ナタリー PowerPush - School Food Punishment
トリッキーな新曲「How to go」で注目アニメの世界観を演出
飛躍を遂げた2ndアルバム「Prog-Roid」から半年、新たなシングル「How to go」で一段ギアを上げたハイパーポップを作り上げたSchool Food Punishment。テレビアニメ「UN-GO」のオープニングテーマとしてオンエアされているこの曲は、歌詞やサウンドも含めてアニメの世界観を強く意識して作られたものだという。トリッキーでめまぐるしい曲展開とフックのあるメロディに、強いオリジナリティが感じられる1曲だ。
また、このシングルではYellow Magic Orchestra「君に、胸キュン。 -浮気なヴァカンス-」のカバーにも挑戦。アナログとデジタルが絶妙に融合したサウンドで名曲を料理している。独自の発想とスタイルで突き進むSchool Food Punishmentに、その制作風景の裏側を明かしてもらった。
取材・文 / 柴那典
迷いながら、それでも行く
──「How to go」はどんなところを入り口に作り始めたんでしょう?
内村友美(Vo) 元々、今とはだいぶ違う形でデモがあったんです。で、今回「UN-GO」のオープニングテーマのお話をいただいた際、水島(精二)監督がそのデモを気に入ってくださって。それで私がバンドを代表して監督にお会いして、作品について、音楽に求めるもの、歌詞の方向性まで、かなり話を詰めていきました。それを持ち帰ってプロデューサーとメンバーと共有して、進めていった感じです。
──最初の段階の曲とは、かなり違う仕上がりになったわけですね。
内村 そうですね。結局残っているのは最初のイントロのフレーズくらいですね。メロディも変わってますし。
──監督とはどういう話し合いがあったんですか?
内村 あらかじめ作品の設定や資料をいただいていたんですけれど、まずは改めて作品の説明を伺って。その中で、音楽は「五里霧中な感じを出してほしい」と言われたんですね。盛り下がったりするところがなく、曲の最後に向けてどんどん加速してカオスになっていく感じのものがいい、と。霧の中を走っていくというか、迷いの中を突き進む感じというのが、サウンドに求めるものだという話があって。
──かなりめまぐるしい曲展開ですけれど、これもアニメのコンセプトや世界観があってのものだったんですね。
内村 そうですね。それがあっての今回の曲作りだったので。歌詞についても「迷いながら、それでも行く」という部分を描いてもらえたらうれしいとおっしゃっていたので。それで方向性が決まりました。
手に汗握る、曲芸のようなレコーディング
──この曲は相当キテレツな作りをしてますよね。このトリッキーさをうまくナタリーの読者に伝えたいんですけれど。
一同 ははは(笑)。
比田井修(Dr) リズムが特にトリッキーなんですよ。同じ箇所がないんじゃないか?ってくらい、どんどん変わっていく。曲展開もかなり極端なので、そこはすごく聴いてほしいところですね。
──例えば、AメロとBメロでリズムの頭が変わってたり?
比田井 リズムがスリップしているところもありますね。1番のBメロとか、実は曲のハイライトかもしれないくらいすごいんですよ。各パートだけだと成り立たないフレーズが、みんなの演奏のバランスでぎりぎり成立しているという。
──カップリングに収録されているインストゥルメンタルバージョンを聴くと、そういう箇所に気付きますよね。例えば歌と演奏がポリリズムのようになってる箇所もあったり。
比田井 2番のAメロは、ドラムが3連っぽくなっているところにメロディが8分音符で乗ってるから、どこかに耳を引っ張られるとポリリズムのように聴こえるかもしれない。
──あのリズムの上で歌うのは大変なのでは?
内村 デモがどんどん変わっていくので、とにかく必死でしたね。「どうやって歌うんだろう?」って。
比田井 今回は僕とプロデューサーの江口(亮)さんの2人でドラムの作業をしてたんですけれど、それを山崎さんが最初に聴いたときの反応もすごかったんですよ。
山崎英明(B) 正直、意味がわからなかったですからね(笑)。「何をしようとしてるんだろう?」ってくらい。曲展開がめまぐるしいし、緻密だし、それをどうやって盛り上げていこうか、ということはずいぶん考えました。
内村 ベースの録音のときも立ち会っていたんですけれど、江口さんからどんどん注文があるんですよ。それを山崎さんが必死に追いながら、それでも感情的に弾こうとしているのが伝わって。ハラハラしましたね。手に汗握る、曲芸のようなレコーディングでした(笑)。
──細かいですけれど、サビの8小節目で「おっ!」と思わせるコード進行も目を引きますよね。あそこだけ転調している感じがあるというか。
蓮尾理之(Syn) ああ、確かにあそこだけスケールが変わりますね。
内村 江口さんは、私が自分じゃ絶対思いつかないコードをどんどん入れられきたりするんですよ。そういう中で、どんな感じで歌うのかがキモになってくるかなって思ってました。
──こういう曲調をポップに聴かせるというのは、ある種の離れ業かも。
内村 そうですね。複雑な演奏をどれだけポップに聴かせられるかというのが自分の声の役割だと思うので。それを全うできればいいなと思いました。
CD収録曲
- How to go
- 帰る
- 君に、胸キュン。 -浮気なヴァカンス-
- How to go -Instrumental-
DVD収録内容
- How to go -music video-
CD収録曲
- How to go
- 帰る
- 君に、胸キュン。 -浮気なヴァカンス-
- How to go -Anime Edit-
DVD収録内容
- アニメ「UN-GO」opening movie
- How to go -music video-
CD収録曲
- How to go
- 帰る
- 君に、胸キュン。 -浮気なヴァカンス-
School Food Punishment(すくーるふーどぱにっしゅめんと)
2004年10月に結成された、内村友美(Vo)、蓮尾理之(Syn)、山崎英明(B)、比田井修(Dr)からなる4人組ロックバンド。2007年4月に1stミニアルバム「school food is good food」を発表し、音源制作と並行して、ワンマンライブや全国ツアーなどライブ活動も精力的に行う。2008年12月に発売した3rdミニアルバム「Riff-rain」はタワーレコードインディーズウィークリーチャートで1位を記録した。2009年3月に発表されたJUDY AND MARYのトリビュートアルバムでは「Brand New Wave Upper Ground」をカバーし話題となった。 同年5月にシングル「futuristic imagination」でメジャーデビューを果たす。「futuristic imagination」や「light prayer」「future nova」「after laughter」といったシングル曲はアニメ「東のエデン」のテーマ曲に選ばれ、大きな注目を集めた。2011年5月には約1年ぶりの音源となるシングル「RPG」を、7月に2ndアルバム「Prog-Roid」をリリース。12月にはテレビアニメ「UN-GO」のオープニングテーマとなったシングル「How to go」を発表する。