「PERSONA SUPER LIVE 2019」特集|ライブ総合演出小林鉄兵、サウンドプロデューサー目黒将司が語る「ペルソナ」音楽の魅力

企画書からインスピレーション

──フュージョンを1つのルーツとしつつも、「ペルソナ」では歌モノの楽曲を数多く手がけられている点は面白いですよね。

「PERSONA SUPER LIVE P-SOUND STREET 2019 ~Q番シアターへようこそ~」の様子。

中学時代にそれこそ中二病をこじらせまして(笑)。「歌謡曲とか歌モノの曲なんかは全然ダメだ」「フュージョンこそ渋くていいんだよ」みたいな感じになってたんですよね。でも大学に入った頃から急に歌モノのよさに目覚めて、一気に解禁。今度はそっちのほうでこじらせてしまう感じで。大学時代はおしゃれなポップスバンドをやったりしてましたね。

──何かの記事で読みましたけど、ピチカート・ファイヴにインンスパイアされて作った「ペルソナ」の曲があるとか。

あー、そうですね。まさにそんな感じのバンドをやっていましたから。そういう意味では、いわゆる渋谷系みたいなものも1つのルーツかもしれないです。とは言え、歌モノであってもメロディ自体はフュージョンチックだったりはするんですけどね。ちょっとスカした感じの、歌いにくいメロディっていう。

──「ペルソナ」の楽曲にはおしなべておしゃれな印象があったのですが、今のお話を聞いてすごく腑に落ちた気がします。

そういった路線になったのは「ペルソナ3」からなんですけど、その理由はユーザーインターフェースがめちゃくちゃおしゃれになったからなんですよ。最初にお話ししたように、僕はBGMもユーザーインターフェースと同じ立ち位置だと思っているので、そこに寄せたおしゃれなサウンド、かつ予想外の曲っていうのを意識して作るようになったっていう。今の「ペルソナ」の音楽は、あの時点ではかなり攻めていたユーザーインターフェースに呼ばれたってことなんだと思いますね。

──たくさんの楽曲を生み出すにあたって、日頃からさまざまな音楽をインプットされていたりもするんですか?

いや、音楽でのインプットはほぼないですね。気に入っているバンドの新譜が出ればもちろん聴きますけど、基本的にはカウントダウン形式の音楽番組なんかを観て、最近の流行を上辺だけさらう感じです。流行りばかりを追いかける必要はないと思うし、あまりいろんな音楽をじっくり聴いちゃうと、無意識のうちに似てしまう恐れがあるから(笑)。皆さんそうだと思いますけど、好きで聴いている音楽って、知らず知らずのうちに自分の作る曲に影響を与えるものだと思うから。

──音楽以外のインプットはあるんですか?

「PERSONA SUPER LIVE P-SOUND STREET 2019 ~Q番シアターへようこそ~」の様子。

そっちのほうが多いと思います。こんなおじさんですけどアニメもよく観ますし、もちろん映画も観るし、ゲームもちょいちょいやるんで、そういうところから刺激をもらったりしてますね。あと僕の場合、文章から曲が思い浮かぶことがけっこう多くて。ゲームの曲を作る際にも、動いているプレイ画面を観るよりは、内容を説明した企画書なんかを見たほうがインスピレーションが湧きやすいんです。ナタリーさんのインタビュー記事を読んでいて、その見出し1行から曲がひらめいたりすることもありますしね。

──ビジュアルのない文章のほうが、クリエイティブを挟み込む余地が多いからなんでしょうね。

まさにそうだと思います。イメージを狭められるのはちょっと苦手ですね。例えば、「こんな曲調でやってください」とか指示を出されたり、ご丁寧にイメージサンプルとしてほかの方の曲が添付されてたりとかね。「聴かねえよ、そんなの!」「だったらその人に頼みゃいいだろ!」って思っちゃいますから……ヤなヤツだな俺は(笑)。まあでもアトラスに関してはそんなことはないので、ありがたい環境でやらせていただいてるなとは思います。

隠し持った左パンチでカウンターを狙いに

──サウンドクリエイターとしての今後に関して、何かビジョンはありますか?

「PERSONA SUPER LIVE P-SOUND STREET 2019 ~Q番シアターへようこそ~」の様子。

アトラス内のサウンドチームには今、すごくいい作家がそろっているんですよ。実際、「ペルソナ」やほかのゲームでいい曲を書いている。だから彼らにがんがんスポットライトが当たり、有名になってほしいなって思うんです。チームとしての継続性を考えたうえでも、そろそろ目黒1人に集中しなくてもいいんじゃないかなっていう。

──なるほど。

チーム内にそういうライバル的な存在がたくさんいたほうが自分も燃えるじゃないですか。「くっそ、やられた」「いやでも俺のほうがいい曲書けるんだ!」みたいなことを学生時代のバンドでは思ったりしていたんで、その感覚を取り戻したいんだと思います。みんなで殴り合えたら、自分ももっと成長できるんじゃないかな……と、そんなことを先日の井上尚弥と(ノニト・)ドネアの試合を見て思ったわけですよ(笑)。

──11月7日のボクシングWBA世界バンタム級タイトルマッチですね(笑)。

すごく自分本位な考え方だとは思うけど、でもみんながいい曲を書いて有名になってくれたら、もっと面白くなるはずですからね。そして僕個人としても、引き続きユーザーさんの想像もつかないような右斜め上を狙った音楽を作り続けたいと思っています。まだ詳しくは言えないですけど、実際すごいのを仕込んだりしてますし。僕の隠し持った左パンチでカウンターを狙いにいきますから……あの試合に影響受けすぎですね(笑)。

──最後にライブBlu-ray「PERSONA SUPER LIVE P-SOUND STREET 2019 ~Q番シアターへようこそ~」の見どころについてひと言いただけますか。

「PERSONA SUPER LIVE P-SOUND STREET 2019 ~Q番シアターへようこそ~」の様子。

いろいろな要素が詰まっているライブなので、実際会場に足を運んでいただいた方も、また違った楽しみ方ができると思うんですよ。「今日はシンガーに注目してみよう」「今日はダンサーに注目しよう」みたいな感じで、何周も観ていただけたらありがたいですね。

──目黒さんだけに注目して観てもいいわけですし。

それは恥ずかしいなあ。でもね、最近周りのスタッフが「目黒さんはもうお年だから出番を抑えても」みたいなことを言っているらしいことが発覚してショックを受けてるんですよ(笑)。いやいや、目黒まだがんばりますから。大丈夫、俺まだやれるよ! とは言っておきたいですね(笑)。