ナタリー PowerPush - QOOLAND
素晴らしきタッピングの世界
QOOLAND(クーランド)が4月23日にミニアルバム「毎日弾こうテレキャスターagain」をリリースする。今作は2012年に発表されたミニアルバム「毎日弾こうテレキャスター」のリテイクバージョンに新曲「膝を割らないうちに」を加えた全7曲入りの新作。今回はナタリー初登場となる彼らに、注目されるタッピング奏法を取り入れたきっかけ、影響を受けたアーティスト、ライブパフォーマンスに対するこだわりなどについて話を聞いた。
取材・文 / 田中和宏 撮影 / 井出眞諭
フィクションの登場人物と自分の日常を歌う
──3月28日の東京・新宿MARZワンマンを観させていただきました。ライブ中に平井さんが「俺たちを今日だけでいいからBUMP OF CHICKEN、9mm Parabellum Bullet、サンボマスターにさせてくれ!」と叫んでる姿が印象的でした。名前に挙げたようなバンドがバックグラウンドにあるんですか?
平井拓郎(Vo, G) そうですね、ほかにもThe Beatles、Green Day、Metallica、Nirvana、Oasis、Foo Fighters、Weezer、Sum 41とか外タレのヒーローたちが好きだったり、みんなが好きそうなものが好きです。
──平井さんが書かれる歌詞はアニメ、マンガから影響を受けているそうですが。
平井 フィクションからはいろんなことを教わってますね。どのCDにもアニメ、マンガの内容を歌った曲が入ってますし、これからも自然と書いていくと思います。
──以前からアニメの内容をモチーフにした歌詞が多かったんですか?
平井 引用してることもありましたけど、今ほどじゃないですね。基本的に僕は主にフォークシンガー的な気持ちで自分の暮らしを歌ってます。でも「僕ら月に1回ライブやってます」みたいな人の日常だったら聴きたくない。つまり自分を苦しめるくらいたくさんライブをやって、そういう日々の裏側にある部分をたくさん曲にしていきたいんです。例えば「るろうに剣心」「ドラゴンボール」の主人公たちは戦ってるシーンが多く描かれてますけど、その裏側で緋村剣心が洗濯してる時間があったり、孫悟空が山に魚を捕りに行ってる時間があったりすると思うので。
──なるほど。そもそも平井さんが音楽をやり始めたきっかけってどんな感じだったんですか?
平井 曲が作りたいという理由で中学生のときにアコースティックギターを買いました。ジョン・レノン「ジョンの魂」を聴いて、あんな感じで自分も歌いたいなって。全部似た曲だったとは思うんですけど中高あわせて300曲くらい作りました。「白夜行」のサビはそのまんま中学生のときに作ったものですし、新曲「膝を割らないうちに」は歌詞を書き換えてますけどサビのところは高校時代に作ったもののアレンジだったりします。
「隣人」はダブル主人公モノのストーリー
──楽曲の中でさまざまなストーリーが描かれてますが、「隣人」の歌詞は2人の主人公の主観が交互に描かれるという変わった切り口です。
平井 音楽をやってるとどんなに努力しても一般の人よりは暮らしがうるさくなってしまうので、もし隣に住んでる人がすごいナーバスな人だったらどうなってしまうんだろうっていうことをこの歌では書きました。内容はどんどんエスカレートして、登場人物がおかしくなってしまうというものになってますけど。こういうダブル主人公モノは好きですね、「今日から俺は!!」の三橋と伊藤とか。あの人とこの人っていう歌詞の視点で言うとThe Beatles「Ob-La-Di, Ob-La-Da」の影響もあります。
タカギ皓平(Dr) 平井みたいな歌詞を書くやつに出会ったことなかったので、新鮮かつ鮮烈でびっくりしました。
──歌詞はストーリーだけではなくて、韻の踏み方や譜割りにもこだわりを感じました。
平井 そこはノエル・ギャラガーの影響かな。Oasis「Supersonic」の歌詞にある「Supersonic」と「jin and tonic」を並べるあたりに衝撃を受けまして。歌詞の語呂とかリズムによってメロディの聞こえ方が決定すると思ってるんで、歌詞はリズム楽器の一部だと思います。「さよならNEVADAまた会いましょう さよならねまたまた会いましょう」と歌ってたり、「白夜行」の「衰弱死寸前の」って歌詞は“さしすせそ”と“ざじずぜぞ”で揃えたりしています。
収録曲
- 隣人
- さよならNEVADA
- パプニカ
- 白夜行
- copy & paste
- ドグラマグラ
- 膝を割らないうちに
QOOLAND(くーらんど)
2011年9月結成。平井拓郎(Vo, G)、菅ひであき(B, Cho)、タカギ皓平(Dr)、川崎純(G)からなる4人組ロックバンド。平井と川崎によるタッピング奏法を駆使したギターサウンドや、マンガ、アニメなどのフィクション作品、日常生活をモチーフにした歌詞を特徴とする。2012年3月に自主制作アルバム「毎日弾こうテレキャスター」を発表。2013年5月に初の全国流通盤となるフルアルバム「それでも弾こうテレキャスター」を自主レーベル・下高井戸レコードからリリースした。同年アマチュアバンドコンテスト「RO69JACK 2013」で優勝し、8月に「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」への出演を果たす。精力的なライブ活動を続け、2013年は115本のライブを敢行した。2014年2月に6曲入りCD「教室、千切る.ep」を発売し、3月に大阪と東京で初のワンマンライブを実施した。4月には「毎日弾こうテレキャスター」収録曲のリテイクバージョンに、新曲「膝を割らないうちに」を加えたミニアルバム「毎日弾こうテレキャスターagain」を発表。