Rockon Social Club成田昭次&岡本健一&寺岡呼人、“欲が出てきた”2ndアルバムを語る

Rockon Social Clubの2ndアルバム「Don't Worry Baby」がリリースされた。

今年8月に解散した男闘呼組の元メンバーである成田昭次(Vo, G)、高橋和也(Vo, B)、岡本健一(Vo, G)、前田耕陽(Vo, Key)と、プロデュースを担う寺岡呼人(G, Producer)と青山英樹(Dr)によって結成されたロックバンド・Rockon Social Club。2022年12月に活動をスタートさせて以降精力的な活動を続けており、今作「Don't Worry Baby」も1stアルバム「1988」からわずか8カ月という早さで届けられた。

本作のリリースを受けて、音楽ナタリーはRockon Social Clubのメンバーから成田、岡本、寺岡の3人にインタビュー。アルバムの制作背景はもちろん、成田と岡本が感じる男闘呼組との違いなど、さまざまな角度からRockon Social Clubの魅力について語ってもらった。

取材・文 / 秦野邦彦撮影 / 吉場正和

欲が出てきた2ndアルバム

──Rockon Social Clubは今年3月の1stアルバム「1988」に続いて、早くも2ndアルバム「Don't Worry Baby」をリリースされますが、男闘呼組のツアーや舞台出演、寺岡さんのソロデビュー30周年などメンバーそれぞれが多忙な中、ものすごい制作ペースですよね。

成田昭次(Vo, G) すごいですよね? 今年3月に1stアルバムを出して、5月にはもう2ndアルバムの制作に取りかかってましたから。

寺岡呼人(G, Producer) 5月6日に有明ガーデンシアターでのライブが終わったあと、「年内に2枚目を」みたいな話がちらっと出まして。これ本気にしていいのかな?と思ってたんですけど(笑)、5月の終わりにはほぼ全曲できてました。

──1stアルバムのサウンドを踏襲しつつもバラエティに富んだ楽曲が並んでいて、さらに音楽性の幅を広げた印象を受けました。

岡本健一(Vo, G) 幅を広げようっていう意識、呼人さんの中にはありました?

寺岡 「広げよう」という意識はなかったです。1stは男闘呼組の進化版というか、ハードロックで“わかりやすさ”“ストレートさ”みたいなところを追求した結果、みんながすごくノってくれて。だけど、もうちょっといろんなことを歌ってほしいとも思っちゃったんですよね。「こんな曲もちょっと聴いてみたいな」という欲が出てきた(笑)。

成田 さっきこの取材の前にラジオの収録をしてきたんですけど、健一が「(高橋)和也の声が入ってすごく変わった」と言ってたよね。

成田昭次

成田昭次

岡本 和也の歌が入ったテイクを聴いた瞬間、革新的なものを感じたんです。いつもデモテープをもらって、昭次の仮歌で曲を聴いたときに「おお、昭次の声いいな。この曲カッコいいな。もうこのまま完成でいいんじゃない?」と思うわけ。だけど、そこに和也の声が加わると印象がガラッと変わる。レコーディングのときはみんな呼人さんにブースに呼ばれて自分のパートを歌うんですけど、呼人さんは録る仕事も早いんですよ。歌入れにしても、楽器にしても。

成田 1枚のアルバムを録るのに、だいたい楽器録り1日、ボーカル録り1日。

岡本 1stと2ndで4日間しかかけてない(笑)。ボーカル録りだけだと10時間もないんじゃない?

寺岡 1stはとにかく時間がなかったから、けっこう録ったまんまの形で出したもんね。

成田 2ndでは、そこを呼人さんがうまく調整して進めてくださって。

岡本 呼人さんは時間の使い方がうまい。俺らはそれに乗っかっていけばいいだけだから、余計なこと考えなくていいんです。

成田 そう、無駄がないよね。今回のアルバムはツアー中に作ったので、ライブの本番前にマスタリングのレベルを調整したり、曲順を入れ替えたりすることもけっこうあったんですけど、そういう細かい作業の積み重ねでこの「Don't Worry Baby」は最高傑作になったと思うんです。あまり自分で自分たちの作品を褒めることもないですけど。

岡本 このアルバムは聴くたびに印象が変わるんですよね。「女性のことを思う」とか「仲間たちのことを思う」とか、自分自身と重なるテーマが見えてくる。

成田 1stもそうだったけど、1曲1曲が物語になっていて、それが最後に全部つながってループするのが呼人さんのイマジネーションなんだよね。

寺岡 さっきから2人とも俺しか褒めてないけど、いいんですか!?(笑)

成田 いや! これ全然大げさに言ってるわけじゃないんです。いつもできたてほやほやの呼人さんのデモを僕が最初に歌う率が高いから、呼人さんがどれだけ真剣にやってこられてるか痛感してます。

「これ、絶対メンバーがいきいきする曲になるな」

──寺岡さんは先ほど2ndアルバムでは「欲が出てきた」とおっしゃっていましたが、具体的にどんな欲が出てきましたか?

寺岡 一緒にライブをやって、レコーディングとは違う、ステージの上でのみんなの空気を感じてからの2ndじゃないですか。となると、1stと同じことはしたくないわけですよ。「1988」の二番煎じになるのは嫌だし、「もっとこういうことを4人に歌わせてやりたい」ってニヤニヤする感じ?

成田岡本 あははは。

寺岡 1stのときはまだメンバーのことをそんなに知らなかったから、「Love Again」みたいに「こんなの歌えるか!」ってメンバーに怒られるかもと思う曲もあったんです。それを今回はもっと怒られそうな曲を作ったという話です(笑)。

寺岡呼人

寺岡呼人

成田 みんな怒るどころか……。

岡本 感動しちゃったもんね?

成田 和也なんか泣いちゃったから。僕も歌録りしてて泣いちゃうことはありますけど。

岡本 ノスタルジックな気分になるときもあれば、これから気合いを入れていかなきゃと思うときもある。五感がよく働くアルバムなんですよね。これは1人の話かなと思ったら男たちみんなの話なのかとか、「あ、これは女性に対してなんだ」とか、感じ方が変わるところも面白いなと思って。

成田 新しいですよね、常に今の世界を描いてるから。80年代とか90年代のサウンドをそのままやっちゃったら、ただ懐かしいだけで終わるじゃないですか? そこに新しさがあることが人を感動させる曲の条件なんじゃないかなと思います。呼人さんは絶対に同じことをしてこないから、そこにびっくりする。

岡本 そうなんだよね。

成田 今の音も知ってるし、昔の音も知ってる。これまで幾多のすごいアーティストの方たちをプロデュースされてきたわけですから。

寺岡 音楽を作るうえでワクワクしたい気持ちはこっちにもあるんです。まだやったことないジャンルやテーマの曲に4人の声が入ったらどうなるんだろうなって。「これ、絶対メンバーがいきいきする曲になるな」という感覚は、やっぱりライブを経験したから得られたものですね。今回の「I♡R&R」はその感覚があったからこそできた曲です。

成田 バンド内にプロデューサーがいるのって面白いですよね。ほかにあまり類を見ないなと思って。

岡本 個性が強いメンバーと合うか合わないかの問題もあるからね。俺なんか特にそうだし。

成田 歳が近いのもよかったと思う。呼人さんが中3のときに、俺が中2で、健一が中1。この図式がちゃんとできてる(笑)。

岡本 実際に俺が中1だったら、2人とこんな会話できないけどね(笑)。背筋を伸ばして「ハイッ!」って感じだと思う。

寺岡 中1の頃の中3って、すごく大人に見えたからね。

岡本 年齢の話で言うと、ドラムが(青山)英樹だってことも大きいですよね。ひと回り以上離れてるのに、全然それを感じさせない。何よりベーシストの和也と合うのが大きい。

成田 英樹くんは、お父様の青山純さんにも男闘呼組のレコーディングで何曲か叩いていただいているし、そのDNAを受け継ぐ彼とこうして今一緒にできてることはすごいと思う。

岡本 純さんとはライブはご一緒していないからね。

岡本健一

岡本健一

寺岡呼人は頼れる兄貴

──今日ぜひ伺いたかったのが、男闘呼組とRockon Social Clubの違いについてなんです。お二人はどんな違いを体感されていますか?

成田 僕はステージの一番右側からメンバーを見てきたんですけど、RSCの場合、和也と健一の間に呼人さんがいることがけっこうデカいと思うんです。呼人さんがいるだけで、こんなに違うんだと思って。

岡本 全然違う。今まで自分は和也のベースにどれだけリズムギターを合わせられるかを考えていたけど、呼人さんはギターでけっこう刻むんです(笑)。

寺岡 あはははは。

岡本 その時点で、もう男闘呼組とは別物ですよね。だって音が違うんだもん。曲の作者だから、ベースとなるリズムをギターで生み出せる。

成田 いわば指揮者ですね。

岡本 たまに「呼人さんがいるから俺、もうギター弾かなくていいや」ってときもあるし(笑)。

成田 僕の場合、男闘呼組のライブの最中に頭の中がぐちゃぐちゃになって、「誰を見たらいいんだろう」という状況に陥ることがけっこうあったんです。ブランクのせいにしたくないから一生懸命やったけど、それがすごく悔しくて。でも、RSCの場合「やべえ!」と思っても、呼人さんを見ると、澄ました顔といつもの安定したギターストロークがあるから、スーッと心が落ち着いていくんです。

寺岡 ははは!

成田 そういう“頼れる兄貴”みたいな印象は、メンバーみんな持ってるんじゃないですかね。

岡本 だから俺たちもすごく自由でいられるんです。最後はちゃんとまとめてくれるだろうっていう安心感があるから。

左から寺岡呼人、成田昭次、岡本健一。

左から寺岡呼人、成田昭次、岡本健一。

──RSCは4人のコーラスワークも魅力の1つです。前作で町支寛二さんがコーラスアレンジで参加された「ただいま」に続いて、今作の「ねぇ、そろそろ」もコーラスが大きな聴きどころですね。

寺岡 「ただいま」のときは、ドゥワップの曲をやるなら浜田省吾さんの長年のパートナーとしてコーラスアレンジをやってらっしゃる町支さんにお願いしたいと思って、すごく細い線をたどって連絡先を教えてもらったんです。

成田 そこで町支さんにお願いするというアイデアがすごいし、町支さんのアレンジを聴くと「本当に今回初めてだったんですか?」というぐらい信頼関係が音に出ていて。町支さんと呼人さんがあたかもずいぶん前から知り合いだったかのように感じたんです。

岡本 呼人さんのメロディは歌うとけっこう難しくて、最初はなかなか音程が取れないんだけど、歌ってるうちに気持ちよくなってくる。

成田 The Beatlesの「Let It Be」もシンプルに聴こえるけど、ピアノやギターで弾くと、いろんな仕掛けがあることに気付くじゃないですか? 感動できる曲ってそういうことなのかなと思いますね。呼人さんの曲って「この2拍のメロディのためにテンションコードが入ってる!」みたいな仕掛けが随所にあるから。

岡本 その仕掛けが気持ちいいんだよね。

成田 うん。小賢しくない。そのコードだから成立してるのがちゃんとわかるから。