伶が4月13日に1stアルバム「Just Wanna Sing」をリリースする。
E-girls、Flowerのボーカル・鷲尾伶菜としての活動を経て、2020年10月からソロプロジェクトをスタートさせた伶。約1年半にわたるソロ活動の集大成としてリリースされる本作には、映画「小説の神様 君としか描けない物語」の主題歌となったデビュー曲「Call Me Sick」や「宝石 feat. 幾田りら」「エンカウント feat. 笹川真生」といった既発曲に、自身が作詞を手がけた「恋と、終わりと、Kiss feat. 清塚信也」や初音源化となる数原龍友(GENERATIONS from EXILE TRIBE)とのデュエットカバー「So Special-Version EX-」などを加えた全12曲が収録されている。
また初回生産限定盤には、伶がYouTubeで公開してきたカバー楽曲を中心にまとめたCDや、昨年Billboard Liveで開催された「rei "the first" Billboard Live 2021」のライブ映像とミュージックビデオを収めたDVDも付属。ソロアーティストとしてのここまでの歩みを濃密にパッケージした作品となっている。音楽ナタリー初登場となる今回のインタビューでは、ソロデビューからの時間を振り返ってもらいつつ、本作の制作についてのエピソードをじっくりと聞いた。
取材・文 / もりひでゆき撮影 / Masayo
難しさもあるけど楽しさのほうが大きい
──2020年の10月にソロプロジェクトをスタートさせてから約1年半が経ちましたね。
はい。ソロとして動き始めてからすぐにコロナ禍になってしまったので、なかなか思うように活動できないもどかしさがありました。とは言え、その中でも自分なりにいろんなことを考えながらリリースもコンスタントに続けることができたので、とても充実した1年半だったと思います。ソロアーティスト・伶としての活動にしっかり専念することができました。
──これまでグループで活動してきた伶さんですが、1人での活動に寂しさは感じましたか?
寂しさはもちろんありましたけど、それ以上に全責任が自分にかかってくることに対しての不安が大きかったです。例えばライブをするにしても、グループのときはメンバーみんなのさまざまな意見を詰め込みながら構成を作っていったんですが、今は私が中心となって全部考えていかなきゃいけないわけで。そこがグループ時代とは一番大きく違うポイントだと思います。楽曲も含め、自分の好きなように表現できる反面、責任は間違いなく大きくなっていますからね。でもそれをネガティブにとらえるのではなく、新たな挑戦として楽しめています。
──昨年7月と10月には大阪、横浜、東京のBillboard Liveで「rei "the first" Billboard Live 2021」を開催しました。
1人でライブをする感覚がまだつかめていなかったんですけど、Billboard Liveのステージは憧れだったので、そこで歌えてうれしかったですし、ライブ自体も楽しかったです。その時点ではオリジナル曲の数があまりなかったので、YouTubeで行っているカバー曲も織り交ぜて新鮮なステージをお見せできたとも思っていて。自分自身がまずしっかり楽しみながら、その思いをファンの方々へも届けることができたと思います。
──会場の雰囲気も含め、グループ時代とは明らかに違ったライブの形でしたよね。
そうですね。E-girlsのときはパラダイスのような時間をファンの方と一緒に作り上げるライブスタイルだったので、そのときとはガラッと違う雰囲気のライブは、難しさもありましたけど、やっぱり楽しさのほうが大きかったです。1人でステージに立って何時間もパフォーマンスをすることの大変さを改めて知って、世の中のソロアーティストの方々への尊敬の気持ちがより強くなりました。
カバーとコラボが伶にもたらしたもの
──昨年3月からはYouTubeにカバー曲の歌唱動画を積極的にアップし続けています。そこにはどんな意図があったのでしょうか?
コロナ禍でライブがなかなかできない時期だったので、その中で自分にできることを考えた結果がYouTubeでの発信だったんです。いろんな趣味の方が観る媒体でもあるので、自分のルーツとなる曲やたくさんの方が好んでいる曲をカバーしてみようと思って。この挑戦で自分なりにさまざまな発見もあって、YouTubeでの動画投稿を始めてよかったなと思っています。
──そこにはシンガーとしての力をより磨きたいという思いもありました?
そうですね。普段よく聴いている曲でも、実際に歌ってみないとわからないことってすごく多いんですよ。細かい部分まで分解するように曲を聴くと、「あ、ここにこんなコーラスが入っていたんだ」とか「ここはこういうメロディの動き方なんだな」とか、オリジナルアーティストのこだわりがすごく見えてくるんです。それを自分なりに解釈して歌うことで、新たな表現やテクニックのアプローチが見えてきたりもしました。そういう部分ではシンガーとしての成長にもしっかりつながったと思います。
──これまでカバーしてきた中で特に強く印象に残っている曲はありますか?
UAさんの「情熱」ですね。ああいったロックR&Bの曲が好きなので、挑戦できてうれしかったです。同時に「私、意外とこういうタイプの曲も歌えるんだな」という気付きもありました。
──今まであまり歌ってこなかったタイプの曲だけど、でも自分の中にその要素はしっかりあったと。
そうですね。でも「情熱」を数年前の自分が歌ったら、きっとこうはならなかったと思います。28歳になった今、ちょっと声に深みが出てきたタイミングだからこそいい形でカバーできました。
──ソロとして活動する中で手に入れたシンガーとしての成長で、具体的に説明できるものはありますか?
一番はっきり言えるのは、レコーディングのときのテイク数が減りましたね。曲によるんですけど、自分にマッチした曲の場合は、本当にサラッとレコーディングが終わるようになりました。カバーも含めていろんな曲を歌ってきたことで、歌い方や表現方法のレパートリーが増えてきたからだと思います。ピッチもぶれなくなったし、自分でも前よりも歌えるようになったなと実感しています。この1年半、ずっと歌い続けてきたことで声帯をちゃんと鍛えられたんだろうなと思います。
──昨年には幾田りらさんや笹川真生さんとのコラボも経験されました。それによって手に入れたものもありそうですよね。
そうですね。コラボはソロになってからやりたかったことの1つだったんです。私はもともと幾田りらちゃんの曲がすごく好きだったし、逆にりらちゃんのルーツにE-girlsやFlowerの曲があったみたいで、お互いに通じ合うものがありました。笹川さんはレーベルの方に紹介していただいたんですが、どれもとてもカッコいい楽曲だったので、すぐにオファーさせていただきました。ダメ元だったんですけど、快諾してくださってコラボが実現しました。一緒に楽曲を作ることで、新しい伶の魅力を引き出していただけたような気がします。刺激的で楽しい経験になりました。
求められているものと新しいもののバランス
──これまでの活動を拝見していると、ソロの伶さんはすごく柔軟で、足取りが軽やかですよね。
あははは、そうですね(笑)。フットワーク軽く活動できていて、それによって得たものもたくさんあると思います。
──そういった活動の集大成とも言えるのが、今回リリースされた1stアルバム「Just Wanna Sing」ですね。伶さんにとっては初のCD作品となります。
自分でも繰り返し聴いちゃうくらい大好きな曲ばかりが詰まっています。自分の意見をしっかり反映させながら好き勝手にやらせてもらったんですけど、自信を持ってお届けできる1枚に仕上がりました。
──これまで配信リリースされてきた楽曲に加え、新曲が5曲収録されています。
新曲のうち、清塚信也さんとコラボした「恋と、終わりと、Kiss feat. 清塚信也」以外は、デビュー曲「Call Me Sick」(2020年10月配信リリース)のときにはすでにあったものなんですよ。ちょっと温めすぎた感じがありますけど(笑)、どれも思い入れの強い曲なのでようやく世に出せてすごくうれしいです。
──新曲について話を聞かせてください。「Dark hero」はどんな曲になりましたか?
歌始まりなので最初からインパクトがある曲になりました。トラックの雰囲気が自分にとっては新しくてカッコよく、歌詞の内容やメロディにもしっかりマッチしているので、アルバムの中でもかなり気に入っている曲です。メロディがすごくキャッチーなので、E-girlsやFlowerを応援してくれていた方々にもきっと好んで聴いていただけると思います。
──ソロとは言え、グループ時代からのファンのことを置いてけぼりにしないのが伶さんのいいところですよね。
そこはすごく大事にしていますね。応援してくださっている方がいるからこそ私は活動できているわけなので、皆さんに求められているものをしっかり感じ取りながら、なおかつ新しいものを見せていくというバランスを常に意識しています。
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