音楽ナタリー PowerPush - SHEENA & THE ROKKETS

ロックンロールを愛し続けた家族の35年間

もっと生きて歌いたいって、手術を決心したんです

──今回のアルバムを聴いて印象的だったんですが、6年前に発売された前作と比べて、シーナさんの歌声がずいぶん艶やかになってますよね。

ありがとう。シーナは88年に「HAPPY HOUSE」をレコーディングして長いツアーをやったあたりから、ゆっくりと喉を壊してたんです。不摂生だったのもあるけど、山口冨士夫とのギターバトルとか、ジョニー吉長、ロミー木下さんの爆音の演奏の中で、シーナは1人だけ生身の声でずっとやってきたからね。で、阿久悠さんとアルバムを作った93年くらいから、喉のダメージが深刻になって。

──声が変わったとは思っていましたが、そんなに大変な状況だったんですか。

うん。手術をしたら治るかもしらんけれど、怖がりやけん嫌がってね。タバコもやめないし。2000年頃に一度ドクターストップがかかったけど、でも歌うのやめんやったね。

──それって「これ以上歌ったらもう声が出なくなるぞ」みたいな話だったんですか?

そう。それでもシーナは、吐く音を吸う音に変えてでも「レモンティー」を歌い続けてた。手術についてはシーナが決めることやけ、アドバイスなどはせん。「JAPANIK」の頃にはもう自分なりの歌い方を確立してたしね。人から「二日酔いみたいだ」「声がジャラジャラだ」とか悪く言われたりもしたけど、シーナの歌い方はいつも新しいし、毎回最高やと思ってた。それよりも手術が失敗して全然違う声になったり、声が出んようになったりするほうが怖かった。でも、そうも言ってられなくなったんです。ロケッツが2008年に細野さんとか幸宏、チバユウスケくん、ウエスト・ロード・ブルース・バンドの永井隆さんとかを呼んで恵比寿ザ・ガーデンホールで30周年のお祝いをしたときに、楽屋に帰ってきたらシーナが息ができなくなって。

──ええっ!

鮎川誠

シーナの場合、普通のポリープじゃなくて、全体がゼリー状になるポリープ様声帯というやつで。それがペタンってくっついたら呼吸ができなくなるんです。そのときはたまたま喉が開いたからよかったけど、今度こうなったら開かんかもしらん。万が一、夜寝ているときにペタンってなったら自分の力では開かんっち言うて。シーナはずっと喉と戦いながら休みなくバンドを続けてきたけど、このままだともう死ぬってわかったら、もっと生きて歌いたいって、目が覚めて自分から手術を決心したんです。

──まさかそんなことになっていたとは。

山王病院の門を叩いたら、声帯ポリープのゴッドハンドと呼ばれる世界的な名医が待っててくれたんです。僕は横にいたんだけど、「どんな声にしたい?」っていう質問にシーナが「強くて硬い声」ってリクエストしててたのを見て、「あー、なるほどね」って(笑)。手術から10日間くらいは声を出しちゃいけなくて、本当に自分の声が出るのか怖かったみたいですね。でも、1カ月くらい後にもう次のステージが決まってて、その頃には声が戻ってた。そんな感じで、今またシーナと一緒に歌えるのは本当にうれしいですね。

ウィルコ・ジョンソンの新作に度胆を抜かれて

──今回ひさびさにアルバムを作ったのは何か理由があるんですか? たぶんシナロケの場合、曲のストックが溜まったからアルバムを出すっていうタイプじゃないような気がするんですが。

そうやね。よく見抜かれとるね(笑)。ビクターもよく6年も待っててくれたと思う。普通ならクビだよね。

──いやいや(笑)。

去年のフジロックでウィルコ・ジョンソンに会ったんですよ。末期がんで余命数カ月って診断されてたから、「死ぬ死ぬってずっと言いっぱなしで、俺みんなからオオカミ少年みたいに思われてるんだよ」って言うてて(笑)。「そんなことはない。ウィルコが生きとって最高やん」って言ったら、「ここがもうカチカチなんだよ」っておなかを触らせてくれたんだけど、ホントにすい臓が盛り上がって石みたいになっとった。痛みはなくて、ただ寝てるとき重たくて邪魔なのだけがつらいって。演奏はできるし、こうやってフジロックでみんなと会えて最高だって言うて。僕の尊敬する人が奇跡のような生きざまを見せてくれて、励ますどころか逆にこっちがすごくパワーもらったんです。

──すごいパワーですよね。最近、その腫瘍の摘出にも成功したって話ですし。

ウィルコは今年になってThe Whoのロジャー・ダルトリーと一緒に「GOING BACK HOME」っちゅうアルバムを作ったのね。僕はこれを急いでAmazonで取り寄せて、ロケッツのみんなで集まってスタジオで大音量でかけたんです。そしたらみんな度胆を抜かれてさ。なんの装飾も、おもねった心もないまっすぐな音。今こんな音楽があるんかっちゅう、力強くてストレートな演奏が、イギリスの最高の技術でありのままに録られてた。それ聴いてみんなで「俺たちもやらにゃいかん!」っちゅう感じになって、今回のアルバムを作ったんですよ。

──なるほど。

ウィルコって日本が大好きなんですよね。がんの宣告を受けたあと「自分の生涯で一番勇気づけてくれたのは、イギリス以外では日本。日本のおかげで僕は今日もやれとる」って言って、日本のファンに会えるのはもう最後かもしらんけっちゅうて、まず最初に飛行機で日本に来てくれたんです。あと、ちょうどシーナが手術で声を出せなかった時期に、「みんなに成長した息子たちを見せたい」って言って、ウィルコが初めて息子を連れて来日して。ウィルコに誘われて屋形船で桜を見に行ったんですけど、あんなの初めての経験やった。まさかイギリス人から教わるとは思わんやったな(笑)。

いつかまた日比谷野音でライブをするのが夢だった

──それでは最後に、9月13日に開催される日比谷野音ワンマンについてもお話を聞ければと。

日比谷の野外音楽堂は、長い間いろんなロックの新しい形を切り拓いてきた、日本のロックの聖地だと思ってる。僕らが初めてここでライブやったのは「ピンナップ・ベイビー・ブルース」というアルバムのお披露目コンサートなんです。それ以来「ロケッツは野音がよく似合う」っちゅう評判をもらえてよくライブをやってたんですけど、阿久悠さんと作った「ROCK ON BABY」のお披露目以来、もう20年以上も野音でワンマンをやってないんですよ。

──それは意外ですね。

バンドは浮き沈みもあるし、長続きすることも消えてなくなることもある。だからこそ、いつかまた自分たちのレコードが出たときに野音のステージに立つっちゅうのは、僕たちにとって1つの夢やった。「ROKKET RIDE」のレコ発ライブを日比谷野音でやれるっちゅうのは、本当にありがたいことなんです。今回のライブは新作の曲を中心に、35年分の曲をたっぷりやります。新しいファンの人たちにも楽しんでほしいし、新宿LOFTでミラクルメンとして初ライブをやったときのお客さんにも喜んでもらえるライブにしたい。

鮎川誠

──すごく楽しみですね。

今度のライブは全部自由席にしようと思ってます。「お茶の間向き」に合わせたようなライブは俺たちの一番苦手とするとこやしね。精一杯、いつも通りのラウドなロックをいつも以上にやれたら、どんなにうれしいやろうと思う。ホントに来てほしいね。野音のステージから、みんなの顔がぎゅうぎゅうに輝いて見えたらどんなに素敵だろうと思うよ。

シーナ&ロケッツ - 『ROKKET RIDE』ティザー映像

ニューアルバム「ROKKET RIDE」 / 2014年7月23日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
ニューアルバム「ROKKET RIDE」
初回限定盤 [CD+DVD] / 3780円 / VIZL-697
通常盤 [CD] / 3024円 / VICL-64191
CD収録曲
  1. ROKKET RIDE
  2. Ride the Lightning
  3. 太陽のバカンス
  4. Baby Love
  5. ROCK FOX
  6. 電撃BOP
  7. Madness City
  8. I'm So Glad
  9. 夢にしか出てこない街
  10. 素敵な仲間
  11. 風を味方に
  12. ロックンロールの夜
初回限定盤DVD収録内容

初となるレコーディング・ドキュメントが収録される他、2014年5月2日鮎川誠生誕66年祭ライブ「GOLDEN66」から厳選された最新のライブ映像も収録予定。

SHEENA & THE ROKKETS「シーナ&ロケッツ 35th ANNIVERSARY“ROKKET RIDE TOUR @野音”」
2014年9月13日(土)
東京都 日比谷野外大音楽堂
SHEENA & THE ROKKETS(シーナアンドザロケッツ)

元サンハウスの鮎川誠(G, Vo)が妻のシーナ(Vo)とともに結成したバンド。1978年10月にシングル「涙のハイウェイ」でデビュー。その後、YMOのメンバーの協力のもと、1979年10月に2ndアルバム「真空パック」をリリースし、その後も「ユー・メイ・ドリーム」「ピンナップ・ベイビー・ブルース」など数々の名曲を発表する。デビューから30年以上が経った現在も、シーナのパワフルでコケティッシュなボーカルと鮎川誠の熱いギターパフォーマンスは、多くのファンの支持を集めている。現在は鮎川、シーナ、奈良敏博(B)、川嶋一秀(Dr)の4人で活動中。2014年7月に6年ぶりのニューアルバム「ROKKET RIDE」をリリースし、同年9月には21年ぶりの日比谷野外大音楽堂ワンマンライブを予定している。