大体、男が悪いんですよ(小林)
──では小林さんのことを、ほかの3人が教えてください。
長屋 壱誓がリョクシャカの中で、一番つかめない存在かもしれないです。何を考えているのか読めないんですよね。私たちが想像できないようなことを、曲ではなくても、発言とかで提示してくれる。だからいつもビックリさせられていて。
peppe 変化球を投げてくる感じだよね。
長屋 うん。でも、変化球だけど、それが「おかしい」とは感じない。むしろ心地よくも感じる。7、8年一緒にいるけど、まだ不思議な人だなって思う。
穴見 小林はもともとダンスをやっていたんです。その影響もあるのかもしれないですけど、彼は「音楽をやりたい」と言うよりは、「何かを表現したい」人なんだと思うんですよね。その手段として、今は音楽があるっていう。ある意味、ミュージシャンっぽくないと言うか。
長屋 うん、それはあるね。
小林 ……僕がもうちょっとギターがうまかったら、そうは言われないかもしれないけど(笑)。でも、もしかしたら表現するものがギターじゃなくてもよかったのかもしれないって、自分でもたまに思いますね。
──小林さんの視点って、すごく鋭いと言うか、人の深層心理を突くような部分があると思うんですよね。「Nice To Meet You??」に収録されていた「丘と小さなパラダイム」の歌詞とか、いつ聴いてもすごいなって思います。
小林 僕が好きなアーティストってMr.ChildrenさんやBUMP OF CHICKENさんのような、お茶の間に広く知れ渡っている人が多いんです。でもそういう人たちが作る“お茶の間向きじゃない曲”が好きで。そういうものに影響されてきているからか、人が目を伏せたくなるようなところに光を当てて曲を作りたいっていう思いが自分の中にずっとあるんです。ただ楽しめる曲じゃなくて、人生に寄り添う曲が書けたらいいなと思います。
──ちなみに今作で小林さんが担当されている「Never Come Back」の歌詞は、どういったモチーフから生まれたものなのでしょうか?
小林 この曲は僕の不器用な恋愛が元になった歌詞です。それを長屋が歌えるように視点を変えて書きました。僕、恋愛に問題が起こるときって、大体は男が悪いと思ってるんです。お互いに悪いと言えば悪いのかもしれないですけど、大体、男が悪いんですよ。何かと我慢できなかったり……とにかく、男が悪いと思う。
穴見 「男が悪い」って、もう3回言ったぞ!(笑)
長屋・peppe ははははは(笑)。
小林 「悪い」と思っていても、やってしまうのが男じゃないですか。男って、都合がいいなって思う。いつだって最初は本気なんですよ。でも、いつの間にかその環境に甘えていて、また同じ罪を犯してしまう……。気が付いたら、同じようなことを違う相手でも繰り返していくっていう、そのローテーションで。そういう最低な男の彼女になってしまった女性の視点で書いた歌詞です、これは。
──なるほど……。
小林 結局、男が悪いんです(笑)。
普段言えないことを歌にすることで、気持ちが楽になる(長屋)
──では最後に、長屋さんをほかの3人が語ってください。
小林 長屋は僕らにも相談しないようなことを歌詞にするんです。なので、曲と長屋の心が1つになっているんだろうなってすごく感じます。長屋の心が吐き出されて、目に見えるようになったものが長屋の歌詞で、僕らはそれを見ることでしか長屋を知ることができない……そんな感覚があります。ミステリアスなんですよね、普段あまり自分からしゃべらないから。でも、歌詞を読むと意外と長屋もみんなと同じことを考えているんだなとか、普通の女の子なんだなって思ったりもして。もうちょっとしゃべってくれてもいいのになって思うけど(笑)。
長屋 苦手なんですよね、自分のことを話すのが。
穴見 長屋はきっと、いろんな物事にちゃんと向き合う人間なんです。だからこそ、簡単に人と関わりたくないんだろうし。でも僕はそこが長屋のいいところだなって思う。
peppe 本当にそうだと思う。1つひとつの物事にすごく親身に向き合うし、「まあいいや」で済ませることがないんですよね。私は逆のタイプだから、余計そう思うのかもしれないけど、すごいなって思うし、尊敬してるよ。
──今3人が言ってくださったこと、ご自身ではどうですか?
長屋 私自身は、そんなに自分に向き合っている気はしていなくて。ただ不器用なだけだと思うんです。いろんなことがヘタだからこそ、考えすぎだなって思うことがいっぱいあるし。今みんなはそれを「いいところ」と言ってくれたけど、私自身は、ちょっとは直さないといけないのかな?と思っていたりもするんですよね。もうちょっと効率よく生きることができたらいいのになって。人に相談したり、友達を作るのもヘタだし。でも、そうじゃないからこそ書ける曲があるのかなと思ったりもするんですけど。
──長屋さんは、自分に音楽という表現手段があってよかったと思いますか? それとも、もし音楽に出会わなければ、もっと別のやり方で世界とつながることができたかもしれない……そんな考え方を持っていたりもしますか?
長屋 うーん……「音楽以外に、私に何ができたかな?」ってよく考えるんです。でも、何も浮かばなくて。だから音楽をやっているっていうわけではないけど、でも「もし音楽がなかったら、どうしていたんだろう?」って考えると、不安になりますね。私の性格だと、どこかに就職して働くっていうのも難しいんじゃないかと思うので。なので、音楽の世界に入ることができてよかったなって思います。
──やはり、音楽は自分自身にとって必要不可欠なものだと。
長屋 はい。ただ、自分にとって歌がどういうものなのか、あんまりはっきりと言えない部分もあるんです。そもそも、私は何かを表現したくて歌っていると言うよりは、歌が好きで歌っていたんですよね。それが自分で曲を作るようになってからは、さっき壱誓が言ったように、普段言えないことを歌にすることで、気持ちが楽になる感覚も生まれてきて。でもそれは何かを「表現している」っていう感覚ではないんです。かと言って「吐き出す」っていう感覚でもないし……本当にわからない。歌に関しては「こうです!」って言い切れない、今でも手探りな状態ですね。
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「愛ってなんだろう」が私の中のテーマ(長屋)
- 緑黄色社会「溢れた水の行方」
- 2018年11月7日発売 / EPICレコードジャパン
-
[CD] 2000円
ESCL-5118
- 収録曲
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- あのころ見た光
- 視線
- Never Come Back
- サボテン
- Bitter
- リトルシンガー
- ツアー情報
緑黄色社会ライブツアー「溢れた音の行方」 -
- 2018年11月22日(木) 宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2018年11月24日(土) 愛知県 DIAMOND HALL
- 2018年11月30日(金) 福岡県 DRUM Be-1
- 2018年12月1日(土) 広島県 CAVE-BE
- 2018年12月8日(土) 大阪府 BIGCAT
- 2018年12月15日(土) 北海道 cube garden
- 2018年12月21日(金) 東京都 マイナビBLITZ赤坂
- 緑黄色社会(リョクオウショクシャカイ)
- 同級生の長屋晴子(Vo, G)、小林壱誓(G, Cho)、peppe(Key, Cho)、小林の幼なじみの穴見真吾(B, Cho)によって結成された愛知県出身、在住の4人組バンド。2013年に行われた十代向けの音楽コンテスト「閃光ライオット2013」で準グランプリを受賞した。2017年1月にミニアルバム「Nice To Meet You??」、8月に2ndミニアルバム「ADORE」をタワーレコード限定でリリース。2018年3月に1stフルアルバム「緑黄色社会」を発表した。11月に最新ミニアルバム「溢れた水の行方」でEPICレコードジャパンよりリリース。11月から7カ所を回る全国ツアーを開催する。