ナタリー PowerPush - スペースシャワー列伝

きのこ帝国・佐藤×ハルカトミユキ・ハルカ 女性フロントマン対談

お客さんと1対1になれたらいいな

──リスナー視点の話をすると、お互い受け手の心理を揺さぶり、ねじるような情念的ともいえる曲を歌っていると思うんだけど、ライブでそれを一方的にぶつけている感じはしないんですよね。リスナーを能動的にさせていく趣が強くて。

ハルカ(Vo, G / ハルカトミユキ)

ハルカ 私はとにかく説教っぽくなりたくないので。

──ですよね。

ハルカ うん。それこそ今言ってもらった通り、能動的に受け取ってもらえたらうれしいんです。強いメッセージがあって、「これを伝えたいんだ!」ってすごい目をして訴えるようなライブをする人もいるじゃないですか。私はそれができなくて。周りの人に「やれ」って言われて、試してみたこともあったけど、すごく違和感を覚えて。立ち返って考えたときに自分の歌には伝えたいメッセージなんてないんだと思ったんですよ。私が歌いたい歌を歌って、ライブでもお客さんにそれを呼吸するように受け取ってもらうしかないなって。だから目の前にいる人に歌っている感覚は全然ないし、むしろ自分に向かって歌っている感じですね。

──ハルカトミユキのライブも、きのこ帝国のライブも、お客さんが孤独——と言ったら語弊があるかもしれないけど、どこまでも個人としてその空間にいる感じがするんですよね。

佐藤 それ、すごくわかりますね。ウチらのライブも棒立ちで観ている人が多いから。

ハルカ 私たちのライブもお客さんが拳を上げたりとかほとんどないですね。

──むしろすごく刺さってるから棒立ちになってると思うんですよ。

佐藤(Vo, G / きのこ帝国)

佐藤 だといいですね。ライブに来てくれるお客さんと1対1になれたらいいなと思っていて。「この感覚知ってるなあ」みたいな感じで聴いてもらえたらうれしい。自分もリスナーとして「これは自分のことを歌ってる」って感じることってよくあるので。そういうのって名曲だから起こることだと思うし。自分もそういう感覚を聴く人にもってもらえる曲を作れたらなと思ってます。だから、ライブでも聴きながら泣いたり笑ったりしてる人がいると、その人と出会えた感じがしてすごくうれしいんですよね。

──「深更(しんこう)の宴」は、もう1組のゲストであるゲスの極み乙女。も含めて、かなり濃厚な空間になりそうですけど、どんなイベントにしたいですか?

佐藤 ゲスが引っ掻き回して終わるんじゃないですかね(笑)。彼らがかなり盛り上げてくれる予感がしますね。すごく面白いバンドですよね。メンバーとはけっこう仲がいいんですけど、ベースとかめちゃめちゃかっこいいです。才能しかないようなプレイヤーで。こちらはいつも通りライブをやれたらなと。あと個人的には、ハルカトミユキもアコースティックしか観たことがなくて、バンド編成のライブを観るのは初めてなので楽しみです。

ハルカ 私もどちらかというとクガツハズカムのほうが多く観ているので、最新のきのこ帝国のライブを観るのが楽しみです。ゲスも含めて、どんな化学反応が起きるのか当日になってみないとわからない感じがいいと思います。

スペースシャワー列伝

深い夜にいざなう様に自分自身の闇の現に向かい合う一夜に。

スペースシャワー列伝
~第九十三巻 深更(しんこう)の宴~
2013年5月28日(火)
東京都 Shibuya O-nest
OPEN 18:00 / START 19:00
<出演者>
きのこ帝国 / ハルカトミユキ / ゲスの極み乙女。
チケット一般発売中!
きのこ帝国(きのこていこく)
きのこ帝国

佐藤(Vo, G)、あーちゃん(G)、谷口滋昭(B)、西村“コン”(Dr)の4人によって2007年に結成されたロックバンド。翌年から下北沢、渋谷を中心にライブ活動を開始し、2枚の自主制作アルバムをリリース。2012年5月に初の全国流通CD「渦になる」をリリースし話題を集める。2013年2月に1stフルアルバム「eureka」発表した。なお佐藤はクガツハズカム名義で、弾き語りによるライブも行っている。

ハルカトミユキ
ハルカトミユキ

立教大学の音楽サークルで知り合った1989年生まれのハルカ(Vo, G)とミユキ(Key, Cho)によるフォークロックユニット。ライブを中心とした活動を展開し、2012年11月に初の全国流通音源となるミニアルバム「虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。」をリリース。静謐さと激しさをあわせ持つサウンド、刺激的な歌詞で大きな注目を集め、iTunes Storeが選ぶ2013年期待の新人アーティスト「ニューアーティスト2013」にも選ばれる。2013年3月、2ndミニアルバム「真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。」をリリースした。