さかいゆう|国内外の敏腕と作り出す新たなポップミュージック

Zeebraのすごさは超一流サックス奏者2人分

──サイプレス上野さんが参加してる「SoDaRaw」とかバンド+ラップ的な曲もありますね。このアレンジは?

ヘッドアレンジはもともとできてたんですけど、生ピアノにしてウッドベースにして、ちょっと打ち込みっぽくしたのは編曲をしてくれた岩崎太整くんのアイデアですね。ウッドベースじゃなくてもいい曲をあえてウッドベースでやっているのが面白くて。ちなみに全部ワンループで、デモにはQ・ティップのものまねをした僕のラップが入ってましたよ。

──あと「Tokyo Loves」のZeebraさんのラップもすごいですね。彼の魅力はどんなところにあると思いますか?

僕の中で“Zeebra最強説”がありますよ。いろんなタイプのラッパーがいるじゃないですか、カリスマ性がある人、人気がある人、フリースタイルがうまい人。ジブさんって、リズムが一番カッコいいラッパーだなって思うし、一番楽器っぽいなって思うんですよ。彼がフロウしているときって、ジャズもファンクもブルースもわかってる超一流のサックス奏者がプレイしてるみたいな感じなんです。しかも、それに歌詞が付いてるから、僕の中では超一流サックス奏者2人分くらいのすごさなんですよね。リズムのいい人もいるし、タイトな人もいるんですけど、ジブさんのグルーヴってスペースがあって、音楽的なんですよね。そのことを指摘したら、それはミュージシャンからよく言われるって。そりゃそうですよ。この曲にはそういう楽器の匂いのするラッパーがいいなと思って。

──昔、フリューゲルホルン奏者のTOKUさんも「Zeebraは演奏の流れを理解したうえでラップをやってる」って、今のさかいさんと同じことを言ってました。

ジブさんのラップって音楽の一部になろうとするようなグルーヴ感があって、ほかの人の演奏を損なわないリズムをしてるから、そこがすごいなって思います。

──そういう意味ではさっき名前が出ましたけど、実際に楽器をやるQ・ティップも同じ匂いのするラッパーですよね。

そうなんですよ、僕はミュージシャンっぽいラッパーが好きなんですよね。そうじゃないと息が詰まっちゃう。スペースがあって、グルーヴがあって、呼吸できる音楽が好きだから。クラシックだったらバッハとかドビュッシーが好きで、空気になってくれる音楽家がいいですよね。

──そしてポップス職人って感じの蔦谷好位置さんとの曲もあります。彼との「最後栄光」はどんな感じで作ったんですか?

蔦谷さんのスタジオで「最近どんな音楽聴いてる?」って話から始まって、メロディを2人で一気に作りました。そのときに聴いてたのはチャンス・ザ・ラッパーの作品とかボビー・コールドウェルとジャック・スプラッシュがやってた「COOL UNCLE」とか。あとはゴスペル。アデルのレンジ感のすごさの話もしましたね。この曲はそういうやりとりから生まれました。

さかいゆうにしかできない音楽

──では今作の制作期間はどのくらいでしたか?

このアルバムには2年以上かかっているんですよ。間にEPは出してたんですけど、曲ばっかり溜まっていって、40~50曲くらいになったんです。今回は入れられなかったシングルっぽい曲だけでも10曲くらいあるんですよ。

──その使わなかった曲ってどうするんですか?

ほっといてますね。あとから使うこともたまにあったりするんですけど、メロディとかも古くなっちゃうから。トラックありきのメロディの場合とかはもう出せないですよね。使うとしたら、メロディのエバーグリーン性が必要で。トラックのカッコよさじゃなくて、メロディがすごくよければトラックはいくら変えても大丈夫なので。だから、メロディが一番大事ですね。ジョンスコも彼が弾くメロディが好きだから好きなんですよ。あとはトーンですね。トレンドとかありますけど、5年後に聴くかってなるとメロディとかトーンとかが重要だと思ってます。特にメロディって音が1個変わるとまったく世界観が変わるものだから。何万パターンの音の組み合わせで異なるメロディが存在してて、その中であえてそのメロディをチョイスしたってことは必然性があると思うんですよ。しかも、そこにトーンを組み合わせると、ものすごい数の可能性が生まれます。例えば「I LOVE YOU」でも尾崎豊があの声で歌うからいいわけで、ほかの組み合わせだと違うものになるんですよ。

──最後にこうやって3カ所で録音してみて、気付いたことはありますか?

僕の場合はロサンゼルスに行ってたこともあるし、海外への憧れが強いんですよ。僕は洋楽でも邦楽でもない音楽を作る使命があるのかなと思ってますね。でも、自分はアメリカ人みたいには歌えないですから。ただ、今回、さかいゆうにしかできない音楽が作れたかなとは思ってます。ジョンスコも「この音楽はなんだ?」ってなってましたから。

サ上とロ吉とさかいゆう
  • 出演者 サイプレス上野とロベルト吉野 / さかいゆう
  • 2019年1月24日(木) 東京都 clubasia
さかいゆう TOUR 2019 “Yu Are Something”
  • 2019年4月6日(土) 高知県 CARAVAN SARY
  • 2019年4月7日(日) 大阪府 大阪国際交流センター
  • 2019年4月22日(月) 東京都 Zepp DiverCity TOKYO