サウンドプロデューサー・目黒将司 インタビュー
- 目黒将司(メグロショウジ)
- 株式会社アトラス所属のサウンドクリエイター。1996年発売のゲーム「女神異聞録ペルソナ」から「ペルソナ」シリーズの楽曲制作に参加。2008年からはギタリストとしてペルソナライブにも出演している。
もっとひっそり弾いていたかった
──4月に開催された「PERSONA SUPER LIVE P-SOUND STREET 2019 ~Q番シアターへようこそ~」は、振り返るとどんなライブでしたか?
「ペルソナ」ライブは毎回いろいろ趣向を凝らしていますけど、今回は演出がよくまとまっていましたね。ダンスゲームである「P3D(ペルソナ3 ダンシング・ムーンナイト)」「P5D(ペルソナ5 ダンシング・スターナイト)」や、映画をテーマにしたゲーム「PQ2(ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス)」に引っ張られる感じで、視覚的に楽しませる部分がすごくよかったと思います。曲数的にはちょっとやりすぎかなと思ったりもしましたけど(笑)、まあそれは次回にまたブラッシュアップできる余地が残せたということで。
──2008年の「ペルソナ」ライブスタート時から、目黒さんはギタリストとして参加されていますね。
もともとはね、バンドの端っこで演奏していて、「あの人最初から最後までいたけど、目黒だったんだ!」くらいのスタンスがカッコいいよなと思っていたんですよ。そんなにスポットライトを浴びることなく。
──実際はギターソロのたびに大歓声が巻き起こり、“目黒大明神”として崇められているわけですが(笑)。
もっとひっそり弾いていたかったから、そこに関しては本意ではないんですけどねえ。まあでも、大明神なんて言ってもらえるのは非常にありがたいことでもあるので、最近は目立つところはがんばって目立ってやろうという気持ちにはなっています(笑)。
──今年のライブはガラッとアレンジを変えた楽曲ばかりでしたよね。
そうですね。なかなか自分ではやらないようなアレンジが多かったので新鮮でした。ライブのアレンジに関してはわりとまかせている部分が多いので客観的に楽しめる感じなのですが、もうちょっと僕も噛んでやってもよかったなって思ったりもして。そこも次回への課題ですね。
──「ペルソナ」の多彩な楽曲群はゲームファンから非常に愛されています。サウンドをクリエイトするうえで、どんなことにこだわられていますか?
お客さんの予想の斜め上を行って、驚きを与えられるようなものを提供したいっていうことは常に考えていますね。最初は「こんな曲、ゲームに合わないんじゃないの?」って感じたとしても、それを何度も聴いていると「あ、そういうことだったのね」「ちゃんとマッチしてるね」と思えてくるような曲というか。そういうところはけっこうこだわってます。そのスタンスは僕が作るすべての曲に共通しているので、「ペルソナ」の音楽だからこうしようみたいなことはそれほど考えてはいないんですよね。
──作品世界にしっかり寄せていくことを強く意識しているわけではないと。
そうですね。ゲームのBGMって、ユーザーインターフェースなんかと同じ立ち位置だと思うんですよ。要はキャラクターを含めたゲームの世界観とプレイヤーをつなぐ役割。だから「ペルソナ」の中にあるべき音楽ではなく、外から「ペルソナ」を紹介するものであってもいいわけなので、完全にゲームの世界に合わせる必要はないのかなと。その匙加減は考えないといけませんが、むしろ冒険することを許容されているとも思うので、どこまで自分の中のリミッターを外して驚きを与えられるかを僕は第一に考えますね。
中高はガチガチにフュージョン
──サウンドに関しては、ご自身のルーツが反映されていると感じる部分もありますか?
あると思います。と言うよりも、なるべく自分のルーツにないものはやらないようにしていますね。劇伴的な音楽の場合、作品世界に合わせて、例えばアジアンテイストみたいなものを求められることもあるんですよ。でも僕はやらない。それは自分のルーツにアジアっぽい音楽がまったくないから。そこを付け焼刃でやったりすると、それを本格的にやられている方に失礼なんじゃないかなと思ってしまうので。基本は自分のルーツ、自分の中の引き出しにあるもので作ってはいますね。
──開発サイドからアジアンテイストの楽曲を求められてもあえてそこに寄せすぎない音楽がゲーム内に付くことでユーザーはいい意味での意外性を感じるでしょうしね。
そうそう。そこが驚きにもつながると思うので、僕としては助かるっていう(笑)。
──ちなみに目黒さんはどんな音楽を聴いてきたんですか?
小さい頃はクラシック。中学、高校はフュージョンをガチガチに聴いてました。ロックやらヘビーメタルやらは、それほど通ってきたわけじゃないんですよ。だから、先ほどの話とはちょっと矛盾するかもしれないけど、そこは自分のオリジナリティとして、“俺ロック”“俺ヘビーメタル”みたいな感じで作ったりはしてますね。
──ブラックミュージックはどうですか?
ほとんど通ってないです。ただ、1970年代の有名な曲なんかは中学生くらいの時期になんとなく聴いていたとは思うし、昔の日本の歌謡曲を通して自然と体の中に入っているところがあるのかもしれないですね。
──昔の歌謡曲にはさりげなく黒い要素が盛り込まれていたりしますからね。
筒美京平さんとか、同じ業界で言えばすぎやまこういち先生を僕はリスペクトしているんですけど、ああいった方々はそのへんをすごくうまく盛り込まれていますよね。そこが僕のようなハッタリ人間とは違うところです(笑)。
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