「PERSONA SUPER LIVE 2019」特集|ライブ総合演出小林鉄兵、サウンドプロデューサー目黒将司が語る「ペルソナ」音楽の魅力

全世界で累計1000万本以上のセールスを誇るジュブナイルRPG「ペルソナ」シリーズ。その音楽を生で体験できるライブイベント「PERSONA SUPER LIVE P-SOUND STREET 2019 ~Q番シアターへようこそ~」のBlu-rayが11月27日にリリースされた。

4月24、25日に東京・両国国技館で開催されたライブの2日目の模様を中心に収めた本作。特典ディスクにはバックステージの様子や出演者および制作スタッフのコメンタリーをはじめ、日替わりで披露された楽曲が収録されることで、2日間の熱狂を余すことなく体感できる仕上がりとなっている。

今回音楽ナタリーでは、「ペルソナ」ライブに欠かせない2人の重要人物にインタビューを実施した。1人はシリーズのシナリオライターであり、2年前のライブから演出を手がけている小林鉄兵。そしてもう1人はシリーズの音楽を手がけるメインコンポーザーであり、ライブにはギタリストとしても参加している目黒将司だ。「ペルソナ」の音楽とライブ、それぞれに注がれている強いこだわりについて話を聞いていく。

取材・文 / もりひでゆき

ライブ総合演出 / プロデューサー・小林鉄兵 インタビュー

小林鉄兵(コバヤシテッペイ)
小林鉄兵
株式会社アトラス所属「ペルソナチーム」のプロデューサー&シナリオライター。2008年発売のゲーム「ペルソナ4」のシリーズ作品よりシナリオライターとして参加。2017年8月に開催された音楽イベント「PERSONA SUPER LIVE P-SOUND BONB!!!! 2017 ~港の犯行を目撃せよ!~」から「ペルソナ」ライブシリーズの総合演出も担当している。

楽しいものを作れば喜んでもらえると信じた

──もともと「ペルソナ」シリーズのシナリオライターをされていた小林さんがライブ演出にも携わるようになったのはどうしてだったんですか?

「PERSONA SUPER LIVE P-SOUND STREET 2019 ~Q番シアターへようこそ~」の様子。

僕は以前、イベントや舞台の演出をしていたことがあって。その経験を生かせると思ったので弊社でも「ライブの演出をやらせてください」と自らお願いしたんです。と言うのも、「ペルソナ」はゲームソフトなのにバンドサウンドを使ったり、いろいろ面白いことをやっていて、音楽面に関してもものすごくポテンシャルを感じていたんですね。「ペルソナ」のライブは関わる以前から、開発者として普通に観に行っていました。

──実際に小林さんが関わるようになったのは2017年に横浜アリーナで開催された「PERSONA SUPER LIVE P-SOUND BONB!!!! 2017 ~港の犯行を目撃せよ!~」からでしたね。

はい。実は2008年にスタートした「ペルソナ」ライブに対して、継続するか否かを精査される機会があったんです。僕はやめるのは絶対もったいないと思っていた1人で、2017年のライブを開催するにあたって、ゲーム作品を拡張するライブとして絶対に成功させるので演出を担当させてくださいと。それで、2017年から関わるようになりました。

──面白いライブにする自信があったわけですね。

ありました。自分の実力に対する自信というよりは、楽しいものを作れば絶対に喜んでもらえるはずだという確信だったかもしれないです。実際のところの勝算はわからないけど、安全策だけ取っていればしぼんでいくだけ。チャレンジしなければ新しいものは生まれないですからね。それに僕は「ペルソナ」というコンテンツ自体が音楽を含めて大好きで、そこに可能性も感じていましたから。

ゼロからの創造で全員がパニック

──小林さんが関わるようになって「ペルソナ」ライブはかなり変化しましたよね。

「PERSONA SUPER LIVE P-SOUND STREET 2019 ~Q番シアターへようこそ~」の様子。

大きく変わりましたね。以前はゲームの中で聴いた音楽を純粋に追体験するライブでした。それはそれで楽しいけど、僕はゲームの世界を現実に拡張する、新たな展開を持ったコンテンツにしてみたんです。ただ、最初はものすごく大変でした。僕の中に明確なイメージがあってもすべて伝えきれるわけではないし、説明してもいまいち伝わりきらないというか(笑)。公演の当日まで、誰もどうなるかわからない状態だったと思いますね。でもライブが終わってみれば「小林鉄兵が作ろうとしていたのはこういうものだったのね」と皆さんに言ってもらえましたし、ありがたいことにお客様にもご好評いただけたのでよかったなと。そこで完全燃焼してしまったので、「次は2019年にやります」って言われたときは、「え……もう何もないんだけど」みたいな感じでした(笑)。

──とは言え、今年開催された「PERSONA SUPER LIVE P-SOUND STREET 2019 ~Q番シアターへようこそ~」では、2017年のときとはひと味違う新たなエンタテインメントを創り上げられていて。

2017年のライブは、「ゲームの世界が現実に現れた」みたいな作りをしたんです。そこで好評をいただけたので、2019年も同じ流れでやってもよかったんですよね。でもそうしたくなかった。何も考えずに過去のものを量産するのではなく、内容に関しても「こんなのもありますけど、どうですか?」というふうに、多様化した楽しさをユーザーさんに届けて、その中で「これが好き」を選んでもらえるほうがいいと。そういう意味ではまたゼロからの創造になったので、僕も含め再び全員がパニックだったと思いますね(笑)。

「PERSONA SUPER LIVE P-SOUND STREET 2019 ~Q番シアターへようこそ~」の様子。

──今回は“映画”を1つの大きなテーマとしつつ、より音楽的要素を強めたライブになっていた印象ですよね。

僕が今回強く意識したのは、バンドさんをしっかりフィーチャーすること。単なるバックバンドになるのではなく、その存在を全面的に感じてもらいたいと思っていました。直前に出た「PQ2(ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス)」が映画をモチーフにしたゲームだったので、舞台をそれに準じた設定にして、映画にはいろいろなジャンルがあるので、それを音楽で表現するために既存の曲をかなり大きくリミックス、アレンジしてもらった感じですね。

──ビッグバンドを盛り込んだのも、そういった理由からですか?

ビッグバンドは単純に僕が好きだから(笑)。まあでも、「ペルソナ」が好きで観に来てくれたお客様に、いろいろな種類の音楽やアレンジを聴いてもらいたいという気持ちはありましたね。ビッグバンドをはじめ、タップダンスやフラメンコみたいな要素を入れたのはそういった理由からでもあります。

「PERSONA SUPER LIVE P-SOUND STREET 2019 ~Q番シアターへようこそ~」の様子。

──映画のジャンルに紐付いたさまざまなシーンに合わせて、ゲーム内で聴いていた曲がガラッと雰囲気を変えているのが楽しいですよね。

ゲームの追体験という意味でのライブでは通常、そんなにアレンジメントってしないものなんですよ。でも今回はほぼ全曲にわたって大きめのアレンジを加えてもらいました。それは意欲的なチャレンジでしたね。

──ただ、どこまでアレンジするかのバランスはけっこう難しそうだなと。やりすぎると「こんなのペルソナじゃない!」と言われてしまう恐れもあるわけじゃないですか。

そうですね。原曲のイメージを崩しすぎず、なおかつチャレンジングなアレンジにするというバランスについてはバンマスの小林哲也さんと綿密に話し合いましたし、リテイクも山ほど出しました。