PRIZMAX|2曲に詰め込んだ7人の集大成 初めて気付いた“自分らしさ”

音楽好きなヤツらと一緒に歌える幸せ

──では、ボーカルの皆さんはレコーディングの際にはどういったことを意識していたんでしょう?

森崎ウィン

ウィン メロディラインがわりと単純で特別難しいと感じるような楽曲ではないのですが、ひさしぶりにこういうミドルバラードを歌ったので、そういう意味ではすごく新鮮でした。なんと言うか、ベタッとした聴き心地にしたくないんだけど、立体的に表現しようと思えば思うほど空回りしそうな気もして。だからあえて何も考えず、先入観なしでスッと表現しようと考えていました。

──前作のアルバム「FRNKSTN」の思い切り作り込んだ楽曲群とはまったく違いますもんね。

ウィン そうなんです。「FRNKSTN」はいろんな鎧を着て完全装備で立ち向かっていく戦士のような気持ちで歌っていたんですけど……今回の「愛をクダサイ」のイメージを絵にするなら、戦いに勝ったのか負けたのかもわからない場所で、周囲も自分の身もボロボロな中、最後に兜をすっと外してひざまずいて「愛をクダサイ」とつぶやくような。ホントに裸に近い感覚ですね。でも、丸裸だとエンタメにはならないので。その加減ですね。

ケビン Jeff Miyaharaさん(「FRNKSTN」サウンドプロデューサー)の曲は作り込まれているのでディレクションも細かいんですけど、「愛をクダサイ」は歌い手の僕らに託された部分がすごく大きくて。バラードという曲調も相まって、情景を歌で表現することが少し難しかったです。ウィンくんは目を閉じて、ギターを弾いているような感じで歌入れをしたりしていて、そういう姿に僕も影響を受けながらやらせてもらいました。

ウィン 絶対思ってないでしょ!(笑)

ケビン いいじゃないですか、こういうときくらい!(笑)

森英寿

英寿 僕はPRIZMAXに加入する前から、「yours」のようなPRIZMAXのミドルバラードが好きだったんです。僕がグループに入ってからは勢いのある曲しかレコーディングをしていなかったので、まず7人で今回のような曲ができたことにうれしさがありました。あと、「FRNKSTN」では英語の発音に苦労していたんですけど、日本語は日本語で難しさがあるというか。僕はサビ前を歌っているから聴き手をグッと惹きつけるような歌い方をしたいと思っていたんですけど、息の使い方や表現の仕方がけっこう難しくて。すごく試行錯誤した感じでしたね。

──そう、今回の曲は前作よりもケビンさんと森さんのパートが格段に増えていますよね。

ケビン はい、今回僕はサビをまるまる歌わせてもらいました。ライブパフォーマンスでも、僕が筆頭に立って歌い、それに合わせてみんなが踊ってくれるというすごく重要な役割なんです。僕の熱量次第でパフォーマンスの勢いを左右すると思ったので、ライブでもすべてをかけてやりたいと思っていて。

──ウィンさんは今回のこうした変化をどう受け止めていますか?

ウィン 「ウィンはPRIZMAXにいる歴が長いからできて当たり前、だから2人に教えないと」なんて、よく演出家の方なんかに言われるんです。場数で言ったら確かに俺のほうが多いかもしれないけど、でも2人は2人なりに、違った形で音楽に対してすごく向き合ってきていて、正直僕なんかよりもできることがたくさんあるんです。ぶっちゃけ、教えることってないんですよ。アドバイスならできると思う。踊りながら歌うとこれだけ息が切れるから、この動きは捨てていいよとか。そういう部分はあるけれど、基本的に自分も必死ですよ(笑)。ただすごく思うのは、2人ともホントに音楽が好きなんだなって。今回レコーディングの中でもすごく感じて、これだけ音楽好きなヤツらと一緒に歌えている俺は幸せだなって思います。それはすごく感じましたね。

自分たちらしさに気付けた

──先ほど森さんのお話の中にもありましたが、今回の「愛をクダサイ」のようなミドルバラードのパフォーマンスのうまさって、PRIZMAXの大きな持ち味の1つなんじゃないかなという感覚があって。皆さん的には「得意分野だ!」みたいな思いがあったりするのでしょうか?

清水大樹

大樹 「愛をクダサイ」が僕らのところに来たときに「あ、これプリズだね」とは思いました。これまでいろんなダンススタイルや曲のジャンルに挑戦してきましたけど、こういった曲で歌って踊ることが、一番腑に落ちる僕らのスタイルなのかなと感じたというか。得意なのか合っているのか、自然とそういう感覚に……。

ウィン そうね。

 いや、好きになってしまうんだよね、自然と。

大樹 親しみがあるんだよね。

 「これこれ!」って思ったもんなあ、ぶっちゃけ。

──「yours」にしても「Someday」にしても、観ていて真骨頂感があるんですよね。

 僕らっていろんなジャンルの曲をやりすぎて、いい意味でも悪い意味でも芯がないというか。「PRIZMAXってどういうグループなの?」と言われたときに、ぱっと形容できない部分があるのは自分たちも承知しているんです。ただ、いろんな経験を積んできた中で、こういうミドルバラードで表現するのが気持ちいいなという感覚はメンバーそれぞれの中で感じていることだと思うんですよ。だから今「真骨頂だ」と言ってもらえたのは、すごくうれしかったです。

──フィットする感覚があるんですね。

有希 今インタビューを受けている中で気付いたんですけど、僕ら7人になってグループ名の表記も変わり、その第1弾としてアルバム(「FRNKSTN」)を出したじゃないですか。そのアルバムの中には、感情を乗せて踊れるような曲があまりなかったんです。それは自分たちのパフォーマンスの勢いをすごく重視していたから、わざとそうしていたんですけど。ただ「愛をクダサイ」を聴いたときに、やっぱり自分も安心したというか。例えて言うなら、「FRNKSTN」はホテルに泊まってるような感覚だったけど、今回の曲は自分の家のベッドで寝ているような感覚があったんです。ただその感覚も、前作で今までと違う曲調のものをやりこんだからこそなんだなと。これまで“プリズっぽさ”とはなんなのかわからなかったですし、僕は「これが俺らだ!」みたいな思いを持ったこともなかったんです。ずっと「らしさってなんだろう」と思ってた。だけど「FRNKSTN」に挑戦したからこそ、「愛をクダサイ」で自分たちらしさに気付けた。

大樹 うん。

有希 やり慣れてるから安心するという感じではないんですよ。近くにあったからこそ気付けなかったものに気付けたのかな。今回のシングルは2曲ともいい曲だけど、「愛をクダサイ」に関しては、ファンの方は「おかえり」という感情が湧くかもしれないですよね。

 確かに。だって俺らが「ただいま」の気持ちだもんね。

有希 タイトル、「ただいま」に変えたほうがいいんじゃない?

ケビン

ケビン 「ただいま」、ウィンくんの曲のタイトルにすでにありますから(笑)。

大樹 ただこれは永遠のテーマだなと思うんですけど、こういった曲ってシンガーだけで歌っても成立するんですよね。僕らはダンスボーカルグループだから、ステージ上でパフォーマーもいる中で最高だと言われる表現をするために葛藤してきた感覚はあります。「PRIZMAXの曲って、いい曲ばっかだよね」ということも言われ続けてきたんですけど、パフォーマンスで何を残すかっていうね。

──ではそのパフォーマンスの部分についても、お話を聞けたらと思うのですが。

史記 振付は50(FIFTY)さんが作ってくださったんですが、それぞれが感じ取る思いがこの曲の歌詞にはあると思うので、それを1人ひとりが表現しつつも7人でどう見せるか、というパフォーマンスになると思います。さっきケビンの話を聞いていて思ったんですが、軸にボーカルがいてのパフォーマンスなので、もちろん僕らパフォーマーも全力を出し切るけど、ボーカルが一層引っ張ってくれたら相乗効果でこちらも上がっていけるなと思いました。すごく素直な歌詞ですし、僕らも素直にがむしゃらにパフォーマンスするので、まっすぐ受け取ってもらえたらいいなと思います。あと僕は、PRIZMAXの真骨頂と言われるようなこの曲を、7人で1から作れることがすごく楽しみです。僕ら3人(史記、ケビン、英寿)が入ってからミドルバラードに挑戦するのは初めてなので。

プリズの過去をぎゅっと2曲にまとめたような両A面

──もう1つの表題曲の「Beginning」は「FRNKSTN」の世界観をさらに押し進めたようなパワフルな楽曲ですね。

森崎ウィン

ウィン そうですね。「FRNKSTN」であれだけ勢いを押し出した、そのあとの曲なので、「FRNKSTN」を超える勢いがあると思います。この曲はライブ映えする曲を増やそうという意味も込めて収録された曲です。Jeffさんの曲で振付は50(FIFTY)さんなんですが、「愛をクダサイ」と「Beginning」、ホントに両極端にある2曲なんですよね。ボーカル的には、「Beginning」は気持ちを乗せるとかいうことより、何より難しくて(笑)。「ダララララ」と駆け上がっていくようなボーカルパートもあるし、これは果たしてライブで歌えるのだろうかと思うくらい余裕がないんですけど、だからこそ追い詰められたような臨場感、危機感みたいなものが感じ取れて面白いんじゃないかなと思います。振付もね、「心臓」をテーマにしているんですよ。心臓を……。

史記 取られるんですよ、心臓を。

ウィン つかまれたりとかね。

 心臓の闇取引をしている、といった伏線を張り続けていくパフォーマンスですね。

ウィン 最後に僕だけ心臓をバッと取り出して見せるんですけど……あ、リアルに取るわけじゃないですよ?(笑) それがすごく、本気度の証明になっているというか。「この鼓動を感じるか」と訴えかける、そんなメッセージ性もある曲です。

島田翼

 ちょうど振り入れが終わってこれからブラッシュアップしていくんですけど(取材は11月末に実施)、「愛をクダサイ」が個の世界観で魅せる曲だとしたら、こっちは7人で大きなロボットを作り上げるというか。よくスーパー戦隊で出てくる合体ロボのような、あんなイメージですね。曲調的にはノりやすい感じではないし、だいぶ一方的にこちらから訴えかける感じになると思うけど、押し付けがましいと思わずに受け止めてもらえたらいいなと思ってます(笑)。みんなが圧倒されるようなダンスになるように、磨いていきます。

──こうして話を聞くと、今のPRIZMAXだからこそ出せるシングルにまとまっている感じがしますね。

 そうなんです。だからホント、両A面にしてよかったというか。プリズの過去をぎゅっと2曲にまとめたような両A面になってる気がして。僕らにとっても思い出深いシングルになるんじゃないかなと思います。

大樹 これまでのプリズと新しいプリズのサウンドの両方が主役になっているのがうれしいよね。そこは僕らも価値の順位が付けられないからね。