緑黄色社会|4人の“溢れ出す”思いをこの1枚に込めて

緑黄色社会が11月7日にミニアルバム「溢れた水の行方」をEPICレコードジャパンからリリースする。2013年に「閃光ライオット」で準グランプリを受賞し、その後も精力的に活動を続けてきた緑黄色社会。4人が今回発表する「溢れた水の行方」にはメンバー全員が作詞作曲を手がけ、それぞれの個性が際立つ6曲が収録された。音楽ナタリーではメジャーレーベルからの作品リリースという節目にメンバー全員にインタビューを実施。「溢れた水の行方」の収録曲が生まれた背景を探るべく、他己紹介という形でメンバーそれぞれについて語ってもらったほか、4人は音楽活動における制作スタンスも明かしてくれた。

取材・文 / 天野史彬 撮影 / 前田立

根底にあるものはずっと変わらない(穴見)

──2013年に「閃光ライオット」で準グランプリを受賞したときからもう5年の月日が流れましたが、十代の頃と比べて、今の緑黄色社会は変わったと思いますか?

緑黄色社会

長屋晴子(Vo, G) バンドを始めた頃から常に前を向き続けてきたとは思うんです。でも十代の頃は、どうしても技術面や知識面でわからないことも多かったんですよね。好きなことをやればいいだけなんだけど、自分たちはどうしていけばいいんだろう?って、わからなくなってしまうことが多くて。

穴見真吾(B, Cho) そうだね。十代の頃は「僕らはどう見られたらいいんだろう?」とか、けっこう考えることは多かったなと思う。

長屋 うん。自分たちが楽しく音楽を作ってそれをいろんな人に聴いてほしいだけっていうスタンスは昔から変わっていないんですけど、自分たちが見据えるべきものが明確になってきたと思います。それに音楽に対する気持ちは十代の頃よりも強くなったなと思う。だから変わっていないようで、変わっているのかな?

穴見 変わっているような、変わっていないようなっていう感じだよね(笑)。でも本当に根底にあるものはずっと変わらない。僕らは欲張りなバンドだから、音楽的にもいろんなことをやりたいし、その結果としていろんな人に僕らの音楽を聴いてほしいんだっていう思いが強いんだよね。

──そういう目的意識が、より自分たちの中で明確化したということですね。

長屋 そうですね。例えば今、多くの人はサブスクリプションサービスで音楽を聴くじゃないですか。私たちもそうだし。でもそうなると、アーティストやアルバム単位じゃなくて、曲単位で音楽を聴けるから「こういうジャンルが聴きたいときは、この曲を聴けばいい」とか「こういう気持ちのときは、この曲を聴けばいい」っていうお気に入りが、人それぞれの中に生まれてくると思うんです。でも私たちは幅広い音楽やいろんな気持ちを表現することで、その全部をまかなえたらいいなって思う。そういう気持ちは明確になってきたかもしれないです。

──実際、「溢れた水の行方」はそれぞれの曲でサウンドや歌詞もムードが違うバラエティに富んだ作品ですよね。

長屋 ありがとうございます。今回は4人全員がどれかの曲で作詞か作曲をやっていて、みんなの名前がクレジットに入っているんです。私たちが表現したいのは「幅の広さ」だけど、それは私1人でできることではないんですよね。せっかくキャラクターの違う4人が集まっているんだから、4人それぞれの個性を出せればいいなと思って。この4人は本当にそれぞれキャラが違うし、出てくる曲も違うんです。

peppeの作る曲は素直だし、ウソがない(長屋)

peppe(Key, Cho)

──では、4人それぞれの個性をより深く知るために、ここからはメンバー1人を、ほかの3人に解説していただくという形で話を進めていければと思います。まずはpeppeさんを、ほかの3人が解説してください。

長屋 peppeはいつも笑ってます(笑)。本当に天真爛漫と言うか、いろんなことを気にしすぎない性格なんですよね。能天気をめっちゃポジティブに、ハッピーにした感じと言うか(笑)。そういう部分が曲にも出ていると思うんですよね。peppeの作る曲は素直だし、ウソがない。ストレートに曲の感情が伝わってくるなと思うんですよね。

小林壱誓(G, Cho) peppeの作る曲は、イントロで勝っている曲ばかりなんです。

穴見 そう、ストレート直球。ひねくれ要素が一切ない。

──確かに今回だったら1曲目の「あのころ見た光」とか、前作「緑黄色社会」の9曲目「真夜中ドライブ」とか、peppeさんの作る曲は問答無用で聴き手を引き込むようなダイナミズムがありますよね。

長屋 そうなんですよね。私はpeppeとは性格がまったく逆なんです。peppeは私が笑えないようなときも笑ってくれて、それだけで空気が明るくなる。peppeは自分にないものを持っていて、いつも補ってもらっているなと思っていて。

peppe(Key, Cho) それはこちらこそだよ。補い合っているんだよ。

真吾は私たちの可能性を広げてくれる存在(長屋)

──では、次は穴見さんを、ほかの3人が解説してください。

穴見真吾(B, Cho)

peppe 真吾は、一番音楽に対してストイックですね。

長屋 そうだね。「これ」と決めたらそれしか見えなくなるタイプ。だから実際、忘れ物とかもヒドいんですけど(笑)。でもそれくらい、決めたことには真剣に向き合うタイプで、そういうところは音楽にも出ていると思います。本当に音楽が好きで、どんどん知らなかった音楽を聴いている印象です。そして新しい音楽から吸収したものをリョクシャカに還元してくれる。だから、私たちの可能性を広げてくれる存在だなって思います。実際、彼の作る曲が一番幅が広いと思うんですよ。

──今作で言えば「Never Come Back」が穴見さん作曲ですね。確かにこの作品に音楽的な広がりをもたらしています。「緑黄色社会」に収録されていた「君が望む世界」も穴見さん作曲でしたけど、この2曲はリズムを主体としているという点で通じる部分がありながらも、曲自体の質感はまったく違うので面白いと思いました。

長屋 真吾には知識と技量があるんですよね。私やpeppeや壱誓は直感で曲を書くことが多いと思うんですけど、真吾は直感はありつつも「こういうふうにしてみよう」って考えて作ることもできるから。

穴見 やっぱり「いろんな音楽をやりたい」と思っているバンドだからこそ、いろんな音楽を聴きたいって自然に思うし、還元したいっていう気持ちはある。だから「可能性を広げる」って言ってもらえたのは本望だわ。

緑黄色社会「溢れた水の行方」
2018年11月7日発売 / EPICレコードジャパン
緑黄色社会「「溢れた水の行方」

[CD] 2000円
ESCL-5118

Amazon.co.jp

収録曲
  1. あのころ見た光
  2. 視線
  3. Never Come Back
  4. サボテン
  5. Bitter
  6. リトルシンガー
ツアー情報
緑黄色社会ライブツアー「溢れた音の行方」
  • 2018年11月22日(木) 宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2018年11月24日(土) 愛知県 DIAMOND HALL
  • 2018年11月30日(金) 福岡県 DRUM Be-1
  • 2018年12月1日(土) 広島県 CAVE-BE
  • 2018年12月8日(土) 大阪府 BIGCAT
  • 2018年12月15日(土) 北海道 cube garden
  • 2018年12月21日(金) 東京都 マイナビBLITZ赤坂
緑黄色社会(リョクオウショクシャカイ)
緑黄色社会
同級生の長屋晴子(Vo, G)、小林壱誓(G, Cho)、peppe(Key, Cho)、小林の幼なじみの穴見真吾(B, Cho)によって結成された愛知県出身、在住の4人組バンド。2013年に行われた十代向けの音楽コンテスト「閃光ライオット2013」で準グランプリを受賞した。2017年1月にミニアルバム「Nice To Meet You??」、8月に2ndミニアルバム「ADORE」をタワーレコード限定でリリース。2018年3月に1stフルアルバム「緑黄色社会」を発表した。11月に最新ミニアルバム「溢れた水の行方」でEPICレコードよりリリース。11月から7カ所を回る全国ツアーを開催する。