1回聴いたら耳に染み付く
──今回のベスト盤ではWatanabeさんが「Mind Mapping」をリミックスしました。選曲はRyu☆さんが?
Ryu☆ はい。もう決め打ちで「『Mind Mapping』をお願いします!」って。
Watanabe 改めて「Mind Mapping」を聴かせてもらって、すでに完成されている曲だなって印象があって。原曲のよさ、ファンの人たちが好きな形をあえて崩す場合、どういう崩し方がいいのか、そこにどういう発展があるのかっていうのを、リミキサーは責任を持たなくてはいけない。なので快諾したのはいいけど、曲を聴いてみて「これはちゃんとホントにしっかりちゃんとした答えを出さないといけないパターンだ」って気合いを入れなおしました。
──Ryu☆さんはなぜ「Mind Mapping」を指定したんですか?
Ryu☆ Watanabeさんにリミックスをお願いすることが決まったときにすぐ思い付いたのが「Mind Mapping」なんです。「Mind Mapping」という曲はいつもの自分の作り方と違って、Cubaseで好きな音を1つ作ってから「こういうネタを入れたからこういうネタも」というふうに連想ゲームのような感じで音をつなげて作った曲なんです。そういう背景もあって、Watanabeさんの手にかかったら面白くなるかなと。
Watanabe あ、なるほど。それって僕の曲の作り方に似てるんだよね。だからきっと僕の音楽から「Mind Mapping」の要素に近いものを感じ取ってくれたんだ。
──Watanabeさんはどういうところを取っかかりにして「Mind Mapping」のリミックスを?
Watanabe この曲は1回聴いたら耳に染み付く存在感のあるメロディだから、メインのメロディを入れるだけで曲全体を埋め尽くしちゃうような力があると思ったんだよね。リミックスの作業を始めるときはメロディの力をどうコントロールするか、ベストなバランスはどこかっていうのを探っていって。そのバランスが見えてからはけっこうスムーズに制作が進みました。それと原曲のデータをもらって、リミックスするためにステムミックスを見せてもらったんだけど、サラッと流れるように聞こえているんだけど、意外と手の込んだ作り方をしてるなってことがわかって。
Ryu☆ 僕の曲の中では「Mind Mapping」は音数が多い曲かもしれません。ただ、今の若いクリエイターに比べたら自分はまだ音数が少ないほうです。若手の中には100レイヤーぐらい普通に超えたデータを送ってきますから。データをもらって読み込むだけでけっこう大変なんですよ。
Watanabe ははは(笑)。どんどんBPMも速くなってるし、音の数もどんどん増えているよね。20年も経ったわけだから機材も進歩するし、それに合わせて音楽も変わっていくのは当然だし、面白いことだと思います。
音楽を体に馴染ませる体験
Watanabe Ryu☆くんは以前から第一線で活躍していたし、曲も「いいな」って思っていたけど、今回リミックスをやらせてもらってさらにその奥の魅力、ものすごく丁寧に曲作りをしてるってことを感じました。メロディが強いからすごく耳に入ってきやすい音楽だけど、決してノリで荒々しく作っているわけではなくて、メインのメロディ以外もものすごく丁寧に作り込まれてる。作り込んでいるだからこそ、メインのメロディが引き立っていると言うか。
Ryu☆ ありがとうございます!
──Ryu☆さんは青龍名義のものも含めて、すでに何作かベスト盤をリリースしていますが、必ずベスト盤用に全曲ミックスをし直すんですよね。曲作りだけではなく、発表する作品への向き合い方もものすごく丁寧だと感じています。
Ryu☆ 全部の音源を買ってくれている人もいるから、やっぱり少しでも違うものを聴かせたくなっちゃうんですよね。あと機材の進歩が目覚ましくて、今の機材のほうが絶対いい音が出せるんですよ。ただ、だからと言って曲をいじりすぎるとリスナーに怒られることも……
Watanabe なるほどね。あくまでリミックスではないわけだもんね。
Ryu☆ そうなんですよ。前に作った曲と向き合うと「ちょっとチープなんだけどこれは残しとかなきゃダメだろうなあ」って音を見つけることもあって。そこの判断と言うか、リスナーの方々との押し引きは難しいですね。ホントは全部変えちゃいたい気持ちがあるけど、それをグッとこらえて「いい音になってるなあ」ぐらいの曲にしています。
beatmaniaはライブに近い
Watanabe 僕はもうしばらくbeatmaniaには曲を提供していないんだけど、Twitterとかでたまに20年前の僕の曲について発言してくれている人がいて。20年も前の曲の話をリアルタイムでしてくれているのは一重にbeatmaniaというゲームがずっと続いてくれたおかげだし、音ゲーって今考えるとすごい発明だったんだなと思ってます。
Ryu☆ 初めてbeatmaniaをプレイしたとき、現実のDJとやってることは全然違うけど、演奏する楽しさみたいなものは直感的に感じられたんですよね。
Watanabe beatmaniaに関しては音楽がBGMじゃないんだよね。音楽が主役だし、実際にゲームをプレイして“音楽を体になじませる”感じがあると言うか。 ゲームをプレイしながら、トラックメーカーが作ったビートを体に叩き込むわけだし、そんなのこれまでゲームだけじゃなくて、音楽の作り手たちでもやってなかったことだよね。音楽のインプット方法としてかなり新鮮だったし、いい試みだったんだと思う。
Ryu☆ 僕はもともとゲームのプレイヤーだったので、ビートの組み方とかは自然と先人たちのエッセンスが体に入ってると思っています。
Watanabe 耳と目と指で音楽を楽しむってけっこうすごいことだよね。ともすれば訓練みたいなことにもなりかねないわけだし。
Ryu☆ 画期的な方法で一般層を引き込みましたよね。「楽譜を読む」って練度が必要なことなんですけど、落ちてくる音符に合わせてタイミングよくボタンを押す仕組みにすることで、反射神経を使うゲームにしたところがbeatmaniaの面白さを引き立てたし、いろんな方々が気軽にプレイできるようになったんですよね。
Watanabe しかもbeatmaniaって、当時のゲームセンターでメチャクチャ目立ってたんだよね。派手な筐体だし、音はガンガン出てるし。
Ryu☆ 人だかりの中でゲームをプレイする快感みたいなものもあったと思います。
Watanabe そう考えるとbeatmaniaはライブに近いよね。格闘ゲームとかでもうまい人がいて、人だかりができることはあるけど、そこで音楽を奏でられる快感っていうのはエンタテインメント性として高いと思う。ホント、よくこういうゲームが作られたなって感心しました。
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beatmaniaは楽器である
- Ryu☆「Ryu☆BEST -SUNLiGHT-」
- 2018年3月7日発売 / EXIT TUNES
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初回限定盤 [CD2枚組]
3240円 / QWCE-90015
- DISC 1収録曲
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- SUNLiGHT / 日龍
- OOO (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆ feat.moimoi
- サヨナラ・ヘヴン (Ryu☆Remix SLver) / 猫叉Master
- iViva! (SUNLiGHT Mix) / Ryu*
- in motion (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- Light Shine (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- Dreaming Sweetness (SUNLiGHT Mix) / Auridy
- H.U.D.01 (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- Fly you to the star (SUNLiGHT Mix) / Another Infinity feat. Mayumi Morinaga
- Dazzlin' Darlin (SUNLiGHT Mix) / HHH
- So Fabulous!! (SUNLiGHT Mix) / HHH
- passionate fate (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- Be quiet (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- Right on time(Ryu☆Remix SLver) / Robbie Danzie
- Ignited Night (SUNLiGHT Mix) / HHH
- まほろば (SUNLiGHT Mix) / HHH+H
- Donkey Donk (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- 雪月夜 (SUNLiGHT Mix) / Ryu*
- 合体せよ!ストロングイェガー!!(Ryu☆Remix SLver) / L.E.D. Remixed by Ryu☆
- Second Heaven 2k18 / Ryu☆
- ナタラディーン (Raja Maharaja mix) / Q-Mex RMX by Auridy
- JET WORLD (Ryu☆Remix SLver) / 泉陸奥彦 Remixed by Ryu☆
- Like+it! (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- 中華急行 (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- RIZING YOU UP (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- DISC 2収録曲
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- FLOWER (Ryu☆Remix SLver) / DJ YOSHITAKA
- Fly Abobe (Ryu☆Remix SLver) / Sota Fujimori
- It's my Miracle (SUNLiGHT Mix) / Another Infinity feat. Mayumi Morinaga
- 532nm (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- 800nm (SUNLiGHT Mix) / Another Infinity
- AGEHA (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- SPICY PIECE (Ryu☆Remix SLver) / ORIGINAL SOUND TRACKS
- in the Sky (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- ABSOLUTE (Ryu☆Remix SLver) / dj TAKA
- bloomin' feeling (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- sakura storm (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- Sakura Sunrise (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- Run Run (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- smooooch・∀・(SUNLiGHT Mix) / kors k
- Honey Party (SUNLiGHT Mix) / Ryu☆
- mosaic (SUNLiGHT Mix) / Auridy
- NZM (SUNLiGHT Mix) / The 4th
- NNRT (SUNLiGHT Mix) / Levaslater
- 恋する 宇宙戦争っ!! (Ryu☆Remix SLver) / Prim
- Do it!! Do it!! (SUNLiGHT Mix) / Kraken
- 朧 (kors k Remix) / HHH×MM×ST
- I'm so Happy (P*Light Remix) / Ryu☆
- 3y3s (BlackY Blazeful Remix) / 青龍
- Plan 8 (Camellia’s “From Inner Cosmos” Remix) / Ryu☆
- Mind Mapping (Hiroshi Watanabe aka QUADRA) / Ryu☆
- HIROSHI WATANABE「THRESHOLD OF ETERNITY EP」
- 2018年4月16日発売 / Transmat
-
[アナログ盤]
1490円 / MS-090
- SIDE A
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- The Leonids Strings
- SIDE B
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- In To The Memory
イベント情報
- EDP presents ULTRA SUPER Fes'18
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2018年3月31日(土)東京・新木場STUDIO COAST
OPEN 14:00 / START 15:00
- Ryu☆(リュウ)
- 男性トラックメーカー。2000年、KONAMIの音楽ゲーム「beatmania IIDX 3rd style」の公募に送った楽曲が同ゲームに採用され、以来「beatmania」シリーズの主力クリエイターとして活躍。2009年にRyu☆名義の1stアルバム「starmine」を発表して以来、ゲームのサントラを多数手がけている。またその一方でトラックメーカーStarving Trancerとプロデューサーユニット、Another Infinityを結成。「beatmania」シリーズに楽曲を提供するほか、女性ボーカリストDaisy×Daisyの歌うテレビアニメ「FAIRY TAIL」のオープニングテーマ「永久のキズナ」を制作し、Another Infinity feat. Mayumi Morinaga名義でアニメ「ゆゆ式」エンディングテーマ「Affection」を発表している。2016年2月、ベストアルバムとして「Ryu☆BEST -STARLiGHT-」「Ryu☆BEST -MOONLiGHT-」の2作品を同時リリース。また同年4月には自身が主宰する新レーベル・EDPを新設した。2018年3月、3作目のベストアルバムとして「Ryu☆BEST -SUNLiGHT -」を発表した。
- HIROSHI WATANABE(ヒロシワタナベ)
- ドイツ最大のエレクトロニックレーベル・Kompaktより長きに渡りKaito名義の作品を発表する傍ら、ギリシャのKlik Recordsからも作品をリリース。2002年に制作したKaitoの1stアルバム「Special Life」に収録された「Intension」がFrancois K.のミックスCDに収録されるなどで話題を呼んだ。2006年にはKaito名義の2ndアルバム「Hundred Million Light Years」を発表。この2枚のアルバムでKaitoの名は世界中に浸透し、「Sonar Festival」などの海外のイベントでライヴを行った。本名のHiroshi Watanabe名義では2007年に1stアルバム「Genesis」を、2011年に「Sync Positive」をリリース。2016年にはアメリカ・デトロイトのレーベル・Transmatより日本人として初となる音源「Multiverse」をリリース。2018年4月にはTransmatから新作音源「Threshold of Eternity EP」を発表する。