ナタリー PowerPush - Rhythmic Toy World
唯一無二の“キャッチー”を目指す
Rhythmic Toy Worldが2ndミニアルバム「オリンポスノフモトニテ」を11月13日にリリースする。リスナーを引き込む強力なボーカル、パワフルかつキャッチーなバンドサウンドでロックシーンの頂点を目指して加速中の彼らだが、その勢いは本作からも十二分に感じることができる。
ナタリー初登場となる今回のインタビューでは、バンドの結成の経緯や彼らが重きを置いていること、目指すバンド像など、幅広く話を聞いた。
取材・文 / 伊藤実菜子 インタビュー撮影 / 佐藤類
声にインパクトのあるボーカルが第一条件
──Rhythmic Toy Worldはどうやって結成されたバンドなんですか?
内田直孝(Vo, G) ベースの須藤と僕が大学の同級生で、彼に誘われたのが最初ですね。
須藤憲太郎(B) 大学でたまたま当時内田がやってたバンドの音源を聴かせてもらったんですよ。そしたら彼のボーカルがめちゃくちゃよくて。今まで聴いたことないぐらいの美声で、心にグッと来る感じだったんで、もうこいつしかいねえなと思って散々アプローチをして。
内田 まあ散々断ってたんですけど(笑)。須藤は顔が広く付き合いが浅い奴で有名で、僕はその軽い感じがすごく嫌だったんですよね。そんな中カラオケに行く機会があったんですよ、彼と女の子2人とで。そのときにお酒を飲んだ彼が女の子に対してすごくテンション上がってて、なんかちょっと男としてだらしないなと思ってたら、そのあとに「やっぱりお前と一緒にバンドやりてえわ」みたいに言われて。そんなの全然信用できないじゃないですか(笑)。
──まあそうですよね(笑)。適当に声かけてるんじゃないかって疑ってしまいそう。
内田 そうそう。例えば自分がやってるライブを観に来て、終わったあとに「やっぱり俺、お前とやりてえよ」って言われたら俺も考えようかなってなりますけど……。「人生を懸けたバンドをやりたい」ってすごくずっしりとしたフレーズで誘ってきたわりには、なかなかそこに信憑性が伴ってこなかったんで。でも「こいつの曲でいきたい」って聴かされたのが岸くんの曲で、そこで「あっ、この子がいるんだったら俺やります」って決めました。
須藤 岸くんと僕は幼稚園からの幼なじみなんですよ。本気のバンドを組もうって決めたときに、ギターは彼しかいないなと思ってて。
──内田さんは岸さんの作る曲に惚れ込んで加入を決めたと。
内田 そうです、そうです。
岸明平(G) 自分も直孝の声に惚れ込んで。須藤はほんとにいいボーカル連れて来たなと。
──須藤さんはなんで内田さんをそこまで強く誘ってたんですか?
須藤 バンドを組むにあたって、先頭に立って出るボーカルは声にインパクトがあって、後ろにいる僕らも自信を持ってそいつを支えてあげられるっていうような人物が第一条件で。内田はそれにばっちり当てはまったんで、彼しかいないなと思ったんです。
──そこまで声にこだわった理由は?
須藤 やっぱりいろんな人に聴いてもらうために一番大事なのってボーカルの声だと思ってて。そこは妥協したくなかったというか。
──磯村さんはどういう経緯で?
磯村貴宏(Dr) 僕は内田のバイト先の先輩だったんですけど、別でやってたバンドが解散したときにタイミングよく「ドラムやってくれ」って誘われて。Rhythmic Toy Worldのことはめっちゃカッコいいバンドだと思ってたんで、すぐに「やりたい」って言って加入した感じですね。本格的に活動しはじめたのは僕が入ってからだったんですけど。
内田 磯村はバンドマンだったから、ライブハウスとかバンド同士のつながりを持ってたんですよね。そのつながりを使っていろんな人とライブできるようになって、やっとバンド活動っぽくなっていったっていう。
BUMPから変拍子、そしてキャッチーへ
──そうやってバンドらしさができあがっていく中で、これからどんなバンドにしていこうかっていうビジョンは見えてたんですか?
磯村 もともと内田がBUMP OF CHICKENをすごい好きで。大阪城ホールでBUMP OF CHICKENを観て、ここでライブするようなバンドになりたいって思った話は聞いてました。
──BUMP OF CHICKENのような音楽をやりたいということではなく?
内田 そうですね。大阪城ホールでライブを観たとき、あれだけたくさんの人を熱狂させられるバンドになりたいなって思ったんです。それにBUMPと同じステージに立つためには、BUMPのような曲をやってちゃダメだなって思ったんで。まあ、バンド名のRhythmic Toy Worldが3単語なのはBUMP OF CHICKENが3単語だったからっていうのはありますけど。
──楽曲の面でも、好きなバンドの影響はどうしても受けてしまいそうなものですが。
内田 そこは意識してましたね、自分の礎となってる好きなバンドや好きな曲からいかにうまく離れていくかっていうのは。「何々っぽい」って言われることを避けたくて。
──確かにRhythmic Toy Worldの曲にBUMP OF CHICKENっぽさはあまり感じられないですね。
内田 なんか「何々っぽい」っていう評価は何かを見定める行為を放棄してるようで、すごくナンセンスだなと思ってて。聴いた人にいろんなことを感じてもらって、その人なりの評価をしてもらいたいって思うんですよね。
──そのために心がけていることはありますか?
内田 例えば曲を作ってるときに、自分たちでもう「○○っぽいよね」って思っちゃったらボツにする、みたいな。
岸 あー、それはけっこうあるよね。でも外しすぎるとあんまりウケない。
内田 そう、外しすぎるとその楽曲の伝えたい雰囲気が伝わんない……元も子もなくなっちゃう。だからそのギリギリのラインを狙ってたよね。
須藤 岸くんのプログレ的な楽曲と、内田の声の融合体を目指してた。
磯村 最初は変拍子が多かったり展開が多かったり、今よりちょっとわかりにくい曲ばっかりをやってて。「変わった音楽をやろう」みたいな感じだったけど、最近はキャッチーになってきてますね。
──キャッチーなサウンドにシフトしたのには何か理由があるんですか?
磯村 初めてのツアーでキャッチー寄りの曲をやったら、明らかに反響がよかったんですよ。もう目に見えて反応が違って、お客さんが求めてたのはこれなんだなって。
内田 その曲は「キャッチーな曲を作りなよ」って人に言われて作ったものなんですけど、そのときはすごく悩みました。でもキャッチーはキャッチーでも、ほかのキャッチーな曲よりもセンスがあったり、秀でていればいいんじゃないかっていう発想の転換をして。そこからはメロディのオリジナリティを最優先にするようになりましたね。
岸 前はオケが先にあってあとでメロディを付けるっていう作り方をしてたけど、今は逆で。直孝がメロディを持ってきてそれにオケを付けてます。
──それは大きな変化ですね。本来やりたかった音楽をやるということよりも、リスナーの反応を重視するようになったわけですね。
内田 やっぱりバンドはお客さん0人から始めるわけじゃないですか。そこから1人2人って増えてくことの喜びって、絶対いつまでも忘れちゃいけないと思うんですよね。自分たちのCDを買ってくれる、ライブに来てくれる、「毎日聴いてます」って言ってくれる。そういう人たちに可能な限り思いを馳せてたいっていうのがあって。聴いてくれる人が面白いと思ってくれるだろうなとか、ちょっと胸キュンしてくれるだろうなとか、元気出してくれるだろうなっていうのは、常に考えながら曲作ってます。でもそれが自分たちのやりたいことと合致してないわけではないんですよ。一番大事なのはこの4人であることで、おもちゃで遊ぶ子供みたいな感覚で音楽を遊び道具にしていきたいなっていう。それがRhythmic Toy Worldの“Toy”に込めた思いでもあるんですよね。
収録曲
- フレフレ
- とおりゃんせ
- 終末のカンヴァセーション
- S.F
- 8535
- 描いた日々に
- 未来への疾走
Rhythmic Toy World
(りずみっくといわーるど)
内田直孝(Vo, G)、須藤憲太郎(B)、岸明平(G)、磯村貴宏(Dr)からなる4人組ロックバンド。2009年に結成し、2010年に現在のメンバーとなる。2012年にアマチュアバンドコンテスト「RO69JACK」で入賞し、2013年にはグッドモーニングアメリカが企画するコンピレーションアルバム第3弾「あっ、良い音楽ここにあります。その参」に参加。同年4月に発表した1stミニアルバム「軌道上に不備は無し」はオリコンインディーズランキングで9位を記録した。11月13日に2ndミニアルバム「オリンポスノフモトニテ」をリリースする。