“ヒューマンウェーブ”を感じるサウンド
──あらゆる面で強いインパクトを残したテレビシリーズを経て、いよいよ4月10日には劇場アニメ「プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第1章」が公開されます。今回はどんなイメージを持って楽曲制作に取り組みましたか?(※4/2追記:新型コロナウイルス感染拡大に伴う各行政機関の発表や方針を受け、本作の公開は延期となりました。新たな公開日は追って「プリンセス・プリンシパル Crown Handler」公式ホームページ、公式SNSで告知される予定です)
関根 テレビシリーズ同様、オープニング、エンディングテーマで驚きを与えて、注目を集めたいということが1つの大きな命題としてありました。オープニングに関しては前回がわりとシリアスだったのに対して、今回はテレビシリーズの続きということで、もう少しハッピーな雰囲気を出せたらなという思いもありましたね。もちろんテレビシリーズで築いた「プリプリ」ならではの世界観は守りつつですけど。
高橋 そういった方向性の中で出たアイデアがクラブミュージック的なアプローチだったんです。
Konnie 最初はジャミロクワイの初期のようなアシッドジャズはどうかって話でしたよね。軽やかでスタイリッシュな感じで。でも、あんまり軽やかすぎても違うんだって、監督さんを含めたいろいろな方から意見が出たりして。
関根 あとはクラブミュージックに寄せるとけっこうビートが単調になってしまうので、アニメとしては映像が映えないっていう問題もあったんですよ。
高橋 そうそう。四つ打ちの割合いを増やしていくと、サウンドが乾いて聞こえるのと、展開に伴ったドラマの演出が難しいというところがあります。「プリプリ」の音楽としては希望を感じさせつつも、どこかちょっと湿度があって、ザラザラした質感のほうがいいなという思いはありました。さらには物語を彩るドラマチックさもなきゃいけないわけで。そんなことを考えていくと、狙うべきポイントがかなり狭くなっていくからけっこう大変で。でも結果的には関根さんとKonnieさんに助言をいただきながら、いい落としどころが見つかったのでホッとしたんですけどね。
関根 完成までに3、4往復くらいやり取りしましたからね。
高橋 うん。テレビシリーズの「The Other Side of the Wall」は勢い重視で、右ストレート一発っていう感じで作れたけど、今回の「LIES & TIES」はもうちょっとテクニカルな構築の仕方が必要だったんですよね。なので何回か細かくやり取りさせていただいて。
──歌詞に関しては今回、どんなイメージを乗せましたか?
Konnie テレビシリーズのオープニングでは、主人公であるアンジェがスパイとしての決意を宣言するというか、ある意味、物語の始まりをぶち上げる内容だったんですね。そこを経て、今回のオープニングではそれぞれ孤独だった5人の女の子たちに絆が芽生え、チームとしてさまざまな壁を乗り越えていかんとする内容にするのがいいのではないかと。曲の雰囲気に寄り添いつつ、そんなことを思いながら書いていきました。
関根 めっちゃいい歌詞ですよね。監督もすごく気に入ってもらえたようで、一発OKでしたし。
高橋 “絆”というキーワードもそうですけど、キャラクターの内面や心の温度感みたいなものって、テレビシリーズを経たことでストーリーへの理解度が高まったからこそ書けるものだと思うんですよね。今回のKonnieさんの歌詞には、主人公たちの血が通った言葉が詰まっていると思ったので、去年の10月に「プリプリ」のライブイベントで初披露した後、あらためて少し温かみのある音を足したところもあったりして。それによってサウンドとしてよりまとまったような気がしました。
Konnie よりヒューマンなウェーブがサウンドに出ましたよね。
高橋 ヒューマンウェーブがね(笑)。
マイケルやプリンスみたいにキレッキレに
──「LIES & TIES」にはフィーチャリングボーカリストとして麦野優衣さんが参加されていますね。
関根 まず曲ができる前の段階で、「きっとこんな曲になるだろうからそれに合ったボーカリストを探そう」ということで、たくさんの方々のサンプル音源を聴いたんですよ。その後、オーディション的なテストレックとして「The Other Side of the Wall」を何人かに歌ってもらったところ、麦野さんの声に非常に強い魅力を感じたんですよね。
Konnie 前回「The Other Side of the Wall」を歌ってくれたMARUさんがパワー系のスタイルだとしたら、麦野さんはパワーもあるけどもう少し軽やかな感じというかね。
関根 そうそう。MARUさんとは違った魅力、違った切り口を感じることができたので、これはハマるんじゃないかなと。
高橋 麦野さんは作家もやられている方だから、作り手の意図を感覚的に理解していただけるところもあって。実際のレコーディングでも、言語化せずとも伝わる部分が多かったから、すごくやりやすかったですね。
Konnie ディレクションは僕がやらせてもらったんですけど、各セクションごとに細かくお互いのこだわりをしっかりすり合わせていくことができました。「ここはマイケル(・ジャクソン)とかプリンスくらいキレッキレにやっちゃいましょう」って言えば、すぐに理解してくれますしね。「え、どのマイケルですか?」みたいなことにはならないっていう(笑)。ものすごく時間はかかったけど、お互いに何の不満もないバッチリな仕上がりになったと思います。
高橋 麦野さんが楽しんで歌ってくださっていることも伝わってきましたしね。仕上がったものを聴いたときは興奮しましたね。
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さらなる狂気をはらんだ「Nowhere Land」
2021年2月4日更新