PEOPLE 1アルバム「星巡り、君に金星」インタビュー|さまざまな変化を経て、たどり着いたその先に

PEOPLE 1が2ndアルバム「星巡り、君に金星」をリリースした。

1stアルバム「PEOPLE」リリースから2年。さまざまなタイアップ起用やメジャーデビューなどを経て、バンドとしての規模が着々と大きくなっていく中でリリースされた本作には、PEOPLE 1というバンドのリアルな姿が生々しく刻み込まれている。彼らにとってこの2年はどういう期間だったのか? バンドとしてさまざまな変化を強いられる中、中心人物Deuは果たして何を思うのか? 3人へのインタビューを通して、PEOPLE 1というバンドが抱える実情を浮き彫りにしていく。

取材・文 / 天野史彬撮影 / 入江達也

3人にとっての2年間

──約2年ぶりのフルアルバムとなる2ndアルバム「星巡り、君に金星」、聴かせていただきました。2曲目「銃の部品」から10曲目「ドキドキする」にかけてシングル曲たちがリリース順に配置されている構成を見ても、この2年間にPEOPLE 1に流れていた時間、そこで起こった変化がリアルにパッケージングされたアルバムだと思いました。アルバムとしてまとめていくにあたり、考えていたことはありますか?

Deu(Vo, G, B, Other) とりあえず「前作に入っていそうな曲はいらないな」と思いました。あと、今回は「銃の部品」がけっこう鍵というか。「銃の部品」を出すタイミング(2022年4月)で顔出しをすると決めていたし、前作を出した時点で禊が終わったというか(笑)、1stアルバムリリースというロックバンドとして大事なタイミングを越えて、よりリミッターを外していかなきゃなと思って作った曲でもあるので。「銃の部品」で自分のリミッターを外して作った部分を回収したアルバムみたいな感覚ですね。自分の中にある「風呂敷を畳みにいく2年間だったな」という感覚が、このアルバムには出ているのかなと思います。

──この2年間は、皆さんそれぞれにとってどのような期間だったと言えますか?

Takeuchi(Dr) この2年間でツアーを5本やったんです。ツアーを重ねるごとに会場の規模も、我々の知名度も、お客さんの熱量も上げていきたいと思ったし、そのために自分の技術や覚悟を磨いてきた2年間だったという感覚はあって。なので、こうして並んだアルバムの曲目を見ていると、そのときそのときのことが浮かぶんですよね。「この曲はこういう流れで生まれたな」とか。この曲たちとともにあった我々の2年間だったので。もちろん先頭に立って走ってくれていたのはDeuくんですけど、「僕もなかなか走ることができたのではないか?」と思います。でも、こうやって2年前を振り返ると大昔のことのように感じますね(笑)。

Takeuchi(Dr)

Takeuchi(Dr)

──Itoさんはどうですか?

Ito(Vo, G) 僕は、この2年間で一番わかりやすい変化があったんじゃないかと思います。まず、2年前に初めて取材していただいたとき、僕はまだサラリーマンとして働いていたし、オブラートに包みながら「僕にとってPEOPLE 1の活動はパラレルワールドだ」というふうに話していたんです。

──そうでしたね。

Ito でも、この2年の間に自分がやっていることを公言できるようになり、ほっとした気持ちもあります。「銃の部品」はミュージックビデオで自分たちの正体をさらしたというのもあって、PEOPLE 1にとっても僕自身にとっても大きな区切りだったように感じていて。そこから、改めてこのアルバムを聴き返してみると……いろいろなチャンスや機会があった2年間だったなと。「YOUNG TOWN」は自分の声がメインになった曲でのタイアップだったし、「DOGLAND」が出たタイミングで僕は会社を辞めたので、この2曲は僕にとって大きな分岐点だったと思う。あと、「PEOPLE」を作ったときもそうでしたけど、今回もレコーディングは悩みましたね。正解があるようなものではないと思うんですけど、例えば「ドキドキする」のレコーディングのときは精神を崩壊するくらい悩んでしまって。悔しくて涙が止まらなかった。録り終えて、ミックスしてマスタリングして完成したときには「ああ、よかったな」と思えたんですけど。

──「PEOPLE」と今回のアルバムで、制作時の苦労を比べてみると、そこに質の違いのようなものはありますか?

Ito 「いいものにしたい」というハードルが、前回よりもいい意味で上がったんですよね。その中で、「自分の色を出しているだけでは飽きられてしまうのでは?」という恐怖と「自分が自分でなくなるとつまらないな」という気持ちがある。そういう矛盾みたいなものも生まれてきて。僕の声を「いい」と思ってくれる人がいるのであれば自分をなくすべきではないけど、毎回同じだと飽きられてしまうとも思うので、歌い方や熱の込め方についてはより考えるようになったと思います。それに、歌詞の意味と曲調、Deuさんが本当に伝えたいメッセージ……そういうことを考えていくと、歌い方の答えが何通りも自分の中に浮かんでくる。歌詞に書かれているけど、Deuさんにとっても抽象的な思いもあるだろうし。それを汲み取ることの難しさにより向き合った2年間だったと思います。「歌詞が持つメッセージが伝わってほしい」という思いは、「PEOPLE」のときよりも強くなったと思います。

Ito(Vo, G)

Ito(Vo, G)

PEOPLE 1はあらゆるものへのアンチテーゼの集合体

──Deuさんは、この2年間はどのような期間だったと思いますか?

Deu この2年間が特別どうこうとは思わないです。PEOPLE 1を始めたときからずっと何かをゆるめたことはなかったし、普通にずっと大変みたいな(笑)。

──でも、「PEOPLE」をリリースした頃と比べて、ご自身で変化を感じられる部分もあるのではないですか?

Deu そうっすね。いろいろ変化したんじゃないですか? このタームの特徴として、「PEOPLE 1に何ができるだろう?」とは考えたかもしれないです。PEOPLE 1にできること、PEOPLE 1にできないこと……そういうことをいろいろ考えて、トライ&エラーをしながら、バンドの輪郭を作っていった2年間だったとは思います。

──2年前に取材させていただいたときの印象として、2年前のDeuさんの頭の中には「PEOPLE 1に何ができるだろう?」というよりは「PEOPLE 1はこういうものだ」というイメージがあって、自分が生み出したPEOPLE 1という存在をコンセプチュアルなものとして見ている部分が大きかったと思うんです。でも、「何ができるだろう?」と考えるということは、答えが決まっていない“わからないもの”に向かっていく感覚になった……そういう2年間だったのではないかと感じます。「PEOPLE 1とはいったいなんなんだろう?」と自問自答するような。それはすごく大きな変化だと思うんですよね。

Deu 確かに、確かに。「PEOPLE 1はこういうバンドだろうな」と思っていたものが少しずつ瓦解していった。よくも悪くも、ロックバンドは転がっていくものなので。

──そうですね。

Deu 自発的に何かを変えたわけではないけど、必然的に変わっていくものがあって、その中でバランスを取ろうとし続けてきた2年間だったのかもしれないです。

Deu(Vo, G, B, Other)

Deu(Vo, G, B, Other)

──「PEOPLE 1はロックバンドである」という言い方は、きっと2年前のDeuさんはされていなかったですよね。

Deu ロックバンドだなとは思っていましたよ。基本的に反抗的というか(笑)、あらゆるものへのアンチテーゼの集合体なので、PEOPLE 1は。もともとロックだしパンクだとは思っていたけど、「バンドだ」という部分は、顔を出し、ライブをし始めてより一層痛感しています。「PEOPLE」の最後に「バンド」という曲を入れたんですけど、あのときはそこまでバンドじみてはいなかった。でも「いつか、もっとバンドみたいになるだろう」と思って作ったんです。そうしたら、マジでそうなったなって。

──Deuさんにとってロックバンドの定義は?

Deu コントロールできないもの。進んで行く一方のものですね。