ナタリー PowerPush - POLYSICS

POLYSICSの王道&初期衝動! 絶対的ニューアルバムがついに完成

POLYSICSのニューアルバム「Absolute POLYSICS」は、難しいこと一切抜きで突っ走る35分55秒の疾走盤。自信あふれるタイトルそのままに、POLYSICSにしか生み出せないユニークな楽曲が計14曲にわたって詰め込まれている。今や最強のライブバンドの名を欲しいままにする彼らがデビュー10周年を経てたどり着いた地平とは? 首謀者であるハヤシ(G, Voice, Programming)にじっくり話を訊いてみた。

取材・文/大山卓也

自分の根底にあるニューウェーブ・パンクをもう一度意識した

──ニューアルバム最高ですね。非常にPOLYSICSらしい作品だと感じました。

はい。とにかく、誰が聴いてもPOLYSICSの新しいアルバムだ! とわかるものを作ろうって、本当にそこだけ考えてました。すっごいシンプルに。

──前作(「We ate the machine」)はPOLYSICSの新しい一面が見える作品だったと思うんですが、今回はPOLYSICS本来のエッセンスをギュッと濃縮した印象があって。

確かに前作はそうでしたね。今までは「POLYSICSらしさ=誰も聴いたことない新しいもの」って思ってて、そこばっかり意識してた。そういうスタンスでずっと音楽を作り続けてきたんだけど、でも今回はそれよりも自分の根底に流れてるニューウェーブ・パンクみたいなものを、もう一度意識し直してみたんです。きっかけになったのはやっぱインディー盤のリマスターで。

──今年2月にリリースされた「1st P / A・D・S・R・M!」ですね。

うん、改めてあれを聴いたときに、やっぱいろんな発見があったんです。電子音の感覚とかせわしない感じとか、「俺やっぱこういうの好きだな」って思って。当時はあんまり評価されてなかったけど、自分は昔から自分の好きなものを詰め込むスタイルでやりたかったんですよね。リズムボックスと生ドラムが融合しててもいいじゃん! ギターとシンセが同じぐらいの音で鳴っててもいいじゃん! みたいな。あれから10年経って、自分も変わってる部分もあるし、メンバーも違うし、この初期の感覚を今のメンバーでやったら新しいものができるんじゃないかと思って。それで「Beat Flash」っていう曲を作ってみたんです。そしたら「あっ、これは“ザ・POLYSICS”って感じの曲だな」「こういう曲がいっぱい入ったアルバム作りたいなあ」って思えたんですよね。

──その心境の変化はどこから来たんでしょうか?

「We ate the machine」で満足できるものが作れたっていうのは大きくて、それじゃあ次に自分のやりたいことはなんだろう、POLYSICSはどういう音楽を今後作っていくんだろうっていうのは考えてたんです。一旦フラットな気持ちになって「じゃあ次どうしよう?」って思ったときに、DEVOとの対バンがあったり、リマスターの作業があったりで、自分が好きだった音楽はやっぱりいいんだ、正しいんだっていう感覚を持てたのがやっぱり大きかったのかもしれない。

──じゃあ今回のアルバム制作は、POLYSICSを結成した頃の感覚に近かった?

そう、高2ぐらい、POLYSICS結成前ぐらいの頃は、純粋に自分のために曲を作ってたわけで。そのときに出来たのが「BUGGIE TECHINICA」だったり「PLUS CHICKER」だったり「T・RIANGLE」だったり。いわゆる初期のナンバーでいまだにやってる曲なんだけど、そういう感覚がね、今回はあったかもしれない。今までもやりたいことを素直にやってきてたけど、今回は特にもう周りのことは考えずに本当に自分で作りたいものをシンプルにやってみたっていうか。

──いわゆる初期衝動みたいな?

そうそう、そういう意味で、初期の頃に近い感じはあるかも。今までは例えば、ツアーで全国巡ってでっかいキャパシティになったときに本当に後ろまで手が上がるのかなっていう不安があって、じゃあもっと後ろに届くような曲、大箱映えする曲を作ろうかとか。ここでみんなが歌える曲があったらいいなとか、サビでみんなが拳を上げるような曲とか、なんかそういう風にお客さんの顔を思い浮かべながら作ったりしてたところがあったんですよね。今回はそういうのをまったく意識しないで作ったから、この勢いとか疾走感みたいなものは確かに1stアルバムの感じに近いと思う。やってる内容は全然違うけど、似てるところはあるかもね。

──この夏のフェスでもラストに「BUGGIE TECHINICA」を演奏していましたけど、ぜんぜん古くないし、今のPOLYSICSならではのカッコよさが出ているんですよね。このアルバムからも、そういったPOLYSICSの核の部分みたいなものを感じました。

「BUGGIE TECHINICA」はそうねえ、いまだにやれてるうれしさみたいなのはありますよね。普通は、高2のときに作った歌なんて恥ずかしくて歌えねえよっていう人がやっぱりほとんどじゃない?(笑) 当時とは時代も違うし歳も違うし、生活環境も変わってるわけだし。でもPOLYSICSは「BUGGIE TECHINICA」をずっとやれてて、それがポリのよさだと思うんですよね。歌詞にメッセージがないっていうのも大きいと思うんだけど、やっぱなんかあのときのテンションとか感覚みたいなものは常に自分の中に残ってて。だから「BUGGIE TECHINICA」やって違和感があるようなライブは、あんまりしたくない。このままやり続けたいですよね。

ニューアルバム『Absolute POLYSICS』 / 2009年9月16日発売 / Ki/oon Records

  • 初回限定盤 [CD+DVD] 3360円(税込)/ KSCL-1456~1457 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤 [CD] 3059円(税込) / KSCL-1458 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. P!
  2. Shout Aloud!
  3. Young OH! OH!
  4. 催眠術でGO
  5. Time Out
  6. Bero Bero
  7. Cleaning
  8. E.L.T.C.C.T.
  9. First Aid
  10. Fire Bison
  11. Eye Contact
  12. Beat Flash
  13. Speed Up
  14. Wasabi
DVD収録内容
  • Shout Aloud!
  • Young OH! OH!
  • ノーカット・ノンストップ収録! POLYSICSのレコーディング全貌6時間!
POLYSICS(ぽりしっくす)

メジャーデビュー10周年を迎えた、日本が世界に誇るニューウェイブ・ロックバンド。そのユニークなキャラクターと、ニューウェイブの真髄を自身のスタイルに昇華させたサウンドは海外からも熱烈な支持を受け、近年はUS & UKを中心にツアーを毎年大成功させている。ギター・ボイス・プログラミングのハヤシは、飛び道具的魅力を持ったDJとしても引っ張りだこ。