ナタリー PowerPush - Rie fu

本人による全曲解説で明かされるセルフプロデュース作品の制作秘話

初のセルフプロデュース作品となるアルバム「at Rie sessions」をリリースしたRie fu。本作は、彼女が敬愛する欧米のインディーロックの音使いを思い起こさせる、温かみのある1枚に仕上がった。しかも、すべて自宅レコーディングだというのだから興味深い。さらに、楽曲ごとにリリー・フランキー、Curly Giraffe、LEO今井、NAOTO(ORANGE RANGE)、依布サラサなど、親交の深い豪華なゲストアーティストを計23組も迎え、物語に彩りを添えている。自分のスタイルを追求し、自由に音楽を表現するRie fuに、アルバムについて語ってもらった。

取材・文/ふくりゅう

Twitterでつぶやく このエントリーを含むはてなブックマーク この記事をクリップ!

“J-POPシーン”を完全に無視して好きなことをやった

──新作アルバム、めちゃくちゃツボです。痛快なくらい、J-POPフォーマットとは違うサウンド感に仕上がりましたね。かつ、いろんな方とコラボレーションしているので楽曲の色もさまざまで、すごく個性の強いアルバムだと思いました。

そうですね。“J-POPシーン”みたいなのを完全に無視して好きなことをやったので、これをメジャーレーベルで出せるってこと自体恵まれた環境にいるなと感じます。もちろん、その分リスナーの方々はどんな反応するだろうなっていう不安もあります。J-POPにはない特徴を捉えて、楽しんでいただけるとうれしいですね。

──チャート狙いで、同じようなサウンドや言葉があふれてる昨今、Rie fuさんのようなアプローチは逆に目立つなと思いました。

それは作った後に私もそう思いました。今回、完全に自宅で録音したんです。ゲストで迎えたアーティストも、まるでお友達を呼んでお茶をするような感じでレコーディングに参加してもらって。今回初めて自分でアレンジも含めて全部プロデュースしたんです。最近の音楽制作は分業制が多いと思うんですけど、昔はこれが一般的で、負担もかからないし手間もかからない普通のことだったんじゃないかなって思ったんです。

──本作は、まず最初にセルフプロデュースでアルバムを作ろうってアイデアから始まったんですか?

私、今までアルバムを4枚出してるんですね。それは全部、自分が信頼できるプロデューサーの方に作っていただいて、すごく自信作ができて満足してました。でも、必ずしもデモで作った空気感がそのまま最終的な完成されたものに入るとは限らないんですよね。ちょっと隙間が埋められてしまうというか。まぁ、それが完成度を高めるってことなんですけど。そんなことから「試しに自分でセルフプロデュースしてみたいな」って思い立って、4枚目のアルバム制作中からエンジニアの方に機材を教えてもらったり、ソフトを揃えたりと、準備をしてきました。

──かなり計画的だったんですね。

大学で絵を勉強して、今でも普段から自宅で油絵を描いていることもあって、1枚のアルバムに自分の作るものに囲まれている“空気感”を入れたいなと思ったんです。それはRie fuにしか出せない空気感なんじゃないかなって。でも、自分の家でセルフプロデュースとなると本当にひきこもりみたいになりそうだったんで(笑)、いろいろなゲストアーティストを呼んで、曲ごとにセッションするスタイルを取り入れました。内側に向いていながらも、外に向けても発信するような……って企画なんですよ。

セルフプロデュースすることで、作りながら勉強になった

──それで、これだけ数多くのコラボレーションが生まれたんですね。そして完成したアルバムですが、すごくボーダレスで、ファンタジックな世界観。まるで遠くの世界へ連れていってくれるような、かつコラボで参加しているアーティストの方々が物語の登場人物みたいな。世界観の広がりを絶妙に表現されてますよね。

そう言っていただけると、すごくうれしいです。今回参加してくださったアーティストの方々の声は、どなたもすごく個性があるので、その個性に合う曲を1曲1曲選んで頼んでっていう作業をしたんで……その人の声を分析して、まさに監督していくのが楽しかったですね。

──確かに映画監督のような行為かもしれませんね。

作りながら勉強になりました。成長していけたっていうか。

──逆に大変だったことってありました?

一番大変だったことは、アーティストのスケジュールを確保すること(笑)。皆さんそれぞれの活動で忙しい方ばかりなので「ちょっとそこをなんとか! 2~3時間だけでも!!!」ってお願いして(笑)。

──ほんと、全部やってるんですね(笑)。あとタイトルの「at Rie sessions」は、うまいことつけたなと思いました。

そうですね(笑)。これは遊びに来てくれた我那覇美奈ちゃんがつけてくれたんです(笑)。

──タイトル自体がアルバムのコンセプトになってますもんね。元々はどんなイメージの作品に仕上げようと思われてたんですか?

音楽だけじゃなくて、絵を描いたり写真を撮ったりするのも好きなので、ミュージシャンとしてのRie fuのアルバムというよりは、アーティストとしてのRie fuのカラーが見えたら良いなって思ってました。そこに、ゲスト一人ひとりのカラーを重ねていくような形ですね。あと曲の雰囲気やアレンジでは隙間を生かしているので、そこにリスナーの方がすんなりと入っていけて、音楽に包まれるような感覚になってもらえたらうれしいですね。

ニューアルバム「at Rie sessions」 / 2010年3月31日発売 / gr8! records

  • 初回限定盤[CD+DVD] 3150円(税込) / SRCL-7245~7246 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] 2800円(税込) / SRCL-7247 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. Stay with me ~恋愛なんてヒマつぶし~
  2. Just Like You
  3. いろどって
  4. Don't Worry
  5. STAR
  6. Sunshine Forehead
  7. My Start
  8. Gilles
  9. Laundry
  10. Bright Life
  11. ひとつひとつ
初回盤DVD収録内容
  • ミュージックビデオ+レコーディングドキュメンタリー
Rie fu(りえふー)

1985年生まれ、東京都出身の女性シンガーソングライター。7歳から10歳までの多感な時期をアメリカで過ごし、賛美歌やCARPENTERSなどのアメリカンポップスを親しむ。帰国後よりデモテープを制作し始め、ロンドンの芸術大学に留学中だった2004年3月にシングル「Rie who!?」でデビュー。以降日本とイギリスを行き来しながら、学業の傍ら楽曲制作に励む。往年のアメリカンポップスに影響を受けた瑞々しいメロディ、聴き手を包み込む優しい歌声、英語と日本語を織り交ぜた歌詞が特徴。大学卒業後の2007年7月から日本を拠点にアーティスト活動を本格化。2008年3月にはアルバム「Who is Rie fu?」をイギリスで発表している。