音楽ナタリー Power Push - さかいゆう
等身大の“踊れるポップス”集「4YU」
さかいゆうが約2年ぶり4枚目のオリジナルアルバム「4YU」を完成させた。本作は、mabanua(Ovall)、Avec Avec(Sugar's Campaign)、渡辺シュンスケ(Schroeder-Headz)、西寺郷太(NONA REEVES)などの手も借りて、多彩なジャンルの音を詰め込んだ“踊れるポップス”集とも言える内容。初回限定盤には、インディーズ時代から現在までに発表したカバー曲7曲と、カバーライブ音源2曲、地元高知の民謡をさかい流にアレンジした新録曲「よさこい鳴子踊り」を含む特典CD「さかいゆうCOVER COLLECTION」が付属する。音楽ナタリーではさかいにインタビューを行い、「今までで一番自分好みのアルバム」と語る作品の中身について聞いた。
取材・文 / 鳴田麻未 撮影 / 佐藤類
今までで一番自分好みのアルバム
──「4YU」は、ここ数年さまざまなことを吸収したり試したりして経験値の上がったさかいさんが、力まず作った、とても“らしい”オリジナルアルバムだと思いました。制作におけるテーマはあったんですか?
テーマとかコンセプトはね……別になくて、いつも通りいろんな色の曲を取っ散らかせたかったですね。どれもほっといたら出てきちゃったって感じの曲です。全体的には、踊れるポップスになってると思います。それはダンスミュージックっていうことじゃなくて、歌が主体でありつつ、サウンドのロー感の豊かな感じ。今回はマスタリングがいい感じでできたんですよ。ポップスではあり得ないぐらいローが聞こえる。僕としてはあんまりストレスなく作れて、「あーこれこれ」って思える、今までの作品の中で一番自分好みのアルバムです。
──「踊れるポップス」というのは聴いた所感として納得です。
グルーヴィな曲が多いですしね。バラードは「ジャスミン」くらい。歌モノを求めてる人にとっては、もっと“歌メイン曲”が欲しいかもしれないですけど、自分はファンクもジャズも大好きで、そのあたりはもともと踊る音楽だから。
──前作「Coming Up Roses」以降2年間、「こういうアルバムを作ろう」と考えていたわけではないんですね。
そうですね。曲を作るってライフワークだから。僕は、自分がちょっとしんどいときに元気をくれるような曲がいいなって思って作っているんですけど、自分みたいな人にとってはいいアルバムなのかなって。
──自分みたいな人?
僕の曲がいいって言ってくれる人はどこかちょっと僕と似てる、Eメジャーセブンスの好きな人だと思うから(笑)、欲してる人に届けばうれしいなと思います。そうやって自分のやりたい方向に突き進んでる感じがしますね、最近。
──その「欲してる人」ってキャリアを重ねて変化したり増えたりしてる感覚はありますか?
実感はないですね。ないけどライブ会場のキャパが大きくなってるから、お客さんも増えてるのかなって。僕はただライフワークとして曲を作って、チケット買ってくれる人に向けて真摯にライブをやり続けてる。その基本的なことがすごい大事だなと思ってて。30代半ばになって、上の世代も下の世代もいて、本当にいい環境で活動させてもらってるなと。自分でアルバムを聴いても、じっくり音楽やってるなーって感じます。
──そうなんですね。
こうやってアルバムを4枚作って、今後も作っていきたいとなると、結局は自分が好きなもの、自分が感動できるものに向き合いながらやっていくのが一番なんですよね。自分のことを好きな人に向けて曲を書いているから、マスタリングの音圧競争にも参加しなくていいわけだし。今のファンの人たちに加えて、テレビとかラジオとか雑誌とかWebを通じて、まだ会ってない、でも僕の音楽を欲してくれそうな何十万人、何百万人に「こういうことやってるんだな」って知ってもらえればいいんです。今回は36歳のさかいゆうの等身大の自分が出た作品。「これ力作なんですよ!」とも言わなくていい、そういうアルバムになったなと思ってます。
──なるほど。
でも、(初回限定盤の)特典が豪華すぎて、どんだけ初回盤売りたいんだ!?って(笑)。
──10曲入りのカバーコレクションですね(笑)。
このCDでよかったなと思うのは、音源のリマスタリングが改良できたこと。通な聴き方かもしれないけど、本編のいいテンションが特典ディスクにも映ってるというか、いいマスタリングができました。歌に関しては「よさこい鳴子踊り」が気に入ってます。
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- 4thアルバム「4YU」 / 2016年2月3日発売 / アリオラジャパン
- 初回限定盤 [CD2枚組] 3900円 / AUCL-198~9
- 通常盤 [CD] 3240円 / AUCL-200
収録曲
- SO RUN
[作詞・作曲:さかいゆう / 編曲:mabanua] - Doki Doki
[作詞・作曲:さかいゆう / 編曲:さかいゆう、Avec Avec] - WALK ON AIR
[作詞:渡辺シュンスケ / 作曲:さかいゆう / 編曲:石崎光] - 下剋情緒
[作詞・作曲・編曲:さかいゆう] - あるギタリストの恋
[作詞・作曲:さかいゆう / 編曲:石崎光] - 愛は急がず -Oh Girl-
[作詞:西寺郷太(NONA REEVES) / 作曲:さかいゆう、Avec Avec / 編曲:Avec Avec] - サマーアゲイン
[作詞・作曲:さかいゆう / 編曲:さかいゆう、Shingo Suzuki] - SELFISH JUSTICE
[作詞・作曲・編曲:さかいゆう] - トウキョーSOUL
[作詞:森雪之丞 / 作曲・編曲:さかいゆう] - 愛は微熱
[作詞・作曲・編曲:さかいゆう] - ジャスミン
[作詞:さかいゆう / 作曲:さかいゆう、蔦谷好位置 / 編曲:蔦谷好位置]
初回限定盤CD収録曲
「さかいゆうCOVER COLLECTION」
- つつみ込むように…(MISIA)
- 今夜はブギーバック(NICE VOCAL)(小沢健二 featuring スチャダラパー)
- ACROSS THE UNIVERSE(The Beatles)
- One more time, One more chance(山崎まさよし)
- 遠く遠く(槇原敬之)
- The Stranger(ビリー・ジョエル)
- 接吻(ORIGINAL LOVE)
- よさこい鳴子踊り(高知県民謡)
- What's Going On(LIVE at Billboard Live)(ダニー・ハサウェイ、原曲はマーヴィン・ゲイ)
- PAPER DOLL(LIVE at Billboard Live)(山下達郎)
※カッコ内はオリジナルアーティスト
さかいゆう TOUR2016 "4YU"
- 2016年6月17日(金)北海道 cube garden
- 2016年6月21日(火)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2016年6月28日(火)高知県 X-pt.
- 2016年6月29日(水)大阪府 Zepp Namba
- 2016年7月1日(金)福岡県 DRUM Be-1
- 2016年7月3日(日)東京都 昭和女子大学人見記念講堂
さかいゆう
高知県出身の男性シンガーソングライター。20歳で上京し、独学で音楽を始める。2001年に単身渡米しロサンゼルスでストリートパフォーマンスを行いながらピアノを習得。帰国後の2004年頃よりソロ活動を本格化させ、2009年10月にシングル「ストーリー」でメジャーデビュー。胸を打つ歌詞、透明感ある歌声が広く支持されている。また客演も多く、これまでにマボロシ、KREVA、RHYMESTERなどさまざまなアーティストとコラボレーションを行っている。2015年1月にはそんなコラボ楽曲をまとめたアルバム「さかいゆうといっしょ」を発表。2016年2月に4thアルバム「4YU」をリリースする。