SEPT「ReAnimation ~THE ORIGIN~」特集|音楽と芝居が共存、SEPTの魅力を凝縮した“リアニ”最新作 (2/2)

アーティストが芝居をやると成長速度が半端なく速い

──前半のAnother期は実際のキャストが音を出し、後半のOrigin期は声優として楽器に声を当てるという試みにしたのはどうしてですか?

杉浦 初演のvol.9は声優さんに参加いただき、続編のvol.10では実際に演奏したという流れがあります。今回は両方ともやりたいと思ったので、がっちゃんこさせました。お客さんからすると、目の前のステージから演奏が聞こえるのと、楽器が置かれて声が飛んでくるのとでは受け取るときの感覚が大きく違うので、まったく異なる作品に感じるんじゃないかと思います。

村田 私はvol.9もvol.10もどっちも出させていただいたのですが、ステージに誰もいなくて楽器だけが置いてある時間があって不思議でした。でも豪華な声優さんが参加されていたこともあって、まるで舞台上に人がいるかのような感覚になりました。ウチクリさんとも相談しながら、無機質なマイクに向かってどう感情を伝えるかを考えて演じました。

杉浦 どう照明を当てればお客さんが違和感なく会話に入り込めるのか、ということにすごくこだわりました。今回も同じハードルがありますし、前回以上に会場が広いので、より見せ方を計算しないといけません。木本くんが演じる悠真が最初に楽器としゃべり始める役で、そのシーンの演出から決めていくことになると思いますが、初めての舞台にもかかわらず難しいことを求めているなと。

木本 がんばります。悠真は自分自身とかけ離れてないキャラクターなのでよかったです。僕は昔サッカーをやっていて挫折した経験があって。そこから立ち上がったときの心境が悠真と重なるところがあるんです。うまく演じられたらいいなと思っています。

木本慎之介

木本慎之介

──杉浦さんがおっしゃったように初舞台としてかなりハードルが高いと思いますが、チャレンジしようと思った一番の理由はなんだったのでしょう?

木本 去年とある歌番組に出たときに、シャイな性格ということもあって自分を前面に出せず、「こんなことじゃダメだよな」と試行錯誤したことがあって。この舞台を終えた頃に1つ上のステージに上がることができる気がしたので、挑戦させていただくことにしました。

杉浦 最初、木本くんは王太郎の役で山葵とのダブルキャストで考えていたのですが、リモートで打ち合わせしたときに「王太郎じゃなくて悠真だな」と思い、ウチクリとも相談して悠真を演じてもらうことになりました。これは僕の持論なんですけど、歌い手さんがお芝居をやると成長速度が半端なく速いんです。リアニ初演で悠真を演じた佐香智久くんも演技経験はそこまでなかったけど、結果的にまるで経験者のようなお芝居をしていました。今回の木本くんや桑山くんも大丈夫だと思ってるので、ぜひ多くのことを吸収してもらえたらうれしいですね。

木本桑山 ありがとうございます。

──ダンス&ボーカルグループで活動している桑山さんが、ラウドロックバンドのボーカリストを演じるという、その振り幅やギャップが面白いですね。

杉浦 作品のホームページでは、桑山くんとダブルキャストの岸(洋佑)くんの横に、摩天楼オペラの優介くん、vistlipの瑠伊くん、零[Hz]のLeoくんの写真が並んでいるんです(笑)。その並びを見るとラウドロックバンドにもビジュアル系にも見える。どんな化学反応が起きるかが楽しみで仕方ないです。桑山くんにはゴリゴリのラウドロックを歌ってもらうことになるので、お客さんには普段と違う歌声を楽しんでもらいたいですね。

桑山 先日のビジュアル撮影でピアスをたくさん付けたら、スタッフさんからの反応がよかったので僕も楽しみです。

桑山隆太(WATWING)

桑山隆太(WATWING)

杉浦 ちなみに、これまでは各公演の最後にエンディングライブがありましたが、今回はそれはやらずに2月15日のライブデーに集約されます。そこではいろんな曲が聴けると思います。

──髙橋さんと中野さんのお二人にベーシストの井ノ原南を演じてもらうのには、どういう狙いや期待がありますか?

杉浦 身長差も含め、全然タイプが違うお二人にダブルキャストをやってもらうのが面白いと思っています。

中野 見た目も中身も全然違うので、ダブルキャストと聞いて驚きました。

杉浦 ダブルキャストの場合、似たような2人がキャスティングされることが多いですが、僕は全然違う見え方にしたほうが面白いと思っているんです。同じセリフでもまったく違うように聞こえてきますし。佐輔を演じてもらう桑山くんと岸くんもまったく色が違っていて、岸くんのメイクはあえて薄くしてわかりやすく差別化を図りました。それぞれ自分なりのキャラクターとして生きてくれるのが一番いいと思っています。

大西 私は明るい性格の役をいただいても陰の方向に行ってしまう傾向があるので、「がんばらなきゃな」と思っていましたが、今のお話を聞いて少し気が楽になりました。自分なりの木葉ちゃんを探していけたらいいなと思います。

大西桃香

大西桃香

SEPTには「気付いたときにやり直せる」というテーマも

──これまでSEPTを通して学びを得たことはありますか?

村田 たくさんあります。私はSEPTの舞台向けに曲を書いて、アレンジをしてもらう機会をいただきました。しかも、その曲を自分で歌わせてもらったことでより自信になりました。お芝居についても、SEPTに成長させてもらったと言っても過言ではないです。みんなで一緒に考える時間をしっかり取ってくださるので、初めてお芝居をやる方にとってもすごくいい環境だと思います。

山葵 2024年いっぱいで自分が在籍している和楽器バンドが活動休止になって、それまでは当たり前だった活動がなくなり、「俺はどうなるんだろう?」と思って気持ちが沈んでいたときに、SEPTへの参加をオファーしていただきました。初参加時は全員初めましてだったのでドキドキでしたが、皆さん本当に優しくて、楽しく稽古ができて救われたんです。またこうやって呼んでいただけて感謝しています。SEPTに生かされてます(笑)。

山葵(和楽器バンド)

山葵(和楽器バンド)

杉浦 すごく大きな話に(笑)。山葵は面白いんですよ。ドラマーとして体を使って表現をしてきた人がお芝居をやると、普通はセリフを言うことに対して苦戦することが多いのですが、山葵は最初からすんなり吸収していって。本番も伸び伸びやってたよね。

山葵 ちょっと伸び伸びしすぎた瞬間もありましたけど(笑)。

杉浦 アドリブまでかましてね(笑)。レジェンド級のドラマーがエンタメのジャンルの垣根を越えてお芝居を楽しんでくれるのがうれしいです。

──星名さんも初めてのSEPT作品「SANZ:0」に参加したときは、キャリアの分岐点でしたよね。

星名 はい、グループで活動していたところから1人になり、心細かった時期にSEPTさんと出会えて。とても居心地のいい環境を皆さんが作ってくださいました。お芝居についていろいろと話す時間を積み重ねているからこその仲のよさだと思います。例えば舞台経験が豊富なやみえんさんに、「美怜はこういうところでセリフの言葉が流れやすいから、ここで止めたほうが聞こえやすいよ」みたいに教えていただくことも多くて。キャリアを重ねるとアドバイスをいただく機会が減ってきますが、SEPTの皆さんは真摯にアドバイスをしてくださいますし、経験や成長をみんなと共有できる喜びがあります。

星名美怜

星名美怜

杉浦 役者同士で芝居のアドバイスをすることがタブーとされてる場所もありますが、SEPTは異業種の方々が集まっているからこそ、アドバイスし合うということが成立しています。僕としては喜ばしいことですね。また、SEPTは音楽と芝居、両方がないと成立しないので、アーティストの方にとっては初舞台として持って帰ってもらえるものがたくさんあるんじゃないかと思っています。

ピコ ミュージカルとはまた違う、生バンドと歌唱と演劇の共存をSEPTは実現させていて。今作だとライブステージだけじゃなくダンスシーンもあるのが大きな魅力だと思います。あと、ステージに立つ側の葛藤が描かれているところはSEPT作品、特に「ReAnimation」シリーズの魅力ですね。

──今作は文化庁の「子供舞台芸術鑑賞体験支援事業」に採択されたそうですが、それによってどんな影響があるのでしょうか?

杉浦 未就学児のお子さんの観劇は難しいのですが、小学生以上のお子さんを無料で招待していて、保護者の方は半額で観ることができます。子供たちが舞台の面白さに気付くきっかけになったらいいなと思い、この取り組みに参加しました。あと、SEPTには「気付いたときにやり直せる」というテーマもあるんですよ。いろんな理由で登校できない子供がいる中、エンタテインメントの華やかな世界を通して「いつでもやり直せるから大丈夫だよ」と伝えてあげたいという気持ちがあって、学校や施設で今作の告知をさせていただいてます。

プロフィール

SEPT(セプト)

杉浦タカオが2013年に立ち上げた“次世代型エンターテイメントユニット”。音楽と芝居のコラボレーションをテーマに、生バンド演奏、歌、芝居、ダンス、アクロバット、殺陣、プロジェクションマッピングなどを盛り込んだオリジナル作品を発表し続けている。

大西桃香(オオニシモモカ)

2014年から2024年までAKB48に在籍。2020年上演の「舞台 少女ヨルハver1.1a」で舞台に初主演し、2021年公開の「ホリミヤ」にて映画初出演を果たした。2025年7月に初のオリジナルソング「シンフォニー」のミュージックビデオをYouTubeで公開した。

木本慎之介(キモトシンノスケ)

2025年にBS日テレで放送された番組「現役歌王JAPAN」に出演して第5位に。最終歌唱曲として父・西城秀樹の楽曲「ブルースカイ ブルー」を歌った。さらにBS日テレ「2025日韓歌王戦」に日本代表として出演した。

桑山隆太(クワヤマリュウタ)

ホリプロ主催オーディション「Star Boys Audition」にて結成されたダンス&ボーカルグループ・WATWINGのメンバー。WATWINGは2026年4月12日に東京・東京ガーデンシアターで単独公演「WATWING LIVE TOUR 2025 – 2026『honest』~Special Edition~ The Final」を行う。

髙橋彩音(タカハシアヤネ)

2014年、AKB48にチーム8のメンバーとして加入。グループでの活動と並行して舞台作品にたびたび出演。2026年2月28日に1st写真集が発売される。

中野郁海(ナカノイクミ)

2014年にAKB48に加入。同年11月リリースの38thシングル「希望的リフレイン」で表題曲の選抜メンバーに選ばれた。2019年にグループを卒業したあとは舞台に出演するなど、俳優として活躍している。

ピコ

2007年に自分の歌を動画投稿サイトに投稿して活動を開始すると、その特徴的な歌声から「両声類」と呼ばれ多くのファンを獲得。2010年10月にシングル「Story」でメジャーデビューした。現在はライブを中心とした活動を行うほか、舞台に出演するなど多方面で活躍している。

星名美怜(ホシナミレイ)

2010年から2024年まで私立恵比寿中学のメンバーとして活動。個人で多数の舞台やドラマに出演する一方、ファッションや美容分野でも活躍している。2025年12月には徳間ジャパンコミュニケーションズからミニアルバム「Once Upon a Star」をリリースし、ソロアーティストとしてデビューした。

村田寛奈(ムラタヒロナ)

2010年にガールズユニット9nineに加入。9nineが活動を休止した2019年より俳優としての活動を本格化させ、舞台やドラマ、映画に出演。演技に加えてギター演奏や楽曲制作など多彩な活動に取り組んでいる。

山葵(ワサビ)

中国遼寧省生まれ岡山育ち。8人組バンド・和楽器バンドのドラマー。ドラム演奏のみならず、作詞作曲、楽曲提供、イラストワーク、モデル活動、テレビ番組「SASUKE」への出演、ボディコンテスト出場と活動は多岐にわたり、表現者として日々鍛錬を重ねている。

杉浦タカオ(スギウラタカオ)

1983年、大阪府生まれの俳優 / イベントプロデューサー。音楽と芝居のコラボレーションをテーマにした“次世代型エンタテインメントユニット”SEPTを2013年に立ち上げた。