Rockon Social Club成田昭次&岡本健一&寺岡呼人、“欲が出てきた”2ndアルバムを語る (2/2)

自分のこだわりを捨てないと幅は広がらない

──「神宮前ボーイズ」は、若き日の皆さんの姿が浮かんでくるような曲です。

岡本 これはラジオで昭次と話したんですけど、名古屋にも神宮前って地名があるらしいんです。

成田 僕が以前住んでいた場所の最寄り駅が「神宮前」で。東京は明治神宮、名古屋は熱田神宮。

岡本 この歌詞みたいなことを呼人さんに話したわけでもないのに、妙にリアリティがあるんですよね。

寺岡 「ジャージー・ボーイズ」というクリント・イーストウッド監督の映画があったじゃないですか?

──「君の瞳に恋してる」などのヒット曲で知られるThe Four Seasonsの物語ですね。

寺岡 「彼らはニュージャージー州出身だけど、男闘呼組の4人だったらどこだろう?」と考えて。渋谷ボーイズだとちょっと違うから「神宮前ボーイズ」にしたんです。で、僕の妄想を歌ってもらって(笑)。こういうファンタジーは聴き手もいろんな妄想ができるから、ファンの人たちにとってもいい気がするんです。

岡本 呼人さん、「曲作りは妄想だ」って言ってましたからね(笑)。

寺岡 「静まりかえって不気味さ」という歌詞があるけど、実際に神宮前が夜になると不気味なぐらい静かなのかどうか、僕はよくわかってないんです。でも健一くんにそう歌ってほしかった。

岡本 タイトルで言うと「足長くないおじさん」が絶品ですよね(笑)。

寺岡 それをこのカッコいいみんなに歌わせる、俺のほくそ笑んでる感じ?(笑)

岡本 まず、「足長くないおじさん」というフレーズはどこから出てきたんですか?

寺岡 要は自分に好意を持つ女の子をタクシーに1人乗せて家に帰すおじさんの話じゃない? 足長おじさんだったらもっとスマートに振る舞うだろうけど、そうじゃないから最初は「足短おじさん(仮)」にしていて、そこから「足長くないおじさん」になりました(笑)。ただ、メンバーからは「これはちょっと歌えないです」と言われると思ってたんです。「もし反対されても『とりあえず歌だけ入れようよ。そしたらみんな気に入るから』と言おう」みたいなことすら考えてました。

岡本 そのへんは役者として仕事してますから。俺は自分で役柄を選ばないんです。とにかく話が来たらやるっていうのを2、30年続けてたら、「えっ? これを俺が?」ってなるオファーも中にはあるわけ。でも演じてみるとけっこう面白いし、お客さんがそれで泣いたり笑ったりしてるのを見ると、「自分のこだわりを捨てないと役の幅は広がらないな」と感じるんです。

左から寺岡呼人、成田昭次、岡本健一。

左から寺岡呼人、成田昭次、岡本健一。

成田 自分の得意なことだけをしていたら幅が広がらないから、いろんなことにトライさせてもらえるのはありがたいよね。

岡本 自分たちが好きな激しくてちょっとダークなサウンドの曲ばかりやってたら、たぶん飽きちゃってたでしょうね。

寺岡 10代、20代の頃の4人は、みんな一生懸命“カッコいいこと”を演じてたと思うんです。それを演じ切って50代になった今、「足長くないおじさん」を演じるギャップのカッコよさ。これは人気出ると思いますよ(笑)。

──女性だけじゃなく、同年代の男性ファンにもグッとくる歌詞ですよね。

岡本 俺も会社の忘年会とか謝恩会に行きたいなと思ったもん。こういうのいいなあって。

成田 僕は名古屋に住んでたときに会社勤めしてたから、忘年会は何度か経験あるんですけど。

寺岡 足長かった?

岡本 長かったのか!?

成田 この歌みたいなことはなかったから!(笑) だけど、その頃を懐かしく思い出させてくれる要素が呼人さんの曲にはあるんですよね。黄昏れたり、人恋しさを感じたり、ちょっとはかない気分になる感じ。

岡本 40代、50代の人はみんな共感できると思う。アルバムを頭から通して聴くと、ちゃんとストーリーになってるし。

寺岡 聴き終わる頃には同窓会名簿を手にしてね(笑)。

左から寺岡呼人、成田昭次、岡本健一。

大事なのは出会いであり、物語

──「Sweet Devil Woman」なんて、皆さんが敬愛する矢沢永吉さんへのオマージュとして歌もサウンドも完璧です。

成田 和也に永ちゃんが憑依しちゃってますもんね。

岡本 この曲をライブでやるときは、呼人さんがベースを弾いて、和也は白いビニールテープ巻いたマイクスタンドを持つところまで決まったよね(笑)。また、うまいんだ。和也のマイクパフォーマンス。

成田 新しいグッズを作んなきゃ。「K.KAZUYA」って書いた大きいタオル。Zを大きくして(笑)。

寺岡 とにかく、この年齢になった4人がクレージーキャッツみたいな歌を歌うカッコよさですよね。それも解散から30年の空白があったからこその表現力だと思うんです。

成田 メンバーみんな事務所も別々になって、僕みたいに名古屋に戻ったメンバーもいたわけじゃないですか。それも全部必然というか、いい結果につながっている。実は3年前、健一とひさしぶりに東京で会って一緒にごはんを食べたときから、呼人さんの話は出てたんです。いつか呼人さんにプロデュースしてもらえたらいいよねって。会ったこともないのに(笑)。

岡本 結局、大事なのは出会いであり、物語ですよね。もちろんサウンドは大切だけど、それをどんな人間たちがプレイしてるのか、どういう思いで作ってるのか、みたいなところまで広がっていくことが大切なのかなと思います。

成田 でもさ、ここまでになるとは思ってなかったでしょ?

岡本 3年前は男闘呼組をもう一度やって、2023年8月に終わることしか考えてなかったからね。

成田 曲で言えば「パズル」が始まりですよね。最初は僕のソロライブにベーシストとして呼人さんに参加していただくところからスタートしたんですけど、そのときから「パズル」という曲はあって。

──2022年7月、TBS系「音楽の日2022」に男闘呼組がサプライズで出演したときにも披露されて、歌詞も含めて大きな反響を集めました。

成田 男闘呼組が終わってからもこうしてバンド活動できているのは、呼人さんとの出会いがあったからですよね。

左から寺岡呼人、成田昭次、岡本健一。

──寺岡さんは曲を作るうえで、男闘呼組時代の楽曲は意識されているんですか?

寺岡 1stのときはちょっと意識してました。去年の10月に男闘呼組のライブを観て、「ハードロックって新しいな。あのムードで1stアルバムを作りたいな」と思って。ただ、RSCは新しいバンドだし、男闘呼組と同じことをずっとやっていきたいわけではない。それより今のみんなの匂いがギュッと詰まった感じでやりたくて。それはすごく成功したと思うんです。そのうえで男闘呼組のセルフカバーもやるし、面白いことはどんどんやったほうが僕らもお客さんも絶対幸せになるなと思って。その最たる曲が「ドント・ウォーリー」です。

──初回限定盤のみに収録されているボーナストラックですね。作詞作曲は高橋和也さんと寺岡呼人さん。ラップ風の楽しいナンバーです。

成田 これは10代の頃に男闘呼組でパラオに行ったときの実体験がもとになっているんです。

岡本 海でボートに乗ってたら、激しいスコールに遭って。「これヤバくない? 遭難しちゃうんじゃない?」みたいな状態のとき、和也が突然サビのフレーズを歌い出したんです。で、再結成ツアーのMCで(前田)耕陽が「そういえば和也、パラオで作ってた曲なかった?」と言ったら、和也がそのとき歌ってたフレーズを歌い出して。「大丈夫だってホントに ドーントウォーリー ドーントウォーリー」って。「それそれ!」みたいな(笑)。

成田 耕陽も和也もよく覚えてたよね。僕は言われて初めて思い出したもん。「あったあった! こんな曲」って。

期待に200%以上で応えてくれる

──心に傷を負った子供たちに「心配しないで、仲間がいるよ」というメッセージを伝えるために、Rockon Social Clubのメンバーによる「DON'T WORRY」プロジェクトも展開されてきました。

岡本 今、日本で自ら命を絶つ人が年間2、3万人いるじゃないですか。世界でも平和で安全な国だと言われているにもかかわらず、子供を含めて自殺者が先進国で1、2位を争うくらい多い。そんなの平和でもなんでもない。それで子供たちのために何かできたらと思ったんです。

成田 前回のアルバムだと、最後の「遥か未来の君へ」が「DON'T WORRY」プロジェクトの楽曲でしたね。

岡本 悪い状況を全部大人が作っちゃってるから。改善しなきゃいけないのは世の中じゃなくて、学校の先生とか会社の上役とか、みんなの上に立つ人の意識。そこが変われば、いい方に向かっていくと思ってます。

──“50代の新人バンド”が存在することに勇気をもらえる人もたくさんいると思います。12月12日からは東京、福岡、宮城、大阪を回るツアーもスタートします。

岡本 メンバーのスケジュールの都合で年内は6公演しかできないけど、やっぱり「Don't Worry Baby」のツアーは全国回らないとダメなんじゃないかなって。来年回れたらいいですよね。

──今年の夏には「RISING SUN ROCK FESTIVAL」に出演されましたが、どんどんフェスにも出ていただきたいですね。

岡本 フェスは出たいですね。北海道めちゃめちゃ楽しかった!

成田 僕らの出番は昼間だったんですけど、控え室のすぐ裏にバーベキュー場があって。みんなでジンギスカンを食べて、夕方の5時ぐらいから生ビールを飲んで、また夜の10時半ぐらいにMISIAとのコラボに出て。夏のフェスはやっぱり気持ちいいよね。

──今日の取材は、名作の誉れ高い映画「ロックよ、静かに流れよ」(1988年公開)のミネさ(成田)と俊介(岡本)の会話を彷彿させるやりとりの数々にグッときました。最後に寺岡さん、ひと言お願いします。

寺岡 何か見出しになるようなことを言おう言おうと思ってたんですけど……。

岡本 そんなこと考えてたの?(笑)

寺岡 うん、忘れないように(笑)。最初に健一くんが相性の話をしてたじゃないですか。僕、ずっとこういう仕事をやってきたけど、ここまでガチッと“演じてくれる人”には出会ってなかったなと思ったんです。これらの楽曲とアレンジが生まれたのも、本当に相性なんですよね。今日は褒めてもらってばっかりだったけど、僕がすごいんじゃなく、期待に200%以上で応えてくれたメンバーがいたからこそRSCが成立しているんだな、ってことは言わなきゃと思ってたんです。

岡本 長い!(笑) 見出しにならないですよ。

寺岡 わはははは! どんないい曲を作って、いいアレンジにしても、このパフォーマーがいなかったら成立しないですからね。本当に奇跡のユニットだと思います。

左から成田昭次、寺岡呼人、岡本健一。

左から成田昭次、寺岡呼人、岡本健一。

プロフィール

Rockon Social Club(ロックオンソーシャルクラブ)

1年間限りの復活を果たした男闘呼組の元メンバーである成田昭次(Vo, G)、高橋和也(Vo, B)、岡本健一(Vo, G)、前田耕陽(Vo, Key)と、プロデュースを担う寺岡呼人(G, Producer)と青山英樹(Dr)によって結成されたロックバンド。2023年3月に発表した1stアルバム「1988」は同世代を中心に若い世代からも大きな話題を呼んだ。9月にMISIA & Rockon Social Club名義でのシングル「傷だらけの王者」、初のワンマンライブの模様を収めたライブBlu-ray / DVD 「ROCKON SOCIAL CLUB 1988」をリリース。11月に2ndアルバム「Don't Worry Baby」を発表し、12月には同名ツアーを開催予定。