ナタリー PowerPush - Rie fu
本人による全曲解説で明かされるセルフプロデュース作品の制作秘話
BOSEと電話で5分話しただけで書き上がったリリック
──1曲目「Stay with me ~恋愛なんてヒマつぶし~」は、ゲスト参加のリリー・フランキーさんが、まるで日本のセルジュ・ゲンズブールみたいな感じでカッコいいですね。
そうですね(笑)。あとで詞を読んだらフランスっぽいなと思いました。この曲は前からあって、リリーさんとコラボできると決まったときに全部歌詞を書き変えたんです。極力、自分の中のひねくれ度が強い部分を出しました。
──スチャダラパーのBOSEさんのラップも、ものすごく必然性を感じられる登場で。
BOSEさんとも、電話で「こういう歌で、アンチ・ラブソングなんです!」と5分くらい話しただけでこんな素晴らしいリリックができあがって。今の世の中、ラブソングであふれていると思うんです。でも、恋愛って言葉が表してるものが実は独占欲だったり、自己満足だったり、暇つぶしだったり。もしかしたら恋愛という言葉に置き換えられているだけで、本当は違うんじゃないかって思って。恋愛という綺麗な言葉で覆うんじゃなくて真実を見たい、それに気付いてほしいという気持ち。そういう真髄を見たいという感性の欲求を、リリーさんやBOSEさんとコラボしたことで表現することができました。
──なるほど。そして2曲目がLEO今井さんとのコラボ。そういえばRie fuさんは、LEO今井さんの作品に参加されたことがありますよね。
はい。LEO今井さんの「Synchronize」って曲に。この「Just Like You」も同じようなテーマの曲ですね。英語で「僕は君と全く同じ、全く同じ、だけど君みたいな人には会ったことはない!」っていう意味の歌詞を歌ってるんですけど、矛盾しているようでそれが事実みたいな、人と人のつながりをテーマにしてて。これにはLEO今井さんがぴったりでしたね。
──Rie fuさんと同じく、イギリスの大学に通われていたLEO今井さんとは、イギリス話で盛り上がったりするんでしょうか?
LEO今井さんって不思議で、絶対に噛み合わない感じなんです(笑)。それがすごく面白くって。あまりにも性格も音楽性も、ノリも違いすぎて、でも並行していられるっていうのがすごく面白いですね。
──なんだかわかるような気がします。で、3曲目が、昨年いっしょにツアーされたという井上陽水さんのコーラス仲間である我那覇美奈さん、Mayumixさんとコラボした作品「いろどって」。
この曲はレコーディング初期に作ったんです。後半のほうでは、ギターを叩いた音をMPC(サンプラー)でサンプリングしてパーカッションみたいに使ったりしたんですけど、これは完全に「Logic」(DTMソフト)の内蔵リズムの音だけで作りました。化粧品のCMをイメージしたんですよ。
──面白い仕上がりですね。そして4曲目は「Don't Worry」。これも音使いが好きです。この曲には、KATさんやYUKAさん(moumoon)が参加されてます。
2人とは以前、同じイベントに出たことがあったんですよ。で、曲はKATちゃんと一緒に作って。
──いっしょに作ってみていかがでしたか?
KATちゃんはすごく敬虔なクリスチャンで、私も小さい頃からキリスト教の学校に通って、讃美歌に影響受けてたりしたので、この曲で歌っている「Don't Worry = 心配しないで、元気を出して!」という言葉は友達同士で交わす言葉でもあるし、大きな支えがあるという神様からのメッセージでもあるって気持ちも共感できて。そういう、割と大きいテーマの曲に仕上がりました。
「前髪を上げて太陽に当てたら良いですよ!」って
──5曲目の「STAR」では、依布サラサさんとその娘さんであるyuyuさんとコラボしてます。
サラサちゃんが録音に来るときに「じゃあyuyuちゃんも連れてきて!」ってお願いしたんです。以前一緒にカラオケに行ったとき、yuyuちゃんがすごく歌がうまくって。なんと言うか、才能がある感じなんですよー。5歳なのに「私が歌ってるときはタンバリンとか鳴らさないで!」とか言う子で(笑)。
──そうなんですね。そしてここにKenji Suzukiさんのギターも入るという。
Kenjiさんには、ロンドンにいたときにお世話になっていたんです。彼は今もロンドンで活動しているんですけど、この間日本に一時帰国されたときに連絡したらすぐ来てくれて。アレンジ面でも「もうちょっと後半にキーボード足したほうが……」なんてアドバイスをいただくなど、サポートしてもらいました。
──そして、6曲目がCurly Giraffe参加の「Sunshine Forehead」。“太陽おでこ”って意味のタイトル、面白いですね。
ある占い師の人に「前髪を上げて太陽に当てたら良いですよ!」って言われて。そんなこと普段言われないですよね(笑)。発想が面白いなと思って、曲にしちゃいました。で、そのときにCurly Giraffeさんのアルバムを聴いていて、メロディにインスパイアされたんですよ。あと、ちょうど大みそかから元旦にかけて作ったので、新しい1年の始まりというか、太陽が昇るようなテーマになってますね。
──素敵なコラボですよね。そして7曲目が「My Start」。懐かしい感じのする曲ですが、Kenichi Takemotoさん、Peter Kvintさんはどんな方なんですか? すごくトリップ感のあるサウンドですが。
この方たちはソニーの出版部門に属されている作家さんです。以前、作家さんが2~30人集まって、その中で2~3人のチームを組んで曲を制作するセッション企画があって、そこで出会ったんです。60年代の雰囲気が漂う楽曲になりましたね。
──さらに、8曲目にはNAOTO(ORANGE RANGE)さんが参加されてます。でも、NAOTOさんの普段のイメージとは違う雰囲気の曲で。これはどんな形でご一緒することになったんですか?
曲自体は以前からあったんですよ。2009年に、NAOTOさんのプロジェクトであるdelofamiliaに参加したんですけど、そのときにこの曲をNAOTOさんに聴いてもらったら「いいね」って言ってくれたんです。じゃあせっかくだから録音しようって話になりました。KOHEI(HOI FESTA)さんが参加してくれたのも、delofamiliaでギターを弾いてたというつながりです。
CD収録曲
- Stay with me ~恋愛なんてヒマつぶし~
- Just Like You
- いろどって
- Don't Worry
- STAR
- Sunshine Forehead
- My Start
- Gilles
- Laundry
- Bright Life
- ひとつひとつ
初回盤DVD収録内容
- ミュージックビデオ+レコーディングドキュメンタリー
Rie fu(りえふー)
1985年生まれ、東京都出身の女性シンガーソングライター。7歳から10歳までの多感な時期をアメリカで過ごし、賛美歌やCARPENTERSなどのアメリカンポップスを親しむ。帰国後よりデモテープを制作し始め、ロンドンの芸術大学に留学中だった2004年3月にシングル「Rie who!?」でデビュー。以降日本とイギリスを行き来しながら、学業の傍ら楽曲制作に励む。往年のアメリカンポップスに影響を受けた瑞々しいメロディ、聴き手を包み込む優しい歌声、英語と日本語を織り交ぜた歌詞が特徴。大学卒業後の2007年7月から日本を拠点にアーティスト活動を本格化。2008年3月にはアルバム「Who is Rie fu?」をイギリスで発表している。