音楽ナタリー Power Push - 瀬川あやか
歌と看護は同じ 現役看護師が叶えた2つの夢
医療の最新技術が集まる東京へ
──高校時代は毎朝4時半に起きて学校に通われていたそうですね。
はい。地元にも学校はあったんですけど、私はずっと富良野にいるのがイヤで、いろんな世界を知りたかったんですよ。もっといろんな人に会いたいし話がしたい。でも富良野からわざわざ遠くに通うとなると進学校じゃないと親に納得してもらえないから、必死に勉強して毎日往復4時間かかる高校に合格して、通っていたんです。
──そして東京の大学に進み、看護師になる勉強を本格的に始めると。
はい。単純に東京に憧れてたという気持ちも拭えないんですけど(笑)。看護師になるための大学を探していたときに、北海道より東京のほうが医療の最新技術が集まっていますし、北海道よりいろんなことが学べると思って上京しました。
──「表向きの夢」とおっしゃっていた看護師の夢に向かってどんどん進んでいく学生生活だったわけですね。では自分の胸の内に秘めていたもう1つの夢のことは?
高校時代はみんなでダンスを発表したり、カラオケに行ったりする程度で発散していました。でもカラオケで歌ったときに「上手だね」って友達が褒めてくれるとうれしくて、どこかモヤモヤした気持ちを抱えていたんです。家から学校まで遠くて忙しいし「田舎だから歌手になんてなれないよ」って言い訳してる自分がいて。その程度の夢なんだろうなって感じていました。
やっぱり音楽がやりたいです
──看護師になるために上京したことで、その気持ちが変わったということでしょうか?
はい。大学1年生のときに「ミスキャンパスコンテストに出ないか?」というお話をいただいて。結果として準グランプリをいただいたんですけど、それがきっかけで今の事務所の方が私を見つけてくださったんです。それで事務所の方に「何がやりたい?」って聞かれたときに「歌を歌いたいです」とお伝えして。声をかけてもらった当初は、ただ「東京はすごいとこだなあ」って思ってました(笑)。
──看護師になるために入った大学のミスコンで歌手になる夢も得たんですね。
きっかけとしてはそうですね。まさかこうしてメジャーデビューするなんて思ってもみなかったです。看護学生なりの忙しさもありますし、将来的に両立できるとも思ってなくて、やるならどっちかだろうなって。それで長い実習に入る直前に受けたオーディションに落ちたとき「あ、これは神様が看護師になれって言ってるんだな」と思って、「これから実習が始まるし、私は看護師になります」って事務所のスタッフにお伝えしたんです。そうしたら「実習が終わって、もし気が変わったらまた連絡しておいでよ」って言ってくれて。
──もう歌のことはあきらめよう、そう思って長い実習期間に入ったんですね。
はい。それで実習中に家族の名前も思い出せない認知症の方に出会ったんです。いろんなところが痛いと言って体も自由に動かせない方だったんですけど、その方が大好きな「ソーラン節」を歌うと、それに合わせてムクッと起き上がってスタスタ歩き出したことがあって。もしかしたら歌を聴くことで元気だった頃の自分の感覚が蘇るのかな、音楽って素晴らしいなと感じられたんです。それと産婦人科の実習をする中で自分が親になったときのことを考えて「お母さんは好きなことをやったからあなたも好きなことをやりなさい」と言ってあげられるような親になりたいなと考えたりして。やっぱり音楽のことをあきらめきれない気持ちがこみ上げてきて、実習が終わったらすぐに事務所のスタッフの方に電話して「すみません。大口を叩きましたが、やっぱり音楽がやりたいです」と伝えたんです。
──そのときはどちらかを選ぶのではなく、看護師と歌手を両方やるという決意をしていたんですか?
そうですね。幸いにも事務所の方が「長い目で見て、とにかく資格は取っておいたほうがいいよ」と言ってくださったから、まずは看護師の国家試験を受けることに集中させてもらって。無事昨年の2月に国家試験に合格したんです。
──その後、看護師をしながら弾き語りで年間50本を超えるライブをこなしたそうですね。
はい、やらせていただきました。同級生のほとんどは都立の病院に就職するんですが、私は夜勤があると音楽活動がやりにくくなるので、小さい病院に勤務することにしたんです。東京ではまず3年は大きい病院で勤務して、その後小さなクリニックに移るのが普通なんですけど、私は新卒で注射も打てないような状態で小さい病院を探していたので就職口がなかなかなくて。音楽活動も両立してやっていることを包み隠さず話して、理解してくださったのが今の勤務先なんです。なので今は昼間は看護師として働いて、夜は音楽活動をするようにしています。弾き語りのライブを始めたばかりの頃は、とにかく場数を踏んで努力しないと、と思っていました。
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- メジャーデビューシングル「夢日和」 / 2016年6月15日発売 / ポニーキャニオン
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1500円 / PCCA-04387
- 通常盤 [CD] / 1000円 / PCCA-70476
CD収録曲
- 夢日和
- はりーあっぷ
- 夢日和 Inst.
- はりーあっぷ Inst.
初回限定盤DVD収録内容
- 「夢日和」Music Clip
- Making of「夢日和」
- Music Video撮影オフショット
- ジャケット撮影オフショット
ほか
瀬川あやかアコースティックワンマン ~卵・小麦粉不使用のふわふわホットミュージック~
- 2016年6月27日(月)東京都 SHIBUYA LOOP ANNEX
- OPEN 19:00 / START 19:30
瀬川あやか(セガワアヤカ)
北海道富良野市出身のシンガーソングライター。5歳の頃からピアノを習い始め、歌手になるという夢を抱くと同時に、看護助手をしていた母親の影響で看護師を目指す。2011年、進学のために上京。大学1年のときに出場したミスキャンパスコンテストで準グランプリを獲得し、これをきっかけにアーティストデビューのきっかけをつかむ。2015年2月に看護師の国家試験に合格してからは看護師として働きつつ、弾き語りのライブを年間50本以上こなす。2016年6月にシングル「夢日和」をリリースし、ポニーキャニオンよりメジャーデビューを果たした。