音楽ナタリー PowerPush - SHAKALABBITS

AXでつかんだもの、Hallelujah Circusの未来

SHAKALABBITSが11月19日にライブDVD作品「SHAKALABBITS LIVE DVD『THANK YOU★AX!! -LAST PARTY-』」をリリースする。これを記念してナタリーではインタビューを実施。閉館が決まった東京・SHIBUYA-AXで単独公演を行うことになった経緯や事前のセットリスト公開に踏み切ったわけ、今年6月に彼女たちが立ち上げた会社「Hallelujah Circus Inc.」の内情などをSHAKALABBITSメンバーから赤裸々に語ってもらった。

取材・文 / 清本千尋 撮影 / 浜田大士

「AXやる? 一応押さえてるけど」

──5月にSHIBUYA-AXで開催したライブ「THANK YOU★AX!! -LAST PARTY-」がDVD化されます。今ライブを振り返ってみてどうですか?

SHAKALABBITS

UKI(Vo) もうやれないかなって。

──え?

UKI いや、いろんな意味でもうやれないライブなんですよ。セットリストの事前公開をこれから先やるかわからないし、何よりAX自体がなくなってしまったのでもうやりたくてもやれない場所になっちゃったし。

──AXでライブをやることになった経緯を聞かせてもらえませんか?

UKI AXがなくなるっていうのを耳にして思い出の場所がなくなっちゃうのはいやだなと思ってたときに、ファンだったり周りの友達だったりが「SHAKALABBITSをAXでもう1回観たい」って言ってくれたんですよね。でも期待に応えたい気持ちはありつつも、ちょうど私たちがレーベルを離れたタイミングだったので、スタッフは誰もいないし今の自分たちだけではSHIBUYA-AXという大きなハコを動かすのは難しいんだろうなっていうのを思っていて。

MAH(Dr) で、これからどうする?みたいな話をしてたときに、今までずっとSHAKALABBITSのライブ制作を手伝ってくれてたスタッフが「AXやる? 一応押さえてるけど」って声をかけてくれて。まあやれんだったらやりたいけど、俺らお金もないしできるのかなって。

TAKE-C(G) そうそう。現状俺ら4人しかいない状況なんだけど……っていう。

──そういうきっかけがあったんですね。UKIさんがさっき言っていた「大きなハコを動かすのは難しいんだろうな」っていうのは、単に人手が足りないということですか?

UKI(Vo)

UKI いや、それだけじゃないです。やることになっても全然お客さんを集められないのは悔しい。だからこれまでにライブ制作に関わってくれたスタッフみんなに声をかけて、それぞれできる限りの宣伝を全部しようって決めて。で、どうせやるならもっとみんなを驚かせることをしたいなって思ったんです。でも予算はあまりないから、ほかの人がやってないことで何かないかなって話してたときにセットリストを事前に公開するっていうアイデアが出て。「それ面白いね! Tシャツの背中に書いちゃおうよ!」って(笑)。

TAKE-C 当日お客さんは前の人の背中を見て次の曲を確認するっていうね(笑)。

MAH もうその1本しかないライブだったからやれたことだよね。どんなに好きなアーティストでもライブDVDとかを買うときってセットリスト見てから買うじゃないですか。そういう感覚でしたね。

AXはファンが戻ってくるきっかけになった

──ライブの開催や内容を発表してみて反応っていかがでしたか?

TAKE-C やることを知らなかった人とかひさしぶりに観たい!っていう人とかがどんどんそこに食いついていく感じ、よかったよね。これはイケるかもしれないなって。

──そのSHAKALABBITSのライブがご無沙汰だった人たちっていうのは、セットリストが公開されて自分の聴きたい曲があったから来てくれたということ?

UKI そうですね。みんなやっぱりいろんな音楽に心が動くから当たり前に離れていったりもしますよね。今でもよく「SHAKALABBITSまだやってたんだ」って言われるんですけど、うちらが音楽をやるのは息してるのと同じことだし。だから今回のライブで離れていた人たちも来てくれたらいいなって思ってました。

MAH(Dr)

MAH まあ昔聴いてくれてた人たちが歳を重ねて家庭を持ったりとか、仕事が忙しくなったりしたっていうのもあるんですよね。でも俺らは16年間365日SHAKALABBITSやってるわけですよ。ちょっと悲しさもありますけど、ファンと俺らのお互いのタイミングがあったときにライブに来てくれればいいなと思っていて。

UKI だからちょうど出産を終えて復帰みたいな感じでママたちが来てくれたり。

MAH まあAXは戻ってくるきっかけになったかなって。俺らは変わらず昔の曲とかもやってるんですけど、1回来なくなるとやっぱり「どうせ昔の曲なんてやらないんでしょ?」みたいに思われたりもするだろうし。

UKI 仕事バリバリやって忙しくってライブはなかなか来れなかった人たちも、AXにはやっぱり照準を合わせて来てくれたんですよ。

“みんなが思うSHAKALABBITS”を続けていたら

──そのしばらく来てなかった人たちの多くはSHAKALABBITS=スカパンクのイメージが強かったと思うんです。でもSHAKALABBITSは「CRIMSON SQUARE」(2005年10月発売)とか「嘘を混ぜ込んだ真実のスープ」(2007年3月発売)みたいなスカパンクではない曲を発表していた時期もありますよね。

UKI 裏打ちも作品に織り交ぜてましたけどね。でも私たち「CLUTCH」(2004年2月発売)を出した後くらいの頃って“脱メロコアしたさ”みたいなものもあって。ファンが求めているものはわかっていたけど、何も気にせずにやりたいものをやるんだって。だから「CLUTCH」のあとに出した「SADISTIC AURORA SHOW」(2005年5月発売)なんかは最初はライブのノリ方にも戸惑いが伝わってきてたんですけど、ロックファンが集まるフェスでやったらドカーンと盛り上がったことがあって。この感じが出せるまで自分たちのライブでもやり続けたらいいんだと思ったんですよね。初見でもこっちが全力でワーッと音楽をやればやっぱり伝わるっていうことがわかったんです。

SHAKALABBITS

MAH 自分の“カッコいい”の感覚を信じられなくなったら終わりだと思ってるので、ジャンルっていうものに固執しているのも自分ら的に違ったんですよね。「これでいいのかな?」と思いながら惰性でリリースを続けるのは俺らにとってすごくストレスだったし。また同じ感じでスカがあって途中パンクで英語詞でみたいにやってたらたぶん楽しくなくて、バンドを辞めちゃってたと思います。

UKI “みんなが思うSHAKALABBITS”をそのままやり続けていたらきっとすぐに消え去ってたよね。やっぱり自分たちが楽しくないとダメなんですよ。もともと私たちはいろんな音楽に刺激を受けて、それを新しい形にしたいと思ってやってるから。

MAH ちょうど俺らが出てきた頃ってスカパンクをやってる奴らがそんなにいなかったから、やっててステイタスもあって。こういう音は俺らのところに来ないと聴けないぜって思ってたし。でもどんどんフォロワーが増えていくと、同じような雰囲気の女の子ボーカルのバンドが出てきて。そしたら僕らは違うことをやりたくなっちゃうんですよ。

ライブDVD「SHAKALABBITS LIVE DVD『THANK YOU★AX!! -LAST PARTY-』」 / 2014年11月19日発売 / Hallelujah Circus Inc.
通信販売限定盤 [DVD2枚組+Tシャツ] / 6480円 / HCID-003
通常盤 [DVD2枚組] / 5400円 / HCID-004
収録内容
  1. head-scissors
  2. THAT THING YOU DO!
  3. 少年と白い犬
  4. GO
  5. mademoiselle non non
  6. SADISTIC AURORA SHOW
  7. Tope Con Giro
  8. IT’S OUR SECRET
  9. ダズリングスープ
  10. 80
  11. スワローキリー
  12. オレンジライオン
  13. NACHO ROLL
  14. CAN’T ESCAPE THE CHOCOLATE SYRUP
  15. マッシュルームキャットナンバープレート
  16. MutRon
  17. Hello World
  18. MCMXCIX(1999)
  19. 88 ROYAL SKA
  20. SPICE!
  21. mommy’s back?
  22. Ladybug
  23. 星空の下で
  24. シルク
  25. 満天の星を探そうとも空は見ない
  26. ROLLIE
  27. SO EXCITED!
  28. FLAPPER
  29. admire
  30. Soda
  31. COMEBACK ANYTIME
  32. I’m a Dreamer
  33. Jammin’
  34. Condenser Baby
  35. Raise up
  36. Pivot
  37. 「ポビーとディンガン」
  38. MONSTER TREE
  39. G☆S☆G
SHAKALABBITS(シャカラビッツ)

SHAKALABBITS

1999年に結成された、UKI(Vo)、TAKE-C(G)、YOSUKE(B)、MAH(Dr)の4人からなるロックバンド。ポップなメロディが軸のバラエティに富んだ楽曲やUKIのキュートなボーカルがファンから高く支持されている。インディーズでの活動を経て、2002年にシングル「ROLLIE」でメジャーデビュー。2004年には全国ホールツアーを敢行し、翌2005年に初の日本武道館公演を成功させた。その後もライブとリリースを精力的に重ねてきたが、2011年12月に前任ベーシストのKINGが脱退。同月末に行われた「COUNTDOWN JAPAN 11/12」でのステージから、TAKE-Cの実弟YOSUKEが加わり現編成となる。2012年2月に7枚目のアルバム「Condenser Baby」を新体制となって初めての作品としてリリース。2013年9月には結成15周年を記念したベストアルバムを2枚発表し、翌2014年3月に2ndミニアルバム「What do I crave to see?」を発売した。同年5月に東京・SHIBUYA-AXにて単独公演「THANK YOU★AX!! -LAST PARTY-」を実施。6月にメンバー4人で新レーベル「Hallelujah Circus Inc.」を立ち上げた。レーベル第1弾作品としてアコースティックアルバム「Hallelujah Circus Acoustic」をライブ会場とヴィレッジヴァンガード限定でリリースし、11月19日に「THANK YOU★AX!! -LAST PARTY-」のライブDVDを発表する。