Mayumi Morinagaがベストアルバム「All that is. Is that all?」を3月6日にリリースした。

本作は「Mermaid girl」「朧」といった音楽ゲーム「BEMANI」シリーズで人気の楽曲を収めたDISC 1、デビュー曲「One Million Miles」やAnother Infinityによる新規書き下ろし曲「September」などオリジナル曲を中心としたDISC 2、「恋する☆宇宙戦争っ!!」「轟け！恋のビーンボール!!」といったPrim名義の楽曲を収録したDISC 3の3枚組仕様。Mayumi Morinagaの12年にわたるキャリアを総括した46曲入りのベスト盤となっている。音楽ナタリーではMayumi Morinagaに数々の楽曲を提供してきたトラックメイカー・Ryu☆を招き、対談を実施。ベスト盤の収録曲をもとにキャリアを振り返るトークを軸に、多彩な楽曲を歌いこなすボーカリスト・moimoiことMayumi Morinagaの魅力に迫る。

取材・文 / 倉嶌孝彦　撮影 / 曽我美芽

ベストアルバムは私の履歴書

──「All that is. Is that all?」はキャリア初のベストアルバムとしてリリースされる作品です。moimoiさんにとってベストアルバムはどういう意味合いを持つアイテムですか？

Mayumi Morinaga　デビューしてもう12年になるんですけど、なんだか履歴書のようなものが欲しいなあと思って（笑）。今回のベスト盤は3枚組なんですけど、それぞれリリースした年代順に並んでいるんですよ。だから私の履歴書がやっとできました。

Ryu☆　再就職とかはしないでよ？

Morinaga　わかりました（笑）。

──Ryu☆さんはすでにベスト盤を3枚リリースしてますが、Ryu☆さんにとってベスト盤はどういうアイテムですか？

Ryu☆　タイムカプセルのようなアイテムだと思います。自分はベスト盤リリースの際に必ず音をいじってるんですけど、リスナーさんの期待は裏切りたくなくて。初めて聴いた当時の空気感はちゃんと残しつつ、今の音にアップデートするという作業にすごくこだわってます。

Morinaga　今回のベストアルバムでもRyu☆さんに提供してもらった曲は「AI Ver.」として音を新しくしてもらっているんです。特に「BEMANI」シリーズのファンは何度も繰り返し曲を聴いてくれていると思うので、ちょっとした変化にも注目してもらいたいですね。

最初は苦手意識を持っていた

──moimoiさんはベスト盤に収録された楽曲たちと改めて向き合ってみて、どう感じましたか？

Morinaga　これはいい意味でなんですけど、歌い方が本当にバラバラなんです。バリエーション豊か。私ってすごいんだなと思いました。

Ryu☆　ハハハ（笑）。でも本当にmoimoiはいろんな歌い方ができるようになったよね。

──トラックメイカーとして何度もmoimoiさんに曲を歌ってもらってきたRyu☆さんは、moimoiさんをどんな特徴を持ったボーカリストだと捉えていますか？

Ryu☆　まず、moimoiは声質がちょっと特殊なんですよね。実はmoimoiのデビュー曲「One Million Miles」のレコーディングのときは自分も現場にいて。DJ UTO（音楽プロデューサー。オーディション番組「歌スタ!!」でMayumi Morinagaをスカウトした）さんが手がけたデビュー曲「One Million Miles」の横で、朝から晩までレコーディングをしているところを見てたんですけど、なんと言うか、moimoiの声ってオケに対して浮くようなボーカルなんですよ。

Morinaga　わ、初めて聞いた。どういうことですか？

Ryu☆　簡単に言うと、オケに混ぜるのがすごく難しい。

Morinaga　難しいんですか！

Ryu☆　うん。「One Million Miles」のミックスを担当したわけではないんですけど、その後moimoiのボーカルデータを触る機会があって、実際に曲を作ってみようと思ったら、歌と曲が全然混ざらなくて。最初、自分はそれでちょっと苦手意識を持ってしまったんですよ。「moimoiのボーカルを扱うのはすごく難しいぞ」って。でも何作品か一緒に音を作っていくうちに、moimoiのボーカルはどんなオケでも前に出る強さを持ってるんだってことに気付いたんです。ポップスを作るうえで、ボーカルが強いことはむしろ長所なので、そのことに気付いてからはmoimoiとの曲作りがすごく楽しくなりました。

Morinaga　確かに歌手を目指す前から「声が特殊だね」って周りからよく言われてたんですよ。「アニメの声優さんとかにならないの？」と言われたこともありますけど、ずっと歌手になりたかったから、自分の声が歌にも向いててよかったです。

──逆にmoimoiさんにとってRyu☆さんというトラックメイカーはどういう存在でしょうか？

Morinaga　もう私にとって欠かすことのできない作曲家さんだと思いますし、Ryu☆さんの曲を聴くと必ず元気が出るんですよ。すごくアゲたいときはRyu☆さんの曲。ライブでRyu☆さんの曲がかかるとフロアの盛り上がりも本当にすごいんですよ。手の上がり方がハンパない（笑）。

Ryu☆　自分の得意とするジャンルがハッピー系だから、そう思ってくれるのはすごくうれしいね。

Morinaga　嫌なことがあったときにRyu☆さんの曲を聴くと元気になる。すごいセンスを持った人だと思います！

Ryu☆　自分とmoimoiは同じ九州人だから、もしかしたら同じバイブスを持っているのかもしれないね。

Morinaga　そっか。だから血が騒ぐのかもしれないですね（笑）。

ロケテで興奮した「Mermaid girl」

──ベスト盤の収録曲の中で、moimoiさんの転機になった曲はどれですか？

Morinaga　もちろんデビュー曲の「One Million Miles」は大きなターニングポイントではあるんですけど、それ以外だとやっぱり初めて「beatmania IIDX」に収録された「Mermaid girl」ですね。この曲をきっかけに毎シーズン歌わせてもらえるようになったので、2回目のターニングポイントとなった曲だと思います。

Ryu☆　「Mermaid girl」の制作は大変だったよね。作曲は自分なんだけど、Halkaさんが歌詞とプロデュースを担当する役割だったから、OKが出るまで60テイクぐらいのバージョンを作りまして。そのこだわりの甲斐あって、「beatmania IIDX 18 Resort Anthem」のロケーションテストではずっと「Mermaid girl」が流れてて。

Morinaga　あれはうれしかったなあ。ゲーム機から自分の歌声が流れてくる経験が初めてだったので、すごく興奮しました。

Ryu☆　ロケテの筐体ってそんなに曲数が入っていないんだけど、普通は前の人がプレイしなかった曲を選ぶことのほうが多いんだよね。みんなどんな曲が新しく入るのか知りたいから。でも「18」のロケテはみんながみんな「Mermaid girl」をプレイしてた。

Morinaga　「Mermaid girl」はライブで必ずと言っていいほど歌う曲だし、ファンの方の中でも「『Mermaid girl』がきっかけで」と言ってくださる方が多いんです。これから先もずっと歌い続ける曲だと思います。