ナタリー PowerPush - POLYSICS
POLYSICSの王道&初期衝動! 絶対的ニューアルバムがついに完成
機械と戯れて、遊んでるうちに曲が生まれてくる
──ところで今回はほとんどの曲が2分台で、トータルタイム35分というコンパクトな仕上がりですが。
自然とそうなったんですよね(笑)。自分たちの感覚的にこれぐらいの長さの曲がやってて一番気持ちいい。僕はこのトータルタイムもそんなに短いと思わなくて。自分が聴いてたロックのアルバムって36、7分とかのが多いし、それ聴いて短かったなんて思わないし。本当に何も考えずに作るとこのタイムになっちゃうんですよ。だから意図して短いものを作ろうと思っていたわけではないです。
──アルバムタイトルの「Absolute POLYSICS」というのはどういう経緯で?
作りながら、POLYSICSの決定盤を作ろう! っていう気持ちはあったんです。だから本当はタイトルもそのまま「POLYSICS」でもよかったんだけど、それだけだと自分はあまり面白くないから(笑)。「○○○ POLYSICS」か「POLYSICS ○○○」みたいなタイトルにしたくて、これにしてみました。
──アルバムの初回盤DVDには、6時間のレコーディングドキュメントが入っていますが、あれは普通ではファンが観ることのできない映像ですよね。
そうですね。スタジオでこういう感じで曲が出来ていくっていうのをわかってもらえるんじゃないかな。
──そう、レコーディングスタジオでの作業についてはDVDである程度わかるんですが、その前の段階、ハヤシくんがデモで曲を作る一番最初の部分で何をイメージして作っているのかというのも気になるところで、今日はそれをちょっと教えてほしいんですが。歌メロとか歌詞から作っているわけではないですよね?
うん、メロとか歌詞とかっていうのはそんなに重要視してない(笑)。それよりやっぱテンションなんじゃないですかね。曲にもよるけど、自分がプレイするときでも聴くときでも、やっぱ自分がテンション上がったり元気になったり覚醒したりとか、目がちょっと大きくなるような(笑)、そういうのを意識して作ってるんだと思う。
──そのスタイルはけっこう特殊ですよね(笑)。曲はギターで作るんですか?
基本はギターで作りますね。でもシンセで作ることも最近は増えたかな。シーケンサー変えたのもあって。
──じゃあギターやシンセを弾きながら?
うん、遊んでるうちにできる感じです。「このフレーズちょっと面白い」とか「このフレーズはみんなビビるかな」とか。ギターやシンセや、まあシンセベースやリズムボックスでもいいんだけど、基本的にはなんかもう機械と戯れて、遊んでるうちに生まれてくる音色だったりフレーズだったりを曲にしていく感じで。
──そうやって生まれたフレーズやリズムパターンをもとに、曲としての構成を組み立てていくということ?
そうそう。サビを加えてもっと曲っぽくしてみようかな、みたいなのは考えますよね。自分がそういうの好きだから。歌うのも好きだし。ただ、その音色が気持ちいいからって、それだけずっと10分も20分も繰り返すようなミニマルなものを作ろうとは全く思わない。それには興味がない。だって長いじゃん(笑)。歌も歌いたいし、A、B、サビみたいに曲としてまとめたいっていうのはありますよね。
──それはやっぱりニューウェーブ・パンクの影響なんでしょうか。
そうですね。まあインストも好きだけど、やっぱりストーリーがあって歌があって曲が展開するのが好きなんですよね。自分が高校生のときにDEVOやP-MODEL、XTCみたいなのを観て「これだ!」と思った、その感覚は変わらないですね。
こういう時代だからこそ自分たちがカッコいいと思えるものを
──それにしても、ここまで完成度の高いアルバムを聴かされると、次が逆に心配になるというか。これが「絶対的なPOLYSICS」だとしたら、次回作はどうなっていくんでしょうか?
どうなっていくんでしょうね(笑)。そういう意味では今はまったくアイデアないですよ。いつもアルバム出した後に、次にやりたいことを考えたりするんだけど、今回まったくそういうの浮かばないし。でもそれはそれで逆にいいかなって。ツアーに集中できるし、ツアーが終わってから考えればいいんじゃないですかね。
──じゃあ次のアルバムは「Absolute POLYSICS 2」みたいなものになるかもしれない?
同じようなアルバム作っても、って気はします。やっぱり今回のも初期衝動的とはいっても、今までのアルバムとは全然違うわけだし。常に新しいことやり続けて、今回もちゃんと新しいものになってるし。だから自分たちのカッコいいと思う音を全力で鳴らして、ブレない作品を作り続けていきたいっていうだけですね。
──それをやればお客さんがついてきてくれるっていう自信はあるんですね。
うん、お客さんもそういうの望んでるはずだし。今は時代的にちょっといろんなことが面倒くさいじゃない? 配信のこととか、CDが売れないとかいろんなことがあって。フェスにみんな行っちゃってワンマンにお客さん入らないとか。でもじゃあその状況の中でどうするかっていうと、周りの流行ってる音楽の要素取り入れて自分たちでそういうのやるのかって言ったらそうじゃないわけで。今の時代だからこそ、若い子たちにも、それこそトラウマが残るような(笑)ちゃんとした音楽を伝えていかなきゃって思うんですよね。ブームに乗って周りと似たようなものを作っても、しょせんそのブームが去ってしまったり、何かのバランスが崩れたときに一緒に崩れちゃうだけだし。POLYSICSはそんなバンドじゃないだろうとは思ってます。
──いいアルバムができて、ライブも常に盛り上がって、今バンドはかなりいい状態だと思うんですが、そのあたり自分ではどう感じていますか?
いや、どうかなー(笑)。調子いいとか思ったことはあんまりないですよ。まあ、一時よりはいいかっていうのはあるけど。やっぱりお客さんもライブ行きまくってる子たちが多いから、下手なライブしたらすぐわかるだろうし、逆にいいライブできたらそれはやっぱり自信になるし。一回一回が勝負だから「今日お客さん入ってよかったよね!」って感じより、「この人たちが次ちゃんとまた来てくれるようなライブを今日はやれたか?」って、そういうことばっか考えてますね。
──苦労人っぽい発言ですね(笑)。
でもみんなそうだと思うんだけどなあ、違うかな? でもまあ、いまだに現状には満足できてないから。そこでじゃあやるべきことは何だろうって思ったときに、ブレてないものを作ろう、今だからこそ作んなきゃ! って感じはあります。だから今回こういうアルバムができたんじゃないかと思いますね。
CD収録曲
- P!
- Shout Aloud!
- Young OH! OH!
- 催眠術でGO
- Time Out
- Bero Bero
- Cleaning
- E.L.T.C.C.T.
- First Aid
- Fire Bison
- Eye Contact
- Beat Flash
- Speed Up
- Wasabi
DVD収録内容
- Shout Aloud!
- Young OH! OH!
- ノーカット・ノンストップ収録! POLYSICSのレコーディング全貌6時間!
POLYSICS(ぽりしっくす)
メジャーデビュー10周年を迎えた、日本が世界に誇るニューウェイブ・ロックバンド。そのユニークなキャラクターと、ニューウェイブの真髄を自身のスタイルに昇華させたサウンドは海外からも熱烈な支持を受け、近年はUS & UKを中心にツアーを毎年大成功させている。ギター・ボイス・プログラミングのハヤシは、飛び道具的魅力を持ったDJとしても引っ張りだこ。