音楽ナタリー Power Push - PASSPO☆×ペンネとアラビアータ機長
クルーと機長の絆が生んだ「Cinema Trip」
PASSPO☆が日本クラウン移籍後初となるアルバム「Cinema Trip」を2月15日にリリースした。本作は“映画の旅”をテーマとし、ラブコメやアクション、ゾンビ、青春学園モノといったさまざまな映画の世界観をモチーフとした楽曲を収録している。今回、音楽ナタリーではアルバム発売を記念してクルー(メンバー)と、PASSPO☆結成当初から彼女たちの楽曲に携わってきたペンネとアラビアータ機長こと音楽プロデューサーの阿久津健太郎にインタビューを実施。出会いから現在までを振り返ってもらいつつ、新アルバムの全貌に迫った。
取材・文 / 古川朋久 撮影 / 塚原孝顕
こんなプロ集団になるなんて想像できなかった
──機長とPASSPO☆が一緒にインタビューを行うのは今回が初めてと伺いました。
ペンネとアラビアータ機長 そうなんです。インタビュー自体そんなに受けたことがないんですよね。
根岸愛 とっても新鮮(笑)。
玉井杏奈 今までありそうでなかったんだよね。
──僕らとしては機長とお呼びしたほうがいいのか、阿久津さんとお呼びしたほうがいいのか悩みどころですが(笑)。
機長 おそらくパッセンジャー(PASSPO☆ファンの総称)は阿久津だとわかんないんだと思うんですよ。だから今回のインタビューにも機長として参加したいと思います(笑)。
──機長は改名前のぱすぽ☆結成時から貧図スクワット名義で彼女たちの楽曲のほとんどに携わってきてます。そもそも機長って何者なんだって思っているパッセンジャーも多いかなと思いまして、まずはそのあたりからお話を聞いていきたいなと。
玉井 機長はもともとアーティスト活動してましたからね。
機長 え、そこから話すの? 20年くらい戻るけど(笑)。
根岸 芸能界の大先輩ですから。
安斉奈緒美 機長、「ミュージックステーション」にも出てるんですよ!
玉井 タモリさんに会ってんですよ、この人。すごくないですか?
──機長、というか阿久津さんは1996年に妹の愛さんと共に兄妹ユニット・ZEROとして活動されてました。そのときにリリースしたシングル「ゼロから歩き出そう」が安室奈美恵出演のCMソングに使用されて一気にスターダムを駆け上りましたね。
機長 僕らだけが飛び抜けて売れたわけじゃなくて、あの時代はCDがものすごく売れたんですよ。それに今みたいにファンの前でライブをする機会なんてそうそうなかったから、音楽を伝えていく方法が現在とはまったく違いますし。楽曲も今はライブを重視して音を作ったりするんですけど、昔はどうしたらカラオケで歌ってもらえるかとか、そういうことを考えながら作ってました。
──PASSPO☆を手がけることになった経緯は?
機長 アーティスト活動と並行して作家活動をやっていく中で、色を出さないほうが楽曲を認められたりすることもあり、自分の未熟さを痛感することが多々あって。 自分が本当に届けたい音楽をもう一度見直したいと思い、当時所属していた事務所を辞めたんです。そうしたら、ちょうどそのタイミングで彼女たちが所属することになるプラチナム・パスポートの社長さんとたまたま出会いまして。そこで社長さんから「女の子のアイドルグループを作ろうと思ってて、手伝ってほしい」と言われたのがきっかけになりますね。
根岸 そんな経緯があったなんて知らなかった。
機長 本当にちょうど事務所を辞めたタイミングで話があったので、運命的なものを感じましたね。
玉井 うちらに最初に会ったとき、どう思いました?
機長 当時みんな中高生で、こう言ったらなんだけどいろいろびっくりしたね(笑)。それまでの自分の活動がけっこうシビアな現場でやってたこともあって、そのギャップにやられてしまったというか。とにかく集まるとずっとしゃべっててめっちゃうるさかった(笑)。でもレコーディングすると……歌わないんですよね(笑)。
──歌わない?
機長 特に当時のまこっちゃん(奥仲麻琴)は、恥ずかしいのかまったく声を出してくれなくて。だから「まず声を出してみようか」って言うんですけど、気の抜けた声しか出ない、みたいな。ということがあって、最初の頃はかなり悩みましたね。そこでレコーディングは複数人で同時に行うことにしたんです。
根岸 あ、だから2人でレコーディングしてたんだ。
機長 2、3人を同時に歌わせるとまこっちゃんもかろうじて声を出してくれて。でもそんな中でもむっしゅ(佐久間夏帆)ともりし(森詩織)は最初から声が出てました。2人はソロパートをあげてもしっかり歌ってくれましたね。当時のことを思い返すと、今ここまでのプロ集団になってるなんて想像もできない(笑)。部活みたいだったもんね。
玉井 うちら学校が終わってから集合してたから、そのままのテンションでやってたなあ。
機長 事務所もメンバーも、そして僕も、アイドルというものを初めてやることになったので、何かを決めるにしてもすごくふわっとしたことが多くて。最初の頃は試行錯誤の連続でしたね。
どのピースが違ってても今のPASSPO☆にはならなかった
──楽曲については初期の頃からいわゆる王道アイドルものではなくて、ロックテイストのナンバーが多いですよね。
機長 PASSPO☆の楽曲は当時の僕がやりたい音楽の方向性をストレートに落とし込んでいった感じですね。それまではR&Bとかダンスナンバーの需要が多くて、なかなか作りたい音楽を生み出すことができてなかったんですよ。そんな中、事務所の社長から「アイドルだけどロックをやりたい」と言われたのがすべての始まりです。
──当時のアイドルシーンには、今のようにそれほどロックを主体としたサウンドがありませんでしたよね。だからこそPASSPO☆に注目が集まったんじゃないかと。そんな彼女たちの記念すべき最初の楽曲は「Let It Go!!」でした。
機長 実はこの曲ができたときには、まだメンバーが決まっていなかったんですよね。社長に「何人か候補生を集めてオーディションをやるから曲を作ってほしい」と言われてできたのが「Let It Go!!」のプロトタイプ。とりあえずカッコいい洋楽ロックみたいな曲を作ったんですけど、候補生たちから「これじゃ難しくて歌えないです」って言われて。そこから試行錯誤して徐々に今の形に近付いていきました。
森詩織 オーディションも1人ずつ、みんなが見てる中で歌ったよね。
根岸 そのとき「無敵Girl」もできてたので曲は2曲はあったんですけど、どっちも難しくて歌えませんでした(笑)。
岩村捺未 しかも振り付けもあったから難しくて。踊りながら歌うってこんなに難しいことなんだって驚きました。歌詞も今の「Let It Go!!」とはちょっと違いましたし。
機長 本当に歌いながら踊るのって大変なんですよ。だから初披露までに踊りを覚えられるかが心配でした。特になちゅ(岩村)はダンスが苦手だったからね。
玉井 今だったら4時間くらいで振り入れをして、すぐにお披露目することが多いんですけど、当時は1カ月くらい同じ曲をずっとレッスンしてようやく覚えるみたいな。なんて時間がムダなことをやってたんだって思いますよね。
根岸 それに竹中(夏海)先生もアイドルに振り付けを教えるのが初めてだったし。
機長 竹中先生もアイドルの振り付けがやりたくてPASSPO☆立ち上げのときに応募してきた感じだったし、すべて運命的なものを感じますね。
藤本有紀美 絶対にアイドルの振付師になりたいって思って毎日検索してたらPASSPO☆にたどり着いたって言ってました。
根岸 どのピースが違っても今のPASSPO☆にはなってなかったと思う。
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- PASSPO☆ ニューアルバム「Cinema Trip」 / 2017年2月15日発売 / 日本クラウン
- ファーストクラス盤 Type-A / [CD+DVD] 3500円 / CRCP-40494
- エコノミークラス盤 Type-B / [CD] 3000円 / CRCP-40495
CD収録曲
- Popcorn bought?
- Music Navigation
- 7's Up(Cinema Trip Ver.)
- PlayGround
- Mr.Wednesday
- ラブリフレイン
- NASA! ~なんであいつ好きなんだ、嗚呼~
- 不屈のレジスタンス
- WEEKDAY QUEENS
- マイノリティー・ヒーロー
- ギミギミaction
- フィルム
- バチェロレッテは終わらない
ファーストクラス盤 Type-A DVD 収録内容
- PlayGround -Music Video-
PASSPO☆(パスポ)
根岸愛、藤本有紀美、岩村捺未、増井みお、森詩織、安斉奈緒美、玉井杏奈の7人からなるガールズロックグループ。「空」と「旅」をコンセプトに2009年より活動を開始し、2011年に「少女飛行」でメジャーデビューを果たす。2013年1月1日よりグループ名をぱすぽ☆からPASSPO☆に改名。ロック色の強い楽曲とパワフルなパフォーマンスでガールズロックユニットとしての立ち位置を獲得し、2014年3月には12th「Perfect Sky」で結成当初からの目標であるBAND PASSPO☆に挑戦する。2015年5月にアルバム「Beef or Chicken?」をリリース。また同年6月には彼女たちがプロデュースを手がける新ユニット・ぷちぱすぽ☆の誕生を発表した。2016年には「Mr.Wednesday」「バチェロレッテは終わらない」「ギミギミaction / ラブリフレイン」の3枚のシングルをリリース。2017年2月15日にはニューアルバム「Cinema Trip」を発表し、同アルバムを引っさげて「歌って踊って奏でるツアー」と銘打った全国ツアーを実施する。このツアーはバンド形式と通常のライブ形式の2部構成で行われる。