会場では味わえなかった部分が味わえる
──両国国技館という会場の特性を生かした360°のステージングも素晴らしかったと思います。
僕はお客様に千差万別の体験をしてもらえるのも、ライブの存在価値だと思っていて。そういう意味では360°のステージはやりがいがありましたね。「私はここが楽しかった」「え、そっち側ではそんなことが起きてたんだ?」みたいな感じで、どこを見てもらっても楽しいという作り方ができるので。まあ、だからこそ大変なんですけど(笑)。東西南北で4面作ったんですけど、それって要は4つの舞台を作ってるのと同じなわけですから。シンガーさんやダンサーさんも出はけや移動が大変でしたががんばっていただきました。
──ステージ上にはライブタイトルにちなんだ信号や標識がセットとして組まれていて、まさに“STREET”な雰囲気でした。
2017年のライブで弾けた“BOMB”によって“STREET”ができたというライブ全体でのつながり、ストーリーみたいなものを作りたかったんです。だから前回の最後のアップテンポ曲だった「Life Will Change」を今回の1曲目に持ってきました。セットに関しては原作ゲームのデザインを手がけている弊社の第一人者である須藤にデザインしてもらうことで、「あ、ここは『ペルソナ』の世界なんだな」ということがパッと見てわかるものにしてもらいましたね。視界の邪魔にならず、でも存在感がしっかりあるようなもので、信号なんかは照明としてもちゃんと機能しているっていう。
──今年のライブがBlu-rayとしてリリースされましたが、小林さん的に見どころを挙げるとすると?
僕らのライブは、会場に足を運んでいただいたからこそ味わえる体験を詰め込んだものになっています。でもそれが映像になることで、会場では見えなかった部分を楽しんでいただくことができると思うんですよね。「あっちの席から見るとステージはこうなってたんだ」とか、「反対側ではこんなパフォーマンスが繰り広げられていたんだ」っていう、会場では味わえなかった部分が味わえる。そういう楽しみ方をして、ライブを網羅してもらえたらうれしいですね。
──逆にBlu-rayで「ペルソナ」ライブに興味を持った人が実際に会場へ足を運べば、そこには生でしか味わえない体験が待っているということでもありますしね。
そうですね。ぜひそういうきっかけにもなってもらえたらいいですね。
──3時間を超えるライブですけど、息つく暇なく楽しいシーンが展開していくからあっという間に終わってしまいます。
実はライブの尺については僕から指定させてもらっています。もちろん、いっぱい曲を聴いてもらいたいというのはあるんですが、人間には何かを見ているときに、目の筋肉がマヒしてくる時間帯や、アドレナリンが出て最高に楽しめる時間みたいなものがあります。そんな人間科学も意識して、ライブ全体が一番効果的になるように考えているんです。それに加えて、お客様の集中力が続き、元気に帰ってもらえることを考えると、3時間くらいになるっていう。そこはまあ技術論もありますけどね。
──そこまで考え、こだわりを注いで作られているのが「ペルソナ」ライブだということですね。ここ最近は2年ごとの開催が定番になっていますが。
渋谷のクラブを借り切った小規模のオールナイトイベントは2018年に開催しましたけど、大きな会場でのライブは2年ごとになっていますね。それぐらい間があかないと僕らがもう死んでしまうので(笑)。
やりたいことはまだまだ山ほどある
──今後に関して何か展望はありますか?
あくまで「ペルソナ」というゲームが持つ世界を拡張するためのライブなので、まずはゲーム自体でいい体験をお届けすることに重きを置くべきだというのは常々考えています。その上でライブに関しては、しっかりとライブとして実施する価値があるもの、「ペルソナ」世界を拡大させるために必要なもの、そういったものを無理のない最良のタイミングで届けるべきかなと。そうすることが一番お客様の喜びにつながると思うので。「ペルソナ」の世界が現実の“どこか”に存在し続けているような展開を今後もいろいろ考えていきたいと思っていますので、ぜひ応援してもらえるとうれしいです。
──ライブでやりたいこと、やれそうなことはまだまだ尽きないですか?
そうですね。それはゲームとの相互作用で増えていくものでもあるので、まだまだ山ほどありますよ(笑)。
──ちなみにライブ演出をするようになったことがシナリオライターとしての小林さんに影響を与えた部分もありますか?
シナリオに関しては特に影響はないように思いますけど、僕は今、役職がプロデューサーになったんですよ。ライブを手がけるようになったことが、そのきっかけになったかもしれない。これまではシナリオで世界観の創造の部分を担っていたわけですけど、ライブを演出するようになってからはお客様の反応をじかに見る機会も多くなりましたし、コンテンツ自体の展開や連結についても考えるようになった。要は以前に比べてグッと引いた目線で全体を見るようになったので、それがプロデューサーという立場につながったんだろうなと。とは言え、裏方であることは変わらないですけどね。ありがたいことにこうやってインタビューを受けさせていただいたりしてますけど、それはあくまでも作品のためでしかないので。プロデューサーとしての本来の意味を間違えないようにはしないと。
──ライブのラストに、美女に挟まれて登場したりはしないってことですよね。ファッションショーのデザイナーのように。
あははは(笑)。それがライブにとって必要であればやりますけど、自分が目立ちたいからということだとまったく意味がないので。今後もあくまで裏方として、皆さんに喜んでいただけるものを作れるようがんばります。
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サウンドプロデューサー・目黒将司インタビュー