ナタリー PowerPush - SALU

“本当のことだけ”のメジャーデビュー作「In My Life」

ライブの一番楽しいところを逃してた

SALU

──今、SALUさんがアーティスト活動の中で最も大事にしていることはなんですか?

ライブと詞を書くことですね。それだけが大事っていうか。ライブするために詞を書く。詞がないとライブができないから。

──それは活動を始めた当初から変わらず?

昔は、鋭さ、カッコよさっていう形だけでしたね。見ている角度が人とどれだけ違うかとか、どれだけオリジナルかとか、そういうことを考えてました。ライブは、始めた頃からつい最近までずっと、すごく苦手で。今でも得意とは言えないんですけど。

──えっ、そうなんですか。ステージを観ているぶんには苦手そうには見えないので意外ですね。

何が苦手かって、大勢の人が自分の言うことに耳を傾けてくれてるわけじゃないですか。自分で望んでやってるのに、それが怖かったんですよ。人と目を見て話せないような奴だったんで。だからサングラスをして目を見えないようにして、間違えたらディスられるから「間違えないように」とだけ意識を集中させてやってきてたんですけど、それだとライブの意味がないんですよ(笑)。「意味がない」は言い過ぎかもしれなけど、一番の楽しいところを逃してるっていうか。

──ライブの一番楽しいところ……人とのコミュニケーションですか?

はい。ライブってこういうふうに会話することの延長線上じゃないですか。CDじゃなく、生で。“スピーカーと耳”じゃなくて“口と耳と目”同士、だと思うんで。今は、聴いてくれてる人の集団ではなくて1人ひとりに向けて発信できたらなっていうことをライブでは大事にしてますね。

──SALUさんって、ライブ中によく声を出して笑いますよね。それがシリアスな場面だとしても。ケラケラとした笑い声はSALUの魅力の1つでもあると思います。

ははは、そうですか(笑)。自分の言ったことで笑う人ってけっこう気持ち悪くないですか?(笑) でも自分が素直にやりたいようにやったライブがあれなんですよね。笑っちゃうんですよね、自分で言ってて(笑)。「何言ってんだ」みたいな。

──言った瞬間に俯瞰で見ちゃうと。

そうなんですよ。てか、言いながらもう俯瞰で見てるかな。それは癖で、いつも歌詞を書くときもそうだし、みんなで遊んでるときもどこか遠くからその風景を見たりしちゃうんで、ライブのときもたぶんやってるんですよね。

「日本人、25歳、男」名前を付けるとしたら「SALU」

──じゃあ、SALUというアーティストを思いっきり俯瞰で見て、世の中の人に紹介するとしたらどう言います?

うーん……(しばらく考え込む)。まあ「日本人、25歳、男」って感じですね。それに名前を付けるとしたら「SALU」。ほんと、僕を星から見たら、見えないくらいの“点”でしかないんですよ。みんなそうじゃないですか。そこにタグ付けるとしたら「日本に住んでる25歳の男です」。究極言っちゃうとそうですね。

──「ラッパー」っていう肩書きはいいですか?

ラッパー……はとりあえずいいっすね。ある日突然ラップ辞めたらラッパーじゃないじゃないですか。その可能性も超あると思うんで、それを無視して「一生ラッパーッス」とか言うと嘘つきになっちゃうから(笑)。

──正直ですねえ(笑)。

嘘つきにはなりたくないんです。嘘をついたことによって傷つく人と、それを見て傷つく自分が嫌なんですよ。だからできない約束はしたくないし、するべきじゃないし、カッコ悪くても本当のことしか言いたくないんですよね。

──「I Gatta Go」の「幾つになってもこの先 本当のことだけ吐き続けてたい」っていうラインと同じですね。

その通りで、いつまでも本当のことを詞にしていきたいんですよ。で、それがもし受け入れられなくなったら、そこで終わりってことかなと思ってます、今は。まあ、そこまで行って方向転換するかもしれないけど、今はそれを大事に続けていきたいっていう気持ちですね。

──せっかくメジャーデビューもしたことですし、できる限り音楽は続けてほしいですけど。

いや、音楽はずっとやるつもりですよ(笑)。やっぱりラップしかできないんで。でも、ある日突然歌詞書けなくなったらそこまでだから、人に歌詞書いてもらってまでやりたくないなっていう。

──なるほど。最後に、ご自分の未来は明るそうですか?

うーん。僕がずっと輝いていられたら、僕を含むすべては明るく照らされ続けるかなって思います。

──自分自身が輝いていたら。

誰かに照らされなくてもいいかな。自分が輝けて、さらにほかの守りたい人に光を届けられたら、それで僕は幸せです。

ミニアルバム「In My Life」/ 2013年6月5日発売 / One Year War Music / TOY'S FACTORY
「In My Life」
「In My Life」初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 / TFCC-86435
「In My Life」通常盤[CD] 1500円 / TFCC-86436
CD収録曲
  1. Rebirth
  2. In My Life
  3. 鵠沼フィッシュ
  4. ホームウェイ24号
  5. Flow in the Rain
  6. Changes feat. Mummy-D
  7. I Gotta Go
  8. In My Life(Remix)feat. PES(Bonus Track)
初回限定盤DVD収録内容
  1. "In My Life" Music Clip
  2. "In My Life" Music Clip -Behind the Scene-
  3. "In My Show 2012" at WWW Shibuya 2012.11.02 Digest
  4. CONVENTION LIVE at Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE 2013.04.12 Digest
SALU (さる)
SALU

1988年、北海道生まれのラッパー。2010年に当時はまだ無名の存在だったにもかかわらず、SEEDAが所属するSCARSの「CASH & THE CASHER」で客演ラッパーとしてフィーチャーされる。翌2011年にはSEEDA「黙る時代は終わり」、JAY'ED「ブレイブ・ハート」、SIMON「Change My Life」といった楽曲に次々とフィーチャーされ、話題の存在となった。さらに同年末には、SALU名義での初音源「Before I Signed」をフリーダウンロードという形で発表。そして2012年3月、BACHLOGICが立ち上げたレーベル「One Year War Music」から1stアルバム「In My Shoes」を発売。2013年6月にはTOY'S FACTORYよりメジャーデビュー作品となるミニアルバム「In My Life」をリリースする。