンバーですね。

しかも、ラブソングです。

──先ほどご自分でもおっしゃった通り、バンド像を固定させないことに成功していると思います。この曲はドラマ「女子高生、僧になる。」のオープニング主題歌ですが、ドラマの内容に合わせて書き下ろしたんですか?

歌詞は完全にドラマの内容に寄せているんですけど、曲はストックしていた中にちょうどハマりそうな曲調のものがあったので、それを使いました。「女子高生、僧になる。」はタイトルの通り、女子高生がお寺を再建させるお話なんですけど、とてもかわいくてハートフルなコメディで。

──リリース資料のコメントに、このドラマの内容は「自分にも重なる部分がとても多い」とありましたが、具体的には?

ドラマの主人公の(下白石)麦ちゃんも私も、センチメンタルでラッキーなガールなんですよ。麦ちゃんは高校3年間ずっと推し活をしてきたので進路が決まっていないんですけど、お寺の住職をしていたおじいちゃんが亡くなってしまって。しかも同じタイミングで、推していたアイドルグループが不祥事で活動休止してしまうんです。そのせいで落ち込んでセンチメンタルになっていた麦ちゃんの前に、すごくイケメンに成長した(磯野)柊くんという幼馴染が現れて……。

MBSドラマ「女子高生、僧になる。」ビジュアル

MBSドラマ「女子高生、僧になる。」ビジュアル

──それがラッキー?

そうです! 麦ちゃんのおじいちゃんには借金があって、後継者もいなかったからお寺を手放す方向で話が進んでいたんです。でも、柊くんはおじいちゃんに憧れて仏教系の大学に進んで、お坊さんになる資格を持っているという。そんな柊くんが麦ちゃんの新たな推しになるんですけど、彼はアイドルじゃなくて幼馴染という、手が届きそうな推しなので「それって、恋じゃん?」と(笑)。

──だからラブソングに。liaさんは推し活はしているんですか?

今は特にしていないです(笑)。でも、恋はいいものだと私も思うし、その気持ちを大事にしながら、かつこのドラマの主題歌にふさわしくなるように最後は絶対に明るく、前向きになれる感じで終わることを意識しながら歌詞を書きました。

──「夢幻ホログラム」と「短夜の星」の歌詞はシリアスでしたが、「センチメンタル☆ラッキーガール」の歌詞は、コミカルまではいかないにせよ、だいぶカジュアルですよね。

やっぱりドラマの主人公が女子高生ですし、コメディですし、気軽さみたいなものは必要かなと。

──サビに「押せない送信もどかしくって」とありますが、こういう経験は誰にでもありそうで。

もどかしいですよねえ。書いては消し、書いては消し……みたいな。私自身は、この歌詞にあるようなかわいい恋はしたことがないんですけどね(笑)。

私もラッキーガールなんです

──「センチメンタル☆ラッキーガール」の歌詞にはliaさんの実体験が反映されているのかなとも思ったのですが、必ずしもそういうわけではない?

部分的に……Dメロの歌詞に「朝見た星座占いは一位のラッキーガール」とあるんですけど、私は過去に、朝たまたまテレビで見た星座占いで自分の星座が1位だった日に、今までやったことのないことに挑戦してみまして……。

──けっこう思い切りがいいんですね。

いつでもよかったのですが、ちょうど星座占いが1位だったので「じゃあ今日じゃん! 運命じゃん!」と。なんかスイッチが入って挑戦してきました。だから、私もラッキーガールなんですよ。本当にラッキーすぎて、若いうちに運を使い切って早死にするんじゃないかとたまに心配になります。

──例えばほかにどんなラッキーが?

それこそメジャーデビュー曲がドラマの主題歌になるなんて、ラッキー以外の何物でもないですよね。もう飛び上がるぐらいうれしかったですし、それを言ったら、そもそも今こうして音楽活動をできているのもいくつものラッキーが重なった結果なんです。あと今日だって、台風が直撃しているのに、今は雨が弱まっていますよね(※取材は9月上旬に実施)。

──ああ。朝は豪雨で「今日の取材、延期になるかも」と思っていたのですが、昼過ぎに家を出る頃にはほぼ止んでいました。

そういう天気運とかもよくて。ほかにも、完全に遅刻するタイミングで家を出たのに、なんか電車も遅延していたりして、うまいこと噛み合ってギリギリ間に合うとか、そういうことがすごく多いんですよ。だから私はラッキーに生かされていると言っても過言ではないかもしれません。

──では、センチメンタルは?

急にセンチメンタルになることもよくあって。例えばリリースやライブが決まっても「私にできるかな……」と自分に自信が持てなかったり、ふと将来のことを考えて「この先、どうしよう……」と漠然とした不安に襲われたり。

──将来か……。

あ、深刻に受け止めないでください! 来ちゃう、センチメンタルが来ちゃう(笑)。という感じなんですけど、最終的に「まあ、私はラッキーだからいけるだろう」となって終わります。つまりは「センチメンタル☆ラッキーガール」なんですよ。