ナタリー PowerPush - school food punishment
予想外にハジけた新曲でバンドの奥深さを見せつける
不安に目を背けぬ覚悟を、緊張感のあるロックサウンドで描き出した1stシングル「futuristic imagination」でメジャーシーンへと颯爽と現れたschool food punishment。エレクトロニカやポストロックなど、あらゆる音楽を独自に吸収したそのサウンドスタイルは、多くのリスナーの耳を早くもトリコにし始めている。
そんな中リリースされる2ndシングル「butterfly swimmer」は、前作とは対極とも言えるハジけたラブソング。「ヘルシア スパークリング」のCMソングとしても話題を呼んでいるポップさ全開のサウンドは、彼らが持っている音楽性の幅広さを圧倒的な爽快さで提示している。さあ、その稀有な才能が生み出す心地良い音の波に、飛び込め!
取材・文/もりひでゆき
フランスのライブで初コール&レスポンス
──7月頭にフランスで開催された「JAPAN EXPO」に出演されたそうですね。海外での初ライブ、いかがでした?
内村友美(Vo,G) 私は海外自体、初めての経験だったんですけど、ライブに関しても初めてのことがすごく多かったですね。フランス語のMCだったり、フランスの方の反応だったりもそうだし、あとは、手を上げたりとか手拍子を求めたりっていうコール&レスポンスを今までの私たちは全然してこなかったんですけど、そういうことを初めてしてみたことでの反応とか、全部が新しい感覚でした。なんだか細胞が入れ替わったみたいな気持ちになりましたね(笑)。
蓮尾理之(Key) 2回ライブがあったんですけど、1回目からものすごい歓迎ムードだったんですよ。ただ、お客さんたちに対してしっかり返せなかった部分もあったので、2回目のライブではもっと自分たちを出して臨んだら、さらに盛り上がってくれたんですよね。こっちからお客さんに対して投げかければ、その分盛り上がってくれるんだなっていうのは、すごく勉強になりました。
──今までコール&レスポンスをしてこなかったのには、何か理由があるんですか?
内村 振り返ってみると、内に向いてたんだと思うんですよね。もちろん今までも、こういうことをやったらお客さんはどう思うんだろう、っていうのを一生懸命考えながらやってたつもりだったんですけど、日本だとそこまでダイレクトに反応が返ってくることがあまりない気がして。フランスでは、イイなと思えばストレートに感情表現してくれる人が多かったです。でも、イヤなら会場から堂々と出て行っちゃう人も多いですけれど。
──確かに日本のオーディエンスは、基本的に温かな反応だったりしますもんね。
内村 そういう状況の中で、お客さんの表情をちゃんと見て、もっと交流したいっていう気持ちを今まで以上に持てたんです。“もっともっと”って背中をグイグイ押される気持ちになったというか。そういう感覚が味わえたのはすごく大きなことでしたね。
アニメのエンディング曲も今までの活動の延長線上
──フランスでのライブ経験もそうですが、アニメ「東のエデン」のエンディング曲だった1stシングル「futuristic imagination」がリリースされてからバンドの状況は変化していそうですよね。
内村 アニメをきっかけに私たちのことを知ってくれて、なおかつ他の曲も気に入ってくれてライブにも足を運んでくださる方が多くて。それがすごくうれしいですね。そういう部分では、ちゃんと今までの活動の延長線上にあのシングルがあるんだなっていうのを実感できたし、活動自体もすごく広がったと思います。ほんとにいい機会をいただけて感謝してますね。
蓮尾 1stシングルのリリースタイミングに、すでに2ndシングルがCMで流れているという状況もあったりするんで、いろんな部分で楽しみにしてもらってるんだなっていうのは感じてますね。そういう周りの期待というか、状況に僕らもさらに応えていかなきゃなっていうのはすごく思ってます。
──school food punishmentはさまざまな音楽要素を昇華しつつ、それを耳馴染みのいいポップスへと落とし込むスタイルが大きな魅力だと思うのですが、バンドとして大事にしている方向性みたいなものってあるんですか?
内村 まず、かっこいいと思うことだけを基準にしたいと思ってますね。あとはロックなのか、ポップなのか、みたいなことではなくて、全部ひっくるめて、どのジャンルを受け入れても、総称してポップスでありたいっていう気持ちもあります。一部の人しかわからないものではなくて。そういう思いはリリースを重ねるごとにどんどん強くなっていますね。
──曲調の振り幅は、かなり広いですもんね。
内村 私たちも、いろんな曲があるっていうところはすごく気に入ってるところで。やっぱり生きてる中にはたくさんのシチュエーションや状況があるから、その中で聴く音楽も選択肢が多い方がいいんじゃないかなって思うんですよね、私自身、こういうときはこういう曲を聴こうって考えるのがすごく好きだったりもするから。そういう意味でも、アルバムはもちろんですけど、シングルでも、少ない曲数の中でどうやって自分たちの世界を表現しようかなっていうのはものすごく考えますね。
セッション演奏を聴きながらノートに歌詞を書いていく
──曲作りの方法は?
蓮尾 基本的には、スタジオで、まず楽器3人(キーボード、ベース、ドラム)でセッションをするんですよ。
内村 あるモチーフだったり、テーマだったり、コードやリズムだったりを一定で守りながらセッションしてもらう中、その横で私がひざにノートを置いて、その音から見える風景や感じ取れたものを、1人でブツブツ言いながら歌詞として書いていって。
蓮尾 その間、僕らは10分とか15分とか、ずっと演奏してるだけなんですけど(笑)。
内村 で、「できた!」って思ったら、その場で仮の歌詞で私がメロディを歌うっていう。そこで基本のパターンを作って、あとは各自、家に持って帰ってそれぞれ音作りをして、また後日合わせてみるっていう流れですね。1曲丸々その方法で作るときもあれば、A、B、サビ、などパートごとにやる場合もあるんですけど。
比田井修(Dr) 出てきた歌詞によって、セッションで作ったベーシックなものを、歌詞の世界観に寄せて作り直したりっていう作業を自宅でやったりしますね。それぞれがそれぞれ、どんどん変化させてって作ってる感じです。
──セッションで出す音っていうのは、その場のノリで決まっていくんですか?
蓮尾 けっこうノリが大きいかもしれないですね。
内村 「今、何の気分?」みたいなところから始まることが多いですね。
蓮尾 たまにモチーフを決めて持っていくときもあるんですけど、それがダメな場合もあったりするんです。「こういうの作ってきたんだけど」って言うと……。
内村 「今、そういう気分じゃないから」みたいな(笑)。明るい曲のモチーフを持ってきてやってみても、みんながダウナーな気分だったら、いつの間にか暗い雰囲気の曲になっちゃってたり。そのまま作っちゃうときもあるんですけどね(笑)。
school food punishment
(すくーるふーどぱにっしゅめんと)
内村友美(Vo,G)、蓮尾理之(Key)、山崎英明(B)、比田井修(Dr)からなる4人組ロックバンド。2004年10月結成。2007年4月に1stミニアルバム「school food is good food」を発表し、同年11月に2ndミニアルバム「airfeel, color swim」をリリース。音源制作と並行して、ワンマンライブや全国ツアーなどライブ活動も精力的に行う。
2008年12月に発売した3rdミニアルバム「Riff-rain」はタワーレコードJ-Indiesウィークリーチャートで1位を記録。2009年3月に発表されたJUDY AND MARYのトリビュートアルバムでは「Brand New Wave Upper Ground」をカバーし話題となった。
同年5月にメジャー1stシングル「futuristic imagination」をリリース。