音楽ナタリー Power Push - 瀬川あやか

歌と看護は同じ 現役看護師が叶えた2つの夢

シングル「夢日和」でメジャーデビューした、シンガーソングライターの瀬川あやか。今の時代、ほかに仕事を持ちながら音楽活動をしているアーティストも少なくないが、彼女は「人のためになる仕事がしたい」という思いのもと現役の看護師として病院で勤務をしつつ、歌を届けている。

自ら作詞・作曲を手がけたデビュー曲「夢日和」は、「Shiny day まだ空の果てを知らない ただ強くなりたかった」といったまっすぐな歌詞が印象的なポップチューン。今回のインタビューでは、このメジャーデビュー曲に込めた思いのほか、北海道富良野市出身の彼女がどのように2つの夢を胸に抱き、どんな日々の中でそれらの夢を叶えてきたのかについて語ってもらった。キュートなルックスの中に秘めた揺るぎない信念を感じてもらえるはずだ。

取材・文 / 上野三樹 撮影 / 入江達也

人のために何かをする仕事に憧れて

──5歳からピアノを習っていて小さい頃から歌手になりたかったということですが、どんな子供時代だったんですか?

小さい頃にモーニング娘。さんをテレビで観て「みんなの前で歌って踊るのってすてき! 私もテレビに出たい!」と思っていました。ピアノは祖母がやっていた影響もあって習い始めたんですけど、音楽にのめり込んでいったのは歌手に憧れてから。小学生、中学生時代はよく歌ったり踊ったりしていました。

──それと同時にお母様の影響で看護師になりたいとも思い始めたそうですね。

瀬川あやか

はい。歌手になりたいという夢は持っていたんですけど……。私は北海道の富良野市出身なので田舎で「歌手になりたい」とか言うと、別にバカにされるわけではないんですけど、ちょっと周りから浮いちゃうような空気を感じていたんです。私自身も歌手になれるかどうか半信半疑だったし、だんだん周りに「歌手になりたい」なんて言わなくなって。そんなとき、看護助手をしていた母親の影響もあり、優しくて人のために何かをするという仕事に憧れたんです。表向きの夢は看護師で、でも歌手としての夢も心の中には持っている、という感じでした。

──歌手という夢が叶えられるとは思えない環境だったと。

田舎だとダンスを習ってるような子も周りにいなくて、習いたかったらすごく遠くまで通わなきゃいけなかった。そういう環境なので、歌手になりたいという夢が自分でもピンときていなかったんですよ(笑)。

小さい頃からおせっかい焼き

──看護師になろうと思ったのはお母様のどんな姿を見たからですか?

小さい頃からよくナースステーションに遊びに行ってたので、母親が患者さんと接している姿を見ていました。母の優しい姿を目の当たりにして、私も人のためになる仕事に就きたいと思ったんです。

──小さい頃は「ケーキ屋さんになりたい」といった自己実現に頭が行きがちだと思うんですけど、あやかさんは「人のためになりたい」と考えるのが自然なことだったんですか?

瀬川あやか

それが私の性格なんだと思います。小さい頃からおせっかい焼きだったので、それも私の自己実現の1つだったというか。「ありがとう」って言葉をもらうこととか、人が喜ぶ姿を見ることがうれしいんです。それと人に何かをしてあげることで、自分に返ってくるものがある。例えば看護師の仕事だと、私より長く生きている患者さんと接することで、人生のいろんなことを教えてくださったり、患者さんの気持ちに触れて自分も柔らかな気持ちになったり。「人のために」と思ってやっていても、それ以上に受け取るものも多いんだなって思うんです。

──例えばおせっかい焼きの女の子って、友達にいろいろしてあげて嫌がられて、みたいな経験もあるんじゃないかなと思うんですけど。そういうこともなく?

中学生のときに女の子の友達同士が周りで揉めてて、全然関係ないのに私が間に入ったら巻き込まれちゃったりとか、そういうことはありました(笑)。でも看護学校の実習で患者さんに何をしてあげたらいいのかわからなくなってしまったときに「話しかけ続けるのではなく、一歩引いて無言でいる時間も看護だよ」って教わったことがあったんです。踏み込むばかりじゃダメなんだなって、看護学生になってからはそういうことも考えるようになりました。

メジャーデビューシングル「夢日和」 / 2016年6月15日発売 / ポニーキャニオン
初回限定盤 [CD+DVD] / 1500円 / PCCA-04387
通常盤 [CD] / 1000円 / PCCA-70476
CD収録曲
  1. 夢日和
  2. はりーあっぷ
  3. 夢日和 Inst.
  4. はりーあっぷ Inst.
初回限定盤DVD収録内容
  • 「夢日和」Music Clip
  • Making of「夢日和」
  • Music Video撮影オフショット
  • ジャケット撮影オフショット

ほか

瀬川あやかアコースティックワンマン ~卵・小麦粉不使用のふわふわホットミュージック~
2016年6月27日(月)東京都 SHIBUYA LOOP ANNEX
OPEN 19:00 / START 19:30
瀬川あやか(セガワアヤカ)
瀬川あやか

北海道富良野市出身のシンガーソングライター。5歳の頃からピアノを習い始め、歌手になるという夢を抱くと同時に、看護助手をしていた母親の影響で看護師を目指す。2011年、進学のために上京。大学1年のときに出場したミスキャンパスコンテストで準グランプリを獲得し、これをきっかけにアーティストデビューのきっかけをつかむ。2015年2月に看護師の国家試験に合格してからは看護師として働きつつ、弾き語りのライブを年間50本以上こなす。2016年6月にシングル「夢日和」をリリースし、ポニーキャニオンよりメジャーデビューを果たした。