ナタリー PowerPush - School Food Punishment
トリッキーな新曲「How to go」で注目アニメの世界観を演出
89秒で伝わるものにしたかった
──このめまぐるしい曲展開と、歌詞の「迷いながら進んでいく」というテーマもリンクしていたんですよね。
内村 そうですね。「なかなかうまくいかない」ということがポイントだと監督に言われていたので。
──キーワードになった言葉はありました?
内村 これが書けて「よし!」と思ったのは、「赤い目のままで行こう」という歌詞ですね。これが出てきたときに、やろうとしている曲の内容や求められていることを、いいバランスでまとめられた気がしました。
──「赤い目」というのは?
内村 これはそのままズバリ、泣き腫らした目のことです。泣いてうずくまってしまうのではなく、涙を拭きながらどこかに向かっていくイメージが湧いてきた。この一文を書けたときに、この曲の方向性がはっきりわかった。印象的な瞬間でしたね。
──曲の最後には「わかんない それでも行くよ」という歌詞もありますよね。これも「赤い目のままで行こう」という言葉と繋がっている感じがします。
内村 そうですね。江口さんの提案で、歌詞はアニメの尺を基準に考えたりするんですよ。アニメのオープニングテーマとして使われる89秒がどの部分になるのかを先に決めておかないと、全体のつじつまが合わなくなるので。89秒で伝わるものにするために、今回は最初の1コーラスと最後の2行をつなげた形で先に書いたんです。そこだけでストーリーになるようにしようと思っていました。
──89秒でも、3分47秒でも、ちゃんと同じ着地点に辿り着くという?
内村 はい。2番は別の切り口を見せる部分になってるんですね。アニメで使っていただく箇所から先に作るという方法は私もすごく気に入ってます。やっぱり、アニメと並走するものとして書いていたし、その部分を聴いただけで「いい!」と思われないとしょうがないと思うので。
──自分の曲がアニメの主題歌になることについて、いろんなスタンスのバンドがいると思うんですけれども。ここまで論理的に、なおかつ自分の音楽の方法論にまでそれをフィードバックさせるやり方をやってるバンドは、ほかになかなかいないと思います。
内村 みんなそういうことを大切にするチームですからね。ウチらはバンドだというつもりもなくて、チーム作業としてやっているんですよ。
比田井 School Food Punishmentを、バンドというよりプロジェクトとして捉えているところが大きいので。4人のこだわりよりも、機会をフルに活かせるような曲の作り方にしたいと思ってるんですね。変に迎合するのではなくて、チャンスと思ってやり切るという。
「君に、胸キュン。 -浮気なヴァカンス-」は官能的に歌いたかった
──カップリングについても訊かせてください。まず、今回「君に、胸キュン。 -浮気なヴァカンス-」のカバーをやることになったきっかけは?
蓮尾 シングルではいつも3曲目で奇をてらったことをやってきたんですけれど、今回はカバーがいいんじゃないかという案が出てきて。その中からSchool Food Punishmentがやって「いいね」と言ってもらえるような人たちは誰だろう?と思ったときに、話の中からYMOの案が出てきたんです。「ハードル高いな!」とは思いましたけど(笑)。
──このアレンジ、リズムのサンプリング音がすごくいい味を出してますよね。
蓮尾 ありがとうございます。ちょっと静かで暗いんですけど、有機的に聴こえる感じになってると思います。
──歌い手としてはどういうことをイメージしました?
内村 いろんな人がカバーされているので、自分だったらどうしよう?ということは考えましたね。どうやったら自分の意味が出てくるんだろう、と。そこで考えたのは、「君に、胸キュン。-浮気なヴァカンス-」の歌詞が、もしかしたら悲しい物語が裏側にあるくらいに聴こえたら成功だな、ということ。かつ、官能的に歌えたらいいなと思ったんです。吐息混じりの声で、憂いもあるし、仕上がりもすごく気に入ってますね。
──2曲目の「帰る」はどうですか?
内村 この曲の自分の中のトピックスは歌詞だったんです。「Prog-Roid」の頃から歌詞というものに対して考えを巡らせることが多くて。「amp-reflection」の頃より、もっと「人に伝わるものを」と思ってやってきたんです。でも、自分の中に越えられない壁がある気がしていた。それを打破して新しいところに行く目標のもと臨んでいたのが「Prog-Roid」なんですけれど、そこでわかったことが活かされたのが「帰る」だと思います。
──これは情景描写的な曲ですよね。一人称というより、俯瞰で見た感じ。
内村 そうですね。それまでは、何かを表現するときに、自分の中に向かっていくことが多かったんです。それを抽象的な表現として出していくという。でも、今回は情景描写を通じて心象風景を描き出すということができたと思います。
「タラバじゃないとカッコよさが出ない」
──では最後に、田向潤監督が手がけた「How to go」のビデオクリップについてもお伺いしたいんですが。かなりインパクトが強い映像ですけれども、これはどういうイメージから生まれたんでしょう?
内村 まず私たちとしては、ビデオクリップでも試みとして面白いことをやりたいということを思っていて。それで名前が挙がったのが田向監督だったんです。そして、監督からアイデアとしてもらったのがあの映像でした。怪しげな儀式みたいな世界観で、祈祷師みたいな人が中で踊ってるという。「デジタル感とアナログ感の融合」ということを、LEDやレーザーとダンサーの肉体的な感覚で表現しようという提案でした。
──で、なぜかダンサーが曲後半でカニをかじってるという。
比田井 あのカニ、最初にも出てくるんですよね。でもなぜカニなのかは結局わからなかったんですけど。
内村 実際、話し合いのときにも「なぜカニなんですか?」って言ったんですよ。そしたら監督は「カニはカッコいいんですよ!」ってカニに対する熱い思いを語っていて。しかも「タラバじゃないとカッコよさが出ないんです! 特にフォルムが良い」って(笑)。そういう不思議な説得力がある映像なので、こちらもぜひ楽しんでもらいたいです。
CD収録曲
- How to go
- 帰る
- 君に、胸キュン。 -浮気なヴァカンス-
- How to go -Instrumental-
DVD収録内容
- How to go -music video-
CD収録曲
- How to go
- 帰る
- 君に、胸キュン。 -浮気なヴァカンス-
- How to go -Anime Edit-
DVD収録内容
- アニメ「UN-GO」opening movie
- How to go -music video-
CD収録曲
- How to go
- 帰る
- 君に、胸キュン。 -浮気なヴァカンス-
School Food Punishment(すくーるふーどぱにっしゅめんと)
2004年10月に結成された、内村友美(Vo)、蓮尾理之(Syn)、山崎英明(B)、比田井修(Dr)からなる4人組ロックバンド。2007年4月に1stミニアルバム「school food is good food」を発表し、音源制作と並行して、ワンマンライブや全国ツアーなどライブ活動も精力的に行う。2008年12月に発売した3rdミニアルバム「Riff-rain」はタワーレコードインディーズウィークリーチャートで1位を記録した。2009年3月に発表されたJUDY AND MARYのトリビュートアルバムでは「Brand New Wave Upper Ground」をカバーし話題となった。 同年5月にシングル「futuristic imagination」でメジャーデビューを果たす。「futuristic imagination」や「light prayer」「future nova」「after laughter」といったシングル曲はアニメ「東のエデン」のテーマ曲に選ばれ、大きな注目を集めた。2011年5月には約1年ぶりの音源となるシングル「RPG」を、7月に2ndアルバム「Prog-Roid」をリリース。12月にはテレビアニメ「UN-GO」のオープニングテーマとなったシングル「How to go」を発表する。