音楽ナタリー Power Push - パスピエ「娑婆ラバ」特集 成田ハネダ&大胡田なつき×小出祐介(Base Ball Bear)
パスピエというバンドの実体
冬の武道館はハンパなく乾燥してます
小出 そういえば、僕らも3枚目のアルバムで初めて武道館公演をやったんですよ。
──どうですか、同じタイミングで初の武道館ライブを経験した先輩としては。
小出 いや、今のパスピエがやりたいようにやればいいんじゃないですか。
成田 ベボベも武道館を目指して活動してきたというタイプのバンドではないと思うんですよ。
小出 うん、そうだね。
成田 僕らもそうで。武道館でライブできることはすごくうれしいけど、それが到達点ではないし、2015年12月22日ってバンドの記念日でもなんでもないんですよ。結成6年目で、デビュー4年目だからアニバーサリーイヤーでもないし(笑)。こういうアルバムを作りましょう、じゃあ年末に武道館が空いてるのでやりましょうという。だから今のパスピエで、バンドもお客さんもどれだけ納得できるライブができるかが重要だと思ってます。絶対にゴールにしてはいけないんですよね。だから、コイちゃんが言うように今のパスピエをそのまま出せばいいのかなと。集大成ではなく現在進行形のライブをしたいと思います。
──大胡田さんはどうですか?
大胡田 「GOKURAKU」というタイトルを付けてますし、せっかく武道館でライブができるので、そのタイトル通り演奏も歌も演出も、お客さんがその日だけの極楽を味わえるような内容にしたいですね。何度もできるような会場ではないですし。あとは、日の丸の下でライブができるので気合いを入れたいですね。
──ベボベは過去2回武道館公演をやってますけど、改めてどうでしたか?(参照:Base Ball Bear、初武道館公演で再会を約束 / ベボベ武道館ライブに山口一郎、福岡晃子、呂布が飛び入り)
小出 1回目も2回目も悔いは残りましたね。今思うと、バンドとして半端な時期に武道館公演をやったなと思っていて。まだバンドの肉体ができてない状態だったというか。今ならもっといいパフォーマンスができると思う。武道館に思い入れはなかったけど、逆に今はまた武道館でやってみたいなと思ってますね。よく言われてることですけど、やっぱり武道館に魔物はいますよ。僕らは2回とも1月3日にやったんですけど、特にボーカルで言うと、冬の武道館はめっちゃ乾燥してる。
大胡田 ああ、そうなんですね。
小出 ハンパなく乾燥してます。ステージに風が吹くんですよ。
大胡田 あ、それは前に成田さんから、小出さんがそう言っていたと聞きました。
小出 お客さんが盛り上がるとどんどん気流が生まれて、温かい空気が上に行って、冷たい空気は下に沈んでいくじゃないですか。武道館はすり鉢上の会場で、ステージは地下にあるから、めっちゃ寒くて。本番中にローディーさんに「なんかめっちゃ風吹いてない? 冷房ついてる?」って聞いたくらいなんですよ。パスピエも本番が12月末だからホントに気を付けてください。加湿器とかこっそり置いてもいいと思う。
大胡田 身を守れるアドバイスです。ありがとうございます。
──では、最後にお互いの今後に期待したいことを語ってもらえたら。
小出 さっきも言ったように、今回のアルバムはパスピエなりにバンドのスタンスを示す作品だと思うので。ここからどう経ていくのか楽しみですし、願わくばナリハネと大胡田さんのキャラクターがどんどん乖離していってほしいなって思います。
成田 ああ、すごくわかります。
小出 大胡田さんにはどんどん自分のことがわからなくなって、どんどん人格が介在してない歌詞を書いてほしいし、その一方でナリハネの曲にはどんどん人格が出てくる……くらいのコントラストが生まれたら面白いと思う。そのグラデーションの中にリスナーを巻き込めば、想像の余地がもっと深まるんじゃないかと。
成田 いや、今、コイちゃんに今後やりたいと思ってることをそのまま言われた(笑)。
大胡田 どんどん自分のことがわからなくなるって私ヤバくないですか?(笑)
小出 いや、大胡田さんはそれがいいと思う。
成田 僕はベボベのサウンドがストイックにソリッドになっていってる中で、このあとどうするんだろうってすごく気になるんですよ。
小出 俺的にはむしろ「C2」を作ったことで、また行き先が増えたなと思っていて。
成田 最近のコイちゃんからは、シーンに向けてもそうだけど、外に向けていかに発信するかという意識をひしひしと感じるから。コイちゃんがそうやって踏み込んだときに、リスナーもいろんなことを考えると思うので、その反応に対してまたコイちゃんがどういうアンサーを出すのかも楽しみですね。次のアルバムも楽しみにしてます。
- パスピエ ニューアルバム「娑婆ラバ」2015年9月9日発売 unBORDE
- 「娑婆ラバ」
- 初回限定盤[CD+DVD] 3780円 / WPZL-31097~8
- 通常盤[CD]2700円 / WPCL-12236
CD収録曲
- 手加減の無い未来
- 裏の裏
- アンサー
- 蜘蛛の糸
- 術中ハック
- 贅沢ないいわけ
- 花
- ハレとケ
- つくり囃子
- ギブとテイク
- トキノワ
- 素顔
初回限定盤DVD収録内容
パスピエ TOUR 2014 “幕の外ISM” at Zepp DiverCity(TOKYO)
- - opening -
- MATATABISTEP
- トーキョーシティ・アンダーグラウンド
- 七色の少年
- - session -
- チャイナタウン
- はいからさん
- 贅沢ないいわけ
- S.S
- シネマ
- Base Ball Bear エクストリーム・シングル第3弾「不思議な夜」2015年10月7日発売 / UNIVERSAL MUSIC JAPAN / [CD2枚組] 1944円 / UPCH-89237
- 「不思議な夜」
- Base Ball Bear ニューアルバム「C2」2015年11月11日発売 UNIVERSAL MUSIC JAPAN
- 「C2」
- 初回限定エクストリーム・エディション [CD3枚組]4860円 / UPCH-29203~5
- 通常盤 [CD] 3240円 / UPCH-20399
- アナログ盤 [アナログ2枚組] 2015年12月2日発売 / 5184円 / UPJH-20002~3
パスピエ ライブ情報
パスピエ TOUR 2015 “娑婆めぐり”
- 2015年11月4日(水)宮城県 Rensa
- 2015年11月6日(金)新潟県 新潟LOTS
- 2015年11月11日(水)香川県 高松オリーブホール
- 2015年11月13日(金)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2015年11月14日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- 2015年11月16日(月)鹿児島県 CAPARVO HALL
- 2015年11月21日(土)大阪府 Zepp Namba
- 2015年11月22日(日)愛知県 Zepp Nagoya
- 2015年11月26日(木)北海道 札幌PENNY LANE24
パスピエ 日本武道館単独公演 “GOKURAKU”
- 2015年12月22日(火)東京都 日本武道館
パスピエ
2009年に成田ハネダ(Key)を中心に結成。メンバーは大胡田なつき(Vo)、成田、三澤勝洸(G)、露崎義邦(B)、やおたくや(Dr)の5名。都内を中心にライブを行い、2010年3月に自主制作盤「ブンシンノジュツ」をライブ会場限定で発表。2011年に1stミニアルバム「わたし開花したわ」、2012年に2ndミニアルバム「ONOMIMONO」をリリースし、卓越した音楽理論とテクニック、ポップセンスで音楽ファンの話題をさらう。2013年3月に初のシングル「フィーバー」、6月にメジャー1stフルアルバム「演出家出演」、2014年6月に「幕の内ISM」と続々と作品を発表し、数々の大型ロックフェスに出演。2015年は4月にシングル「トキノワ」、7月にシングル「裏の裏」、9月にアルバム「娑婆ラバ」をリリース。秋には全国ツアーを行い、12月に初の日本武道館単独公演を予定している。
小出祐介(コイデユウスケ)
ロックバンド・Base Ball Bearのボーカル&ギター。2001年、同じ高校に通っていた関根史織(B, Cho)、湯浅将平(G)、堀之内大介(Dr, Cho)と学園祭に出演するためにバンドを結成。2006年4月にミニアルバム「GIRL FRIEND」でメジャーデビューを果たし、2010年1月には初の日本武道館単独公演を実施。近年は他アーティストとのコラボレーションも盛んになり、2012年に7月に発表したミニアルバム「初恋」でヒャダインや岡村靖幸と、2013年6月リリースのミニアルバム「THE CUT」では、RHYMESTERや花澤香菜と、それぞれ共演している。2015年は「シリーズ“三十一”」と題して8月から3カ月連続で“エクストリーム・シングル”を発表した後、バンド結成記念日である11月11日にニューアルバム「C2」をリリースする。