伶1stアルバム「Just Wanna Sing」インタビュー|11年の青春を胸に自分らしく誇り高く“ただ歌うだけ” (2/2)

明るい中に感じさせる暗い一面

──温めていた新曲たちは、アルバムリリースに向けて改めてレコーディングしたんですか?

そうです。どの曲も1年半くらい前の段階で仮レコーディングはしていたんですけど、アルバムのためにレコーディングし直しました。そこでも自分の成長というか、表現の変化を感じたところがありましたね。わずか1年半ではありますけど、曲に対するアプローチの仕方には確実に違いがあって、自分でも驚きました。

──「IDNY」の雰囲気はソロならではの感じですよね。つぶやくようなボーカルが印象的です。

全体的にダークな雰囲気なんですけど、ちょっとチルな要素もあって。こういう世界観はアルバムだからこそ表現できるものかもしれないです。家ではけっこうチルソングを聴くことが多いので、自分でもやってみたいと思っていました。ウィスパーで歌っているサビが印象的な曲になったと思います。

──終わった恋への思いを描いた切ない歌詞もいいですね。

私の歌声は、どっちかというと光よりも闇っぽい感じのほうが似合うのかもと思っていて(笑)。現に私の曲は、どんなに明るい雰囲気でもどこかに暗い一面が潜んでいるし。そこがソロアーティスト・伶の個性の1つなのかもしれません。

──「Butterfly」には、グッと大人っぽい雰囲気が出ています。

ちょっとジャズっぽいピアノが入っていたりして、おしゃれな曲になりました。艶を感じさせる歌詞には、28歳になったからこその等身大の思いを乗せることができたと思います。サビで熱が上がりすぎないところが今っぽい雰囲気になりました。

伶

──ボーカルのレコーディングはどうでしたか?

この曲はすごく難しかったです。普通に歌うと平坦で面白みがなくなってしまうので、しっかり抑揚を付けながらもトラックとうまく馴染む歌い方を探りました。何度も自分なりに試行錯誤して、今の形になりましたね。いつも曲を自分で選ばせてもらっているんですけど、だいたい歌うのが難しい曲を選びがちなんです。どうしてもトリッキーなメロディを持つ曲に惹かれてしまうというか。デビュー曲の「Call Me Sick」もそうでしたし……で、だいたいレコーディングのときに「なんでこの曲を選んでしまったんだ!」って、ちょっと後悔します(笑)。でもそういうハードルを毎回乗り越えてきたからこそ、今の自分がありますし、これからもきっと難しい曲を選んでいくんだと思います。

──「Playful Mind」は、エッジィなサウンドながらもキャッチーさを感じる1曲です。

エッジィなサウンドは私にとって新鮮ですけど、ポップさも持った仕上がりになりました。歌詞のワードセンスが素晴らしいし、メロディに対してのはめ方もすごくおしゃれで好きです。特に2Aに入るところがお気に入りです。

──日本語と英語のバランスが絶妙ですよね。

英語をたくさん使いつつも、日本語のよさもしっかり伝えるポップスになっていると思います。歌っていても心地よくサウンドに乗れて、すごく楽しかったです。ライブでみんなと楽しめる曲になったと思いますね。

E-girls楽曲をカバーした理由

──グループ時代のようにガッツリとテンションを上げてくれるタイプの曲も今後はやっていきたいですか?

ソロではまだそういうタイプの曲はないですけど、別に封印しているわけではないので、タイミングが来たらやってみたいです。ただ、グループ時代はダンスありきでパフォーマンスを考えていたところがあったので、ソロでは違った見せ方をしなきゃいけないと思うんです。そういう部分も含め、今はまだ試行錯誤中です。

──そして、アルバムのために作られた1曲が「恋と、終わりと、Kiss feat. 清塚信也」です。清塚さんとのコラボは「THE FIRST TAKE」で「白雪姫」を披露して以来、2度目になります。

はい。「THE FIRST TAKE」のときに清塚さんのピアノにものすごく惹かれて、清塚さんがピアノで作った曲はどんな雰囲気になるんだろうという興味がすごく湧いてきたんです。もう一度セッションをお願いしたいという思いがあって、オファーさせていただきました。

──歌詞は伶さんが書かれています。

私は作詞があまり得意ではないんですけど、せっかく清塚さんとやらせていただくことになったので、みっちり考えて書かせてもらいました。ワード選びは、清塚さんのピアノに乗ったときに浮いてしまわないように気を付けましたね。メロディがちょっと暗めな雰囲気だったので“THE叶わない恋”の歌詞にしました。1番と2番でピアノの鳴りが全然違って聞こえたので、1番は男性目線、2番は女性目線での歌詞にしてみたんですけど、それを清塚さんにたくさん褒めてもらえてうれしかったです。

伶

──レコーディングではボーカルとピアノを同時に録ったそうですね。

まさに「THE FIRST TAKE」のような雰囲気で、完全にセッションスタイルで録りました。清塚さんがピアノでしっかりリードしてくださるので、ものすごく歌いやすかったです。

──後半のフェイクがめちゃくちゃよかったです。

ありがとうございます! 歌詞を入れるべきかフェイクにするべきなのか、レコーディング当日まで迷っていたんです。清塚さんに「フェイクのほうがいいかもしれないね」と言っていただけたので、感情を込めてやり切りました。全編通してその場の空気感を凝縮したような、ライブに近い感じの音源になっていると思います。

──アルバムの初回生産限定盤にはカバー曲をまとめたCDも同梱されています。そこにはこれまで発表されてきたカバー曲に加え、初音源化となるE-girls「Run with you」のカバーも収録されていますね。ファンの方はすごくうれしいと思います。

喜んでいただけたらうれしいです。ポジティブなメッセージが詰まっている曲だし、E-girlsメンバーもすごく思い入れがある曲なんです。自分の今までの歩みが凝縮されている曲だとも思ったので、今回カバーすることにしました。

──これまではメンバーと一緒に歌っていた曲を1人で歌ってみていかがでしたか?

不思議な気持ちになりましたね。私の声質は、ポップな曲でもポップになり切れない感じがあるので、そこをほかのメンバーにカバーしてもらって華やかな仕上がりになっていたんです。今回は1人でこの曲をしっかり表現しなきゃいけないので、かなり悩みました。悩んだ結果、自分の声質に合わせてトラックを少し落ち着かせて作らせていただきました(笑)。

──原曲のよさはまったく失われていないし、伶さんならではのカバーにもなっていると思いますよ。

ありがとうございます。原曲のキラキラ感、爽快感はちゃんと残せているし、そのうえで精一杯自分らしく歌えたと思います。グループ時代の曲を歌うのはやっぱり感慨深いものがありますね。

伶

とにかく歌うことを楽しんで

──1stアルバムを作り上げたことで、ここから先の未来について何か見えてきたものはありますか?

オリジナル曲が増えたので、ライブもやっていきたいなと思っています。今の自分のすべてをアルバムに詰め込むことができたので、ここからもっともっとさまざまなジャンルの曲にも挑戦していきたいです。

──ソロ活動をするうえで、具体的な夢や目標を挙げるとすると?

正直に言うと、幼い頃から思い描いていたほとんどの夢はE-girlsやFlower時代に叶えてもらえたんです。だからソロとしては音楽を楽しみながら、応援してくださる皆さんと一緒に、ゆっくりと歩んでいけたらいいなと思っています。

──グループとして叶えた夢をソロとしても叶えることに固執はしていないと?

そうですね。もちろん大きな会場でやったりとか、そういうことが叶ったらもちろん素晴らしいことではありますけど、ソロはソロとして自分らしく歩んでいきたい気持ちのほうが強いかもしれないです。自分の人生に沿うように音楽を楽しんでいければいいかなと思っています。

──「Just Wanna Sing」というアルバムタイトルがその気持ちを象徴しているようですね。

はい。まさに“ただ歌いたいだけ”です(笑)。グループとしてのデビューから数えれば約11年、青春を捧げてきたその時間で手に入れたプライドを大事にしつつ、ここからもとにかく歌うことを楽しんでいければいいなと思っています。

伶

プロフィール

(レイ)

1994年1月20日生まれ、佐賀県出身のソロシンガー。2011年にオーディション「EXILE Presents VOCAL BATTLE AUDITION 3 ~For Girls~」で選出され、Flowerのボーカル&パフォーマーに。同年にシングル「Still」でデビューした。E-girlsとしても活動し、2020年末の解散までグループの中心人物として活躍した。グループ時代は本名の鷲尾伶菜名義で活動していたが、2020年10月にはソロ名義の伶として映画「小説の神様 君としか描けない物語」の主題歌「Call Me Sick」と挿入歌「こんな世界にしたのは誰だ」を配信リリースした。2021年7月と10月に東京、横浜、大阪のBillboard Liveにて単独公演を開催。2022年4月に1stアルバム「Just Wanna Sing」をリリースする。