“受け入れ”と“あきらめ”
──TakeuchiさんとItoさんから見ると、この2年間のDeuさんについて、あるいはDeuさんと自分との関係性をどのように感じてきましたか?
Takeuchi 歌詞で言うと、内面をさらけ出したというか……もともとさらけ出してはいたんだけど、それを暗さと寂しさをより尖らせた表現でするようになったと思います。これは僕が受け手として思っただけのことなんですけど、この「星巡り、君に金星」というアルバムは、Deuくんにとってすごくパーソナルな1枚になっている気がするんですよね。
──わかります。
Takeuchi あと、監督みが増したというか。僕や、ほかのみんなにとってもそうだと思うけど、手綱でピシッと叩いてこなくなった(笑)。半分はあきらめられているような感覚がある。あきらめることと受け入れることが、だいぶ近い場所にあるというか。
Deu ははは。
Takeuchi でも、それは悪いことではなくて。Deuくんがそうなるなら、僕は僕でいい方向に行けるように、自分の足で彼の想像の外を歩き続けないといけない。そうでないと、この先ついていくことはできないだろうなという感覚があって。要はリードがなくなった。それが、僕が一番思うことですね。
Ito 僕は、歌詞の面ではそこまで大きな変化は感じないんですよね。多くのアーティストが、曲が増えたり聴く人が増えたりしていくうちに少しずつ歌詞のテイストが変わっていくのかなと個人的には思うんですけど、Deuさんの歌詞はいつ読んでも「Deuさんが書いているな」と思う。今回のアルバムも、「銃の部品」から最後の「鈴々」までそう思います。そういうところは好きですね。あとバンドとしてということで言うと、より大きく前に進んで行くためには、中心にいる1人ではどうしようもないこともあるし、あきらめという言い方はよくないかもしれないけど、1人がある部分にフォーカスして、ほかの誰かが違う方向を見ることで進んで行けることはあると思うんです。そこに対しての覚悟というか……Deuさんの中で決めたことがきっとあったんだろうと思いました。僕自身、この2年間で何かを捨て何かを選んでいった先で、嫌なことも恥ずかしいこともあって。そういうことはきっと、DeuさんにもTakeuchiさんにもあったと思うし、そういう意味では、PEOPLE 1が進んでいく中で、僕ら3人にも感情の変化はあったんだと思います。
──今お話ししていただいたようなことを、3人で話し合うタイミングなどはあったんですか?
Takeuchi 「方向性について」みたいなことですよね。ないよね?
Ito ないっちゃ、ない。
Deu たまに俺がそういうことをペロッと言ったりはするけどね。
Takeuchi うん。でも、場を設けて話し合うことはないです。
──雑談の中で出てくる感じですか。
Ito そうですね。あと、Deuさんの中にいろんな考えはあるでしょうけど、僕とTakeuchiさんも頑固なので(笑)。ゆずれない部分は持ち合わせているんですよ。
Deu それはそう。本当にそう。
Ito だからこそ、「じゃあ好きにしていいよ」とDeuさんに思われていることも、伝わります(笑)。
Takeuchi 俺も頑固?
Ito 頑固というか、「ゆずりたくないものはあるんだろうな」って。
Deu 2人とも別の種類の頑固さだよ。
Takeuchi そっか。俺、頑固か……。
Ito なんでショック受けてるんですか(笑)。
──(笑)。Deuさんから見て、この2年間のItoさんとTakeuchiさんはどうですか?
Deu めちゃくちゃ変わったと思いますよ。マジで頑固だし。それぞれ個性が爆発するようになったと思う。まあでも、大学時代から個性は爆発していたんですけどね。それがよりアーティスト性を帯びて、世の中に表出している感じがする。
「1回、余計なことを考えず怒ってみよう」
──各々が人間性や頑固さ、ロマンを持った状態で、世に出て、人に何かを伝えていく……そういう強さを、僕はこの2年の間にPEOPLE 1のライブを観たりしても強く感じていて。運命を受け入れている、というか。
Deu ああ、確かに。それで言うと、2人はアーティストとして前向きになってきたかもしれない。「前に行こう」という意志をすごく感じる。さっきTakeuchiも言っていたけど、この2年間で、俺はより暗くて寂しい人間になっていっているんですよ(笑)。でも、2人は前を向いていく覚悟がより出てきている。変化としては、そこが俺とは違うんじゃないかな。同じ環境にいて、違う変化がこの3人には起こったんだと思う。
Takeuchi それはいいことなの?
Deu ライブをやって、楽曲を出していく。そこに使命というか、やらなきゃいけない気持ちがあって。その中で、必然的な変化をしているんだと思う。俺は俺で、ただ意固地になりすぎているだけだと思うけどね。
──Deuさんは自分自身で、「自分は、より暗くて寂しい人間になった」と思いますか?
Deu 思いますね。「俺って、マジで人と違うんだな。この世界でおかしいのは俺のほうなんだ」と。今まで怒りのエネルギーで曲を作ることはなかったけど、「1回、余計なことを考えず怒ってみよう」と思って。それで作り始めたのが「銃の部品」なんです。アルバムの1曲目の「PEOPLE SAVE THE MACHINE」も「どうして世界はこうなの?」ということを描いていて。今回のアルバムは、そういう怒りの落としどころを探す作品になったと思うんですよね。その中で「いや、おかしいのは俺だ」と思った。自分自身に対して「怒っているけど、おかしいのは、お前だ。お前がいなけりゃ、別に何も起こらないんだ」って。
──アルバムの中盤、8曲目「GOLD」や9曲目「closer」に至る部分で、僕は少なからず温かさを感じるんですけどね。例えば「GOLD」だったら肉体や体温、「closer」だったら感情や「感じる」ことそのもの、そういう人間に最終的に残されたものが描かれている感覚があるなと思います。
Deu 「GOLD」は「王様ランキング 勇気の宝箱」に提供した曲で、提供曲に関しては、エゴが前面に出すぎないようにしたいんです。それは、作家の矜持として。なので「王様ランキング」に合う曲にしようと考えた結果、優しい歌になったんだと思うんですけど。うーん……僕は正直「GOLD」も「closer」も明るい曲だとは思わないんですよね。むしろ、一番暗いし、事実を言っている曲だと思う。「GOLD」は、「何ひとつとして信頼できるものなんてない」という事実を明確に述べている曲だと思うから。
PEOPLE 1にできることとは?
──「closer」はノンタイアップで出たシングルでしたけど、この曲にはどのようなものが込められていると思いますか?
Deu 「closer」はこのアルバムの転換点にある曲だと思うんですけど、悩んでいる曲ですね。一番暗いと思う。完全にあきらめる1歩手前みたいな。
──もちろん「明るい」という表現は似合わない曲たちではあると思います。ただ、あまり歌になることのない事実や、あきらめる1歩手前の人間の状態が刻まれた音楽が生まれるということ自体に、僕は確かに表現としての豊かさを感じるんですよね。「PEOPLE 1に何ができるだろう?」ということに向き合った季節にこれらの楽曲が生まれたという点を考えたとき、Deuさんは、PEOPLE 1には何ができると思ったんでしょうか。
Deu PEOPLE 1にできることはいっぱいあると思います。フォーマットもしっかりしているし、俺に限らず全員、血反吐を吐いてやっているから。できることはいっぱいあると思う。できないことは……「俺の本心が思うようになること」ができない。俺が望むことだけができない。そういう感じ(笑)。
Ito そうっすね。
──Itoさんは今のDeuさんの言葉に納得しますか?
Ito そうですね。彼の想像通りにはなっていないんだろうなと思う。そういうことの連続が彼の悩みにもなっているでしょうし。でも、PEOPLE 1は3人でやっていることだし、ライブではサポートも含めて5人になるし、それ以外にもいろんな人の考えや努力があって、今の形になっているわけで。想像通りにならないことは当たり前っちゃ当たり前のことなので、それをDeuさんも感じながら、「じゃあ、その前提で何ができるんだろう?」と考えている気がします。僕は僕で自分を出していくしかないし、悪い方向に行かないように、自分は自分なりの何かを持っていないとダメかもしれない。「closer」をレコーディングしている頃は特にそういうことを考えていたと思います。「closer」は、PEOPLE 1の活動のことや、いろんなことを含めて書かれた歌詞だと思ったし、「Deuさん、こういうことを考えて書いたんだろうな」ということがすごくわかったんです。僕もこの歌詞は、すごく暗いと思ったんですよね。内面を歌った歌詞だと思った。
Deu そうだね。
Ito だからこそ、特にサビは「本当に『なんとかなるって伝えたいんだ』と思っている人になろう」と考えて歌いました。本当に「伝わってほしい」と思っている人を演じようと。「GOLD」もそうでしたね。書いている人がそういう心情である以上、「歌っている人が本気でこう思ったらどう表現するだろう?」と考えました。「GOLD」と「closer」は確かに、そういう2曲だった。ただ同時に、汲み取りすぎるとあまりにもダークな曲になってしまう気もしたので、自分勝手に和らげた部分もあるんですけど。
──何かをギリギリで踏みとどまったところが、僕が感じた「GOLD」と「closer」の温かさかもしれないです。
Deu 「本当に伝えたい」と思っていること自体が優しいというか。“優しさ”とは、「優しくしようとしていること」なのかもしれないですね。
次のページ »
「俺はもう駄目だけど、みんなは幸せになってくれ」