歌うのも看護をするのも同じ

──今回シングル「夢日和」でメジャーデビューを果たすに当たり、どんなことを考えましたか？

「歌で看護する」みたいなこともできるんじゃないかな、私にしか歌えない歌があるんじゃないかな、と思っているんです。将来的には養護施設や老人ホームに歌いに行けるような存在になりたいですし、医療に携わる私だからこそ歌える曲や、歌いに行ける場所が絶対にあると思うんです。

──例えばライブの翌日の朝に、患者さんに注射をする日もあるわけですよね？ 気持ちの切り替えは大変じゃないですか？

誰かを思って行動をする、という意味では歌うのも看護をするのも同じだと思ってるので、ある意味気持ちの切り替えは必要ないんです。そうは言っても「昨日のライブはうまくいかなかったな」って落ち込むようなことがあっても、朝にナース服を着たら「よしっ！」と看護師としてのスイッチが入ったりするので、両方やってることでいい意味で気持ちを切り替えることもありますし。どちらかと言うと、メリットのほうが多いような気がします。

──あやかさんが作る歌は、聴いた人を元気にするようなものが多いですね。

作る曲はポジティブな歌が多いんですけど、私自身は落ち込みやすいんですよ。なので、誰かのためを思って書いた曲に、自分自身の背中を押してもらうこともあって。落ち込みやすいからこそ、感情をポジティブに持っていくのが得意なんです（笑）。

──「夢日和」はイントロからポップで、あやかさんの生きる上でのモットーが詰まった曲だと思います。ただ前向きなだけではなく、「争いや悪口に惑わされたくない」という歌詞にあるように、あやかさん自身が感じる不安も表現されているのが印象的でした。

後半部分には「誰かが望むような人になりたい」という歌詞が出てくるんですけど、こう書きながらも褒められることを追求しすぎて自分がつらくなったりするときのことも考えていたりして。だから自分自身を強く持ちながら、前に進んでいこうっていう気持ちを込めてこの「夢日和」を書きました。人に求められたいと思うけど、自分が人に求められているかどうかなんてわからない。だからこそ自分にできることをとりあえずやろう、100やってみて1つが誰かのためになったらいい。たとえゼロだったとしても次につなげればいいという私の今の気持ちがこの曲に詰まっています。

──カップリングの「はりーあっぷ」はライブでも盛り上がりそうなアップナンバーで。パンがモチーフになっている歌詞もユニークですね。

盛り上がる曲が作りたかったんです！ 日常生活のひとコマを切り取った歌詞を入れた、ポジティブな応援ソングを作ってみたくて。ライブでまだ歌ったことがないのでこれから楽しみです。

つり革を持つ手の血管が気になる

──忙しい日々の中、どんなタイミングで曲を書いているんですか？

移動中のバスの中とかで書いています。あと散歩が好きなので、歩きながらいろいろ考えたり。でも散歩中に作る曲はどうしても自分が歩くテンポの曲になっちゃうので、「はりーあっぷ」を作ったときは家の中でメトロノームを鳴らしながら作りました。私は歌詞を先に書くタイプなので、曲を付けたあとに言葉を削れないんです。だから速いテンポにするとどうしても早口になっちゃう。だから最初からテンポを決めて鼻歌で作ることが多いですね。

──これからどんな曲を作っていきたいですか？

聴いてくれた人が「あ、なんかがんばれそう！」と思う曲を作りたいですね。暗い曲も作ってみたくて挑戦することもあるんですけど、どうしても「これを聴いた人に何が残るのかな？」と考えてしまって。せっかく聴いてもらうのであれば、悲しい気分が前向きになるような曲にしたいって思うんです。

──そういえば看護師のほかに野菜コーディネーターの資格もお持ちなんですよね。

はい、去年資格を取りました。私は病院で採血とか点滴とか注射をしているんですけど、そんな時間の中で患者さんとお話するときに何か役に立てばいいなと私なりに考えて。「高血圧だから野菜を食べるようにしてるんだよ」なんて言われたら、「どんな野菜を食べてますか？ 量は足りてますか？」って聞きながらいろいろアドバイスをすることもできますし。家庭菜園をされている方も多いので「今はこの野菜がおいしいですね」とか、注射をしながらそんな会話をしています（笑）。今後はもっと自分なりに極めて野菜コーディネーターとしてもお役に立てればと思っています。

──あやかさんは人に元気を与えたい！っていう気持ちが強いですね。

そういうことをしてる自分が好きなんです。看護師をしながら音楽活動をしているのも、どちらも自分が「生きてる！」って思うからだと思います。

──あやかさん自身が元気でいる秘訣は何かありますか。

やっぱり人と関わることだと思います。曲を作っているときは1人ですけど煮詰まると誰かに会いたくなって、誰かに会ったら何かに気付いたり気分が変わったりしますから。東京の満員電車とかはもちろん苦手ですけど、人間観察が好きなんですよ。これは看護師あるあるなんですけど、例えばつり革を持っている人の手をジッと見て「血管めっちゃ出てる！」とか思ったりして（笑）。

──そんなことを考えているアーティストは、なかなかいないですよね（笑）。

今は本当に看護師と歌手の両方をやらせていただけている周りの環境がありがたいんです。これからも両立させていきたいと思ってます！