SCANDAL|希望を込めたポジティブなダンスチューンとともに15周年のその先へ

SCANDALが今年3枚目のシングル「one more time」をリリースした。

8月21日に結成15周年を迎え、同日には大阪城ホールでのワンマンライブを成功させたSCANDAL(参照:SCANDALが大阪城ホールで迎えた結成15周年記念日、新旧楽曲で魅せたバンドの現在地)。そのライブでいち早く披露されていたのが「one more time」だ。ギターのカッティングが印象的に鳴り渡る軽快なサウンドに、ポジティブでハッピーなリリックが乗るダンスナンバーは、今の彼女たちのムードを鮮やかに伝えつつ、聴き手の心を光で満たしてくれるような仕上がりとなっている。

今回のメンバー全員インタビューでは、15周年を迎えた今の気持ちと大阪城ホール公演で感じた思い、「one more time」の制作にまつわるエピソードに加え、10月に予定されている対バンツアーについてもじっくりと語ってもらった。

取材・文 / もりひでゆき撮影 / 草場雄介

結成15周年を大阪城ホールで迎えて

──SCANDALは今年の8月21日で結成15周年を迎えました。改めておめでとうございます!

HARUNA(Vo, G) ありがとうございます。15年という短くはない時間をこの4人で過ごして、活動を続けて来られたことが一番うれしいです。

RINA(Dr, Vo) 私たちはダンススクールで出会ったメンバーで結成して、バンドなのか何者なのかわからないまま世に出て、そこから少しずつ自分たちのスタイルを作っていった。そのストーリーの上に今の自分たちがあるんだなと改めて感じます。

MAMI(G, Vo) うん。15年分の経験に今の自分たちはものすごく影響を受けているし、それをちゃんと肯定できているのがすごくうれしいことでもあって。これまでのすべてを受け入れたうえで今が一番いい状態だなと言えます。そんな15周年になりました。

TOMOMI(B, Vo) メンバーはもちろん、スタッフも含めて今がベストの状態だと思っていて。そして情熱を持って私たちを支えてくれるファンのみんなに出会えたことが、この15年で得た大きな宝物です。

SCANDAL

──結成記念日には大阪城ホールで「SCANDAL 15th ANNIVERSARY LIVE『INVITATION』」が開催され、その模様は日本を含めた世界53カ国で生中継されました。

HARUNA 私たちを応援してくれる人たちが世界中にいることは本当に心強いです。バンドとしてはメンバー4人で進んできたけど、4人以外の力が大きいんだとこのライブでも感じました。

MAMI とにかく本当に楽しいライブだったね。

RINA うん。めっちゃ楽しかったー!

HARUNA 過去に2回、大阪城ホールでライブをやりましたけど(1回目は2013年3月、2回目は2014年6月)、今回が一番満足できたステージでした。自分たちにとって大事な場所でライブをすることへのプレッシャーを感じることなく、この15年で私たちに出会ってくれたファンやスタッフへ恩返しをしたい気持ちを胸に、ナチュラルにステージを楽しめたんです。自分たちが大切にしている場所で、ものすごく大きな達成感、満足感を味わえたのは本当に幸せでした。

TOMOMI コロナ禍の中での開催だったので、会場に足を運んでくれたみんなにはいろんな思いがあったはず。でもみんな「ライブを開催してくれてありがとう」と言ってくれて。いやいやこっちのセリフだよ、みたいな(笑)。本当に感謝の気持ちしかないライブでしたね。

──RINAさんはあの日が誕生日だったので、お祝いがもう1つ重なっていて。

RINA 本当に偶然なんですけどけどね。振り返ってみれば14歳の夏にバンドに誘われ、て、「よし、この3人とバンドに挑戦してみよう」と思ったのが15歳の誕生日だっただけで。あのときの選択は間違ってなかったなと15年経った今も思うし、30歳という節目をみんなと一緒に迎えられて本当にうれしかったです。

振り返るのではなく“これから”を見せるための選曲

──ライブ中には、春から開催されていた楽曲人気投票企画「VOTE YOUR BEST SONG」の最終結果も発表されていましたね。

MAMI 1位から3位までは自分たちとしても納得だったんですけど、4位以降はわりと驚きの結果になりました。途中経過を4月のツアーで披露していたんですけど、上位には「そこからここまで上がってきたの⁉」みたいな曲もいっぱいあって。この順位を予想できた人はいないんじゃないかな。すごく面白い企画でした。

──その投票結果を反映させて15年の軌跡を描き出しつつも、あの日のセットリストは今のSCANDAL、そしてここからのSCANDALを鮮明に感じさせてくれるものになっていた印象もありました。

HARUNA(Vo, G)

HARUNA そうですね。今回は15年を振り返るというよりも、15年の間に私たちのファンになってくれた人たちにこれからの自分たちを見せるというイメージで考えたんです。10周年のときに振り返りはできたと思っているので、あの日は今後見せていきたい自分たちの姿にふさわしい曲を選んだ感じでした。

──セットリストには2つの新曲も含まれていました。1曲は今回リリースされる「one more time」。そしてもう1曲は「蒼の鳴る夜の隙間で」という楽曲でした。

RINA 「蒼の鳴る夜の隙間で」をやる前のMCでHARU(HARUNA)がちょっと触れてくれましたが、去年の自粛期間中にいろんな思いが交錯したし、失ったものも多かったんです。自分たちの仲間を失ってしまったこともあったし。そういう意味ではいいことばかりではなかったけど、でもそれによって気付けることもたくさんあった。そういう気持ちは一生忘れないけど、曲としてもちゃんと残しておきたかったので、歌詞と曲を衝動的に書いたんです。

──あの曲を聴いたとき、頭の中に大切な人の顔が浮かんできたんですよね。そういう力を持った曲だと思います。

RINA 自分にとって大切な人のことを思い浮かべながら聴いてもらえる曲になればと思っています。曲を作ったときはまさか大阪城ホールでやることになるとは思ってなかったんですけど、あの日にやれた意味はすごくあったんじゃないかな。曲に込めた思いを汲み取ったMCをHARUNAがしてくれたのも私としてはすごくうれしかったです。

幸せな気持ちを肯定する“明るくて踊れる曲”

──このたびリリースされた「one more time」は、ライブで聴いた瞬間にとんでもなくハッピーな気分になりました。6月にリリースされた「アイボリー」のインタビュー時にMAMIさんが「この先は明るいハッピーな曲を作りたい」とおっしゃっていましたが、まさにそんな仕上がりですよね(参照:4人のソロインタビューで紐解く「アイボリー」の魅力)。

MAMI(G, Vo)

MAMI そうなんですよ。「アイボリー」ができたことで、この1年間、自分の中に溜め込んでいた気持ちは一旦全部吐き出せたというか、気持ちがリセットできた感覚があったんです。なので、今度はポジティブで明るいサイドを表現したかった。それに最近よくK-POPを聴いているので「踊れる曲っていいな」とも思っていて。ざっくり言えば、明るくて踊れる曲をテーマに制作しました。結果的にやりたいことがちゃんとできた実感があって、この曲に対する満足度はかなり高いです。

──作詞はRINAさんが担当されていますね。「長い夜はもう開けた」という出だしからして最高だと思いました。コロナ禍はまだまだ収束したとは言えない状況ですけど、でもすべての人がそんな気持ちで前を向いていくこともまた大事なんじゃないかなと思えたというか。

RINA すべての人がまだ大変な状況ではあるけど、自分の好きなものや楽しいと思えることを封印する必要はないんじゃないかなと思ったんです。明るい気持ちになったり、幸せを感じることを肯定してもいいよねって。そう考えたときに、自分自身ももう一度、音楽を思いきり楽しんでみようと思えた。バンドを最高に楽しむぞという気持ちで歌詞を書きました。

──だから“one more time”なわけですね。

RINA はい。もともと「one more time」というタイトルの曲を作りたいという話が4人の中にあったので、今回はタイトル先行で作ったところもあります。そういう意味では4人全員の共通した思いの入った歌詞でもあると思います。

「あの“シェケナベイベー”の曲ね」って覚えてもらえたら

──歌詞には「Shake it up baby」というフレーズが入っていて、ライブで聴いたときに「わ、SCANDALが“シェケナベイベー”って言ったよ!」と思って、めちゃくちゃ気分がアガりましたけどね(笑)。

HARUNA あははは。

MAMI 作曲しているときから、あのメロにハマる言葉が「シェケナベイベー」しか浮かんでこなかったんです(笑)。デモの段階から「one more time」と「Shake it up baby」はすでに入った状態だったんです。

RINA(Dr, Vo)

RINA で、それを生かして歌詞を書いたんですけど、冷静になってみると「これベタすぎるんじゃないかな?」と思ったりもして……(笑)。プリプロのときに4人で話し合ったんですけど、音のハマりがめっちゃ気持ちよかったから、この曲ではその感覚を大事にするべきなんじゃないかなとそのまま生かすことになったんです。

MAMI 曲としてキャッチーな部分を作りたかったしね。「あの“シェケナベイベー”の曲ね」って覚えてもらえれば、それはそれでうれしいなと。今までの自分たちは1つひとつのワードにすごく意味を持たせたうえで発信していたので、ここまで語感やノリだけで歌詞を決めることはなかったんです。でもこの曲ではそれくらいやり切りたかった。なので「シェケナベイベー」をゴリ押ししました(笑)。

──アレンジには、SCANDALに加えて元・踊り場ソウルの橋本雄太さんの名前もクレジットされていますね。

TOMOMI うちの事務所の副社長(土屋文彦)が踊り場ソウルのボーカルだったので、そのつながりで今回お願いすることになりました。

MAMI この曲は自分たちの演奏は控えめにして、トラック重視でやってみようと思ったんです。はっしー(橋本)はRin音くんやasmiちゃんなど、うちの事務所に所属しているアーティストのみんなと一緒にやったりもしているので、今回は初めての試みとしてお願いしてみました。私たちがだいぶ好き勝手言わせていただいちゃったので、こいつらめんどくさいなと思われたかもしれないけど(笑)、すべてを快く受け入れてやっていただけました。

TOMOMI(B, Vo)

TOMOMI 具体的に言うと、イントロの音を決めるのにすごく時間がかかりました。フレーズは決まっていたんだけど、具体的な音色を「ああでもない、こうでもない」と、はっしーと一緒に時間をかけて決めていって。

RINA はっしーはレコーディングスタジオにも来てくれて、楽しくレコーディングができたよね。

TOMOMI うん。一緒に細かい部分まで徹底的にこだわることができてよかった。

──リズム隊の音が今回はすごく効いてますよね。だからこそしっかり踊れる曲になっているんだと思います。

TOMOMI そうですね。リズムが大事な曲になってくるので、リズム隊のサウンド作りには時間をかけました。踊れることに重点を置いた結果、ちょっと音を歪ませてみたりもして。

RINA ドラムに関してはキックとスネアの硬さ、締まり方みたいなところでめちゃくちゃこだわりました。打ち込みと生のドラムを重ねているパートでは、音の抜き差しもたくさんのパターンを試しましたし、レコーディングの現場でもいろいろ実験しながら作っていけてすごく楽しかったです。