Perfumeロングインタビュー|ここにきて近付いた中田ヤスタカとの関係と、制作体制の変化が生み出した「ポリゴンウェイヴEP」

有機物がすべてビットでできている砂漠の世界

──そうして今回の収録曲に選ばれた「∞ループ」と「アンドロイド&」は、どちらも「ポリゴンウェイヴ」の世界観と通じているように感じました。

のっち どっちもすっごい好きです。機械っぽさがない、おしゃれで軽やかな曲調なのに、「∞ループ」では時間がループする世界に生きているちょっと怖い感じ、「アンドロイド&」ではアンドロイドとの恋みたいなことを歌ってて。

あ~ちゃん

あ~ちゃん 中田さんから歌詞の意味を聞いたよね。「アンドロイド&」の主人公は実は、自分のことを完全に人間だと思い込んでいるアンドロイドだって。だから曲名は「&」で終わってるけど、「アンドロイド&ヒューマン」みたいなイメージなんだって。面白いですよね。

かしゆか でも私たち「∞ループ」も「アンドロイド&」も、収録曲が発表されるまでタイトルを知らなかったんですよ(笑)。レコーディングのときに「ループ」「アンドロイド」って言ってたからそれが曲名だと思ってたら、情報解禁されてニュース記事を読んだら違うことが書いてあって。「この“&”って、もしかしてタイプミスなんだろうか……?」と思って「これ大丈夫ですか?」って念のため連絡したんですよ。そしたら「中田さんからは“アンドロイドアンド”と読むと聞いてます。もう1曲は“ムゲンループ”と読みます」って教えてもらって(笑)。

のっち 「アンドロイド&」の歌詞って、なんかすごい俯瞰で世界を見ていて、ちょっと辛辣だよね(笑)。ストーリーがハッキリしている歌だから、これを原作にお話を作ってほしい。

あ~ちゃん CGを描くの大変そう(笑)。

かしゆか でもモーションは今まで私たちが取ってきたデータで賄えるかも(笑)。このEPって、中田さんの中でトータルで思い描いてた世界があったんだろうなって感じますよね。全体を通して映画みたいな表現をしようっていう。

──そうですね。「∞ループ」で1日の最後に再起動を繰り返す世界を描いて、同じ作品のラストに“再起動”を意味する「システムリブート」という曲が収録されるって、すごくコンセプチュアルな構成だなと思いました。

かしゆか 中田さんはこのEPのイメージについて「すごくきれいな砂漠が広がってるんだけど、そこに生えている木とか、有機物がすべてビットでできてる。そういう違和感がある世界」みたいなことを言ってましたね。

田中裕介監督お得意の「うわ、めっちゃ怖っ!」で終わるやつ

──「ポリゴンウェイヴ」はダンスプラクティスビデオも作られましたよね。振り付けにフォーカスしたビデオを撮るのはPerfumeとしては初めてでしたが、細かい部分まで体の動きが観られる映像は需要があったみたいで、反響は大きかったようです。

のっち うれしい(笑)。スニーカーで踊ることもなかなかないので、撮ってて楽しかったです。

あ~ちゃん 音楽番組に出るときは必ず、テレビで歌う用の短い尺で踊っているビデオを撮ってテレビ局に提出するんですよ。そういう映像は外には出せないんだけど、ダンスプラクティスビデオの雰囲気はそれに近い感じですね。ヒールを履いて踊るのって大変だから、スニーカーってだけで本当に楽だし、スカートだとちょっと気になる動きもズボンだと何も気にしなくていいから、ワイルドに体を動かせてすごく楽しかった。

──この曲はミュージックビデオも制作中とのことですが、MVにもダンスシーンはたっぷりあるんですか?

のっち 基本的にはダンスビデオみたいな感じになってますね。

かしゆか でも撮ったばかりだから、まだ観てないんですよ(笑)。

あ~ちゃん 世界観がハッキリしてるビデオなので、きっとこれを観れば「この曲はこう聴くんだ」っていうのもわかると思います。MVの中では3人でドライブしてるんですけど、途中で「えっ? これってリアルなの? バーチャルなの?」ってなるという。田中裕介監督お得意の「うわ、めっちゃ怖っ!」で終わるやつです(笑)。撮影中は爆踊りして足が棒になっちゃって。

──振り付けがかなり複雑ですしね。過去の曲の振りをコラージュのようにちりばめつつ、今の3人のスキルでアップデートした、これまでのPerfumeの集大成のようなダンスで。

あ~ちゃん えっ! そうなの?

──てっきり意識的にやっているんだと思っていたんですが、そういうわけではない?

のっち 全っ然意識してなかったです。正直「やったことない動きばっかりだ」くらいに思ってたんですけど(笑)。

かしゆか 振り付けされているときは「新しい曲の新しい振り」と思って受け取っていたから、特に何も感じてなかったです。MIKIKO先生とはいつも動きの解釈について「これは何を表現してる」みたいな意思疎通を取ってるんですけど、そのときもそういうメッセージは話してなかったですね。

あ~ちゃん 曲のアレンジにいろんな昔のテイストが入ってるのは思いました。「後ろで鳴ってる音、『ポリリズム』でも使ってたやつだ! 懐かしい!」とか。

──それで言えば、今回新たに収録された「ポリゴンウェイヴ(Remix)」は、これまでのPerfumeのいろいろな曲を思い出させる音色やフレーズが次々に飛び出してきて、とても面白いリミックスだなと思いました。

あ~ちゃん それは中田さんは計画的にやってると思いますよー。というか、そんなこと言ってましたね。

──ああ、本人が言っていたんですね。最先端の演出でPerfumeを再構築するコンセプトライブ「Reframe」のように、1曲の中でPerfumeの歴史を再構築した、言わば中田さんなりの「Reframe」みたいなものかな、と思いながら聴いてました。

あ~ちゃん うんうん。長くやっているとこういうのを作ってもらえるんだな。

──リミックスって「こういう解釈もアリかも」みたいな、普段のアーティストの雰囲気と変えた仕上がりになることも多いですが、これはリミックスしたことでPerfumeらしさがより濃厚になったというか。

のっち うん、もっと変なことするのかなって思ってたけど、聴いてみたらめちゃめちゃPerfumeっぽかった(笑)。