ナタリー PowerPush - SHAKALABBITS

バンドの今が凝縮された“近況報告”シングル

結成13年目を迎えたSHAKALABBITSは、インディーズとメジャーを共に経験し、さまざまな局面を乗り越えて、ポップかつタフなD.I.Y精神でシーンに強い根を張っている。7月には震災の延期公演を収録したライブ作品「密林ジャングルジムTOUR 2010-2011」と、バンドの結束と楽しい現場を物語るバスツアーの様子を収めた「2010年サラペのBUS TOUR」という2種類のDVDもリリースしたばかりだ。

そんな彼らが1年3カ月ぶりにニューシングル「mademoiselle non non」をリリースする。UKI(Vo)のユニークなストーリーテリング、最近のUKバンドシーンにも符号するようなシンプルでキレのいいサウンドとアレンジ。インタビューでは、そんなSHAKALABBITSならではの新曲の話題を軸に、近況にも迫ってみた。

取材・文 / 石角友香

もっとみんなで上を向いていかないと

──7月に秋田の「OGA NAMAHAGE ROCK FESTIVAL vol.2」に出演されたんですよね。東北のオーディエンスは元気でしたか?

UKI(Vo) 元気でした。

MAH(Dr) 前向きだったね? 前のめりな感じでした。

UKI そこで出会った地元のおじさんたちもいい人で。すごく楽しくて明るくて、会場の港まで車でつれていってくれた陽気なおじさんとか。

──フェスの関係者ではなく?

TAKE-C(G) 多分地元でフェスを手伝ってくれてる人だと思うんですけど、僕らが宿泊していたホテルに迎えにきてくれて。地元トークで盛り上がったり。

アーティスト写真

UKI ライブが終わったあともイカやサザエを焼いてくれながら、「ビール飲まなくていいのか?」って言ってくれたり。そういうのがすごくあったかくてうれしかった。

──宮城や岩手、福島ほどではないにしろ、大変な状況の中だったと思いますが。

UKI 秋田の人たちには、そこまで被災してないからっていう、罪悪感にも似たような気持ちもあったらしいんですよ。でも実際、秋田の旅館なんかも苦しくなってたのは確かだし、街全体が元気なくなっちゃったのは他県と変わらないと思うんですよ。だけどみんなすごく明るくって、「東北がんばろう! 日本がんばろう!」って気持ちを感じたというか、すごい前向きだったのが伝わってきました。

──SHAKALABBITSは無類のライブバンドで、全国各地を回ってますけど、今回改めて感じたことはありますか?

MAH なんもないときより元気でしたよ。

TAKE-C でもそうあるべきだよね。今の状況を見て縮こまっちゃう人もいると思うんですよ。でも今はホントに元気にならなきゃいけないときだから、もっと上を向いていかないと。で、それをみんなでやればその分だけ被災地にパワーを送れることになるし。

MAH 一番の近道だよね、それしかないと思うし。

4月10日もみんなで「MONSTER TREE」を歌いたいと思った

──さて、7月にはライブDVDが2種類リリースされて。特に「密林ジャングルジムTOUR 2010-2011」に収められているツアーファイナルの新木場STUDIO COASTのライブは震災で延期になった公演で、バンドとしての責任感のようなものも映像から伝わってきたんですが、ご本人たちとしては期するところはありましたか?

UKI まず、4月10日に振替スケジュールを押さえてくれてありがとうって、スタッフに対して思いましたね。ホントは3月12日にやるはずだったので、震災が起こった当日はスタッフは会場で準備をしていて。だからライブをやる、やらないという連絡もうまくつかなくて。でもそんな中、すぐに延期公演のスケジュールを押さえてくれて。延期公演のときも「やっちゃダメでしょ」みたいな雰囲気が周りにまだあったのに、うちのスタッフは「絶対にやる」って言ってくれて、私たちもそう思ったし。それが4月10日の会場に来てくれたみんなにも伝搬して、「何かしたいよね、何か自分にできるよね? なんか信じたいよね」っていう気持ちが会場全体にあふれ返っていたのが、映像を観ても伝わると思うんですよ。実際にライブしててもすごいエネルギーを感じて。うん、なんか言葉では言い表せないくらいすごくキラキラしたものが渦巻いてたなって思います。

──しかも演奏したのは脅威の31曲! 「うちら31歳だから31曲」っていうすごい理由もあり。

UKI それは後付けですけどね(笑)。

MAH 32歳で32曲は、多分やんないですけどね(笑)。

アーティスト写真

──年を重ねるほど、自分の首しめるみたいな(笑)。

UKI たまたま決めてたセットリストが30曲で。「MONSTER TREE」をみんなで歌うっていうのは、前のツアーの野音でやったんだよね? で、そのときはすごく天気が悪くて(笑)。でもそのとき、空に向かって歌ったことで元気になったし、明るい気持ちになったので、4月10日もみんなで歌いたいなと思ったんです。

TAKE-C その場面をiPhoneのカメラで撮って、次の日すぐYouTubeにアップして。普通だったらDVDのリリースも決まってたし嫌がると思うんですよね、レコード会社の人も。でもあのタイミングでアップしたからこそ、みんな観てくれたし。それをもう1回、ちゃんとしたカメラの映像でDVDにできたのが良かったです。

──確かに行けなかった人も気持ちを共有できたと思います。

MAH 「やれることが少ない」って考えちゃうと、どんどん少なくなってっちゃうけど、「やれることは何があるんだろう?」って想像すると結構たくさんあるから、ミュージシャンでも。政治家さんじゃなくても、ちゃんと想像して、被災者が何を求めてるのかとか、どうしたら被災地の助けになるかとか考えれば、やることはいっぱい出てくると思う。うん。

ニューシングル「mademoiselle non non」 / 2011年8月24日発売 / 1500円(税込) / PCCA-03465 / PONYCANYON

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CD収録曲
  1. mademoiselle non non
  2. Blue Flamingo
DVD収録内容
  • 「mademoiselle non non」Music Video
  • 「mademoiselle non non」Music Video メイキング

ライブツアードキュメントDVD「2010年 サラペのBUS TOUR」 / 2011年7月6日発売 / 3900円(税込) / PCBP-52066 / PONYCANYON / Amazon.co.jpへ

ライブDVD「密林ジャングルジム TOUR 2010-2011」 / 2011年7月6日発売 / 3900円(税込) / PCBP-52067 / PONYCANYON / Amazon.co.jpへ

SHAKALABBITS

SHAKALABBITS(しゃからびっつ)

1999年に結成された、UKI(Vo)、TAKE-C(G)、KING(B)、MAH(Dr)の4人からなるロックバンド。パンキッシュなサウンドとポップなメロディ、UKIのキュートなボーカルがファンから高く支持されている。インディーズでの活動を経て、2002年にシングル「ROLLIE」でメジャーデビュー。2004年には全国ホールツアーを敢行し、翌2005年に初の日本武道館公演を成功させる。2006年にも全国ツアーの一環として、自身2度目となる武道館ライブを実施し即日ソールドアウトを記録。現在もライブ活動を精力的に行っており、その圧倒的なパフォーマンスが幅広い年代から支持されている。