Paledusk「PALEDUSK」インタビュー|結成10周年の節目に完成した名刺代わりの初アルバム、その手応えは (2/2)

自分の弱い部分もさらけ出した1枚

──さまざまな経験を経て、待望のフルアルバム「PALEDUSK」が完成しました。Paleduskにとって初のフルアルバムですが、これまでアルバムを作ることはあまり意識していなかったんですか?

KAITO 結成から10年間アルバムを出してないバンドなんてあんまり聞いたことないですよね(笑)。活動7年目あたりで「そろそろアルバムか?」というタイミングがあったけど、コロナ禍に入ってしまって。アルバムを出してもツアーを回れないとなるとライブバンドとしてもったいないし、曲がかわいそうだということで、より力のあるシングルを出す道を選んできたんです。今、ようやくワンマンツアーをしっかりできる環境になって、アルバムを出せるタイミングが来たという感じですね。

──では、完成しての手応えをお一人ずつ教えてください。

DAIDAI 作曲してる人間の性として、もう手直ししたいところが出てきてるんですけど……でも、すごく素敵な作品になったし、宝物みたいな1枚になりました。

KAITO セルフタイトルにしたのもあって、今からPaleduskを知る人にも、昔から知っている人にも、Paleduskのサウンドや背景が伝わる1枚になったと思います。歌詞に関しても、これまで以上にフィクションではなく、自分の弱い部分もさらけ出しながら「これだけは言いたい」という思いを盛り込みました。とにかく曲がクソカッコいいので、自分でもずっと聴いていますね。

TSUBASA 1曲目から12曲目まで、いろいろな表情の曲がそろっていて。激しい曲もあればしっとりした曲もあるし、起伏の激しいアルバムなんですけど、全部Paleduskの音になっている。アルバムを全部聴いたあと、リスナーさん1人ひとりに「どの曲が好きですか?」と聞いたらバラけそう。

BOB ロックというジャンルが好きな人だったら、どの曲にも好きな要素が入ってるんじゃないかなと思います。1曲1曲にボリュームがあるし、情報量もすごいけど、通して聴くとその起伏に揺さぶられるのがいいんですよ。「これぞアルバム!」というボリューム感の作品になりました。

──確かに、12曲中5曲が5分前後の長さですから。昨今、短い曲が好まれる傾向にある中で、関係なくやりたいことを詰め込もうという狙いだったんですか?

DAIDAI 今の流行だから短くしなきゃとはまったく考えていなかったですね。そういう考えの人たちとは違うところに生きている感覚があるし、別に「長くしよう」とも考えず、そのとき作りたいものを形にしていった結果です。「やりすぎがちょうどいい」というテーマで作って、あとから俯瞰してみたらちょっと長かったかな?とは思いましたが(笑)。

Paledusk

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嘘のない音楽を作りたい

──皆さんは曲を作るとき、最初から全体の構成が見えているのか、アレンジする中で膨らませていくのか、どちらなのでしょうか。

DAIDAI どっちもありますけど、ある程度見えていることが多いです。Paleduskの曲作りでも、楽曲提供のときでも、まずアコギで歌いながら作るんです。1人で公園に行って、歌いながら構成やコード進行、フレーズを作って、全体像が見えてからパソコンを開いて形にしていく。メロディも、シャウトするパートも自分でぼそぼそ歌いながら作っています。

──意外とアナログな作り方なんですね。「NO WAY!! feat. 粗品」はロカビリー風で始まり、メタルから弾き語り、パンキッシュなパートまでめまぐるしく展開していきますけど、この曲もそういう作り方を?

DAIDAI そうです。これまでたくさん音楽を聴いてきて、頭の中に「みんながやっていない抜け穴」のデータがあるんです。ただ突拍子のないものを詰め込んで新しいものを作るだけなら、誰でもできると思うので、ちゃんと一貫性があって「聴いたことあるけど、なんか新しい」というギリギリを攻めたいんですよね。

──そうして形になったものをメンバーに共有するんですか?

DAIDAI まずオケを作って、それを流しながらメンバーの目の前で熱唱します。

KAITO それをボイスメモで録音するけど、いつもオケを爆音で流すので、DAIDAIが何を歌ってるかわからないときが多々ある(笑)。最近はマネージャーと同時録音してます。

DAIDAI しかも、即興で作るパートも多いから、みんながその瞬間を逃さないように録るという。Paleduskのメロディパートはシンガロングが起きやすいので、練って考えるというより、即興でパッと出たメロディのほうが歌いやすくていいと思うんですよね。

──生で伝えるとは斬新ですね。そこから作詞に入っていくんですか?

KAITO いやオケが全部できあがったタイミングで、「こういうことがあったからこの曲を作った」とか、DAIDAIが理由を説明してくれるんです。そのエッセンスを受け取りつつ、そこに自分が日々感じていることをリンクさせて、自分の言葉で咀嚼して書いていく感じですね。

Paledusk

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──なるほど。作曲はDAIDAI、作詞はKAITOさんで分業しつつ、ちゃんと曲と詞が共鳴しているような印象があったので、今のお話を聞いて腑に落ちました。

DAIDAI そこは一番重要だと思っています。

KAITO すごく感情を込めてギターソロを弾いている横でパリピみたいな歌詞を歌っても気持ちがズレるし、聴いている人にもまっすぐ届かないと思う。特にDAIDAIは感情を重視して、ゼロから曲を生み出す人なので。

DAIDAI 嘘のない音楽を作りたいんです。ほかのアーティストに提供する曲は、シンセでメロを打ち込んだり、ボカロを使って仮歌を入れたりすることもありますけど、それはバンドではないからで。バンドでは熱量を共有したい。気の抜けた仮歌を録った時点で、バンドでやる意味はないなと思います。

TSUBASA ボーカルレコーディング中も、KAITOが歌ってるときにボーカルブースにDAIDAIが入ってきて、「こんな感じがいいな!」と大きな声で歌ったりすることがよくあります。

DAIDAI 毎回、自分で歌ってからニュアンスを伝えるので、ボーカルレコーディングの日はめっちゃ疲れるんです。自分の歌は録音されないのに声がガラガラになる(笑)。一番感情をきれいに出せるのがボーカルだと思うので、感情のベロシティやニュアンスは口頭で共有したいんですよね。楽譜じゃ伝わらないから。でも、そのまま歌ってくれとは言わないです。

KAITO DAIDAIの経験や気持ちを俺らしく解釈して表現することで、リスナーの人も、その人なりの解釈で受け取ることができると思うんですよ。そのリンクがPaleduskではすごく大切だと考えていて。歌詞は任せてもらっていますけど、特に「HUGs」(7月に配信後、9月にCDシングルとしてリリース)以降はそこを重要視しています。

風吹ケイの涙に誘発された渾身のギターソロ

──11曲目の「I'm sorry」はこれまでにないドラマチックなロックバラードで、楽曲にも歌詞にも惹き込まれました。

DAIDAI 今回のアルバムでは、2パターンの作曲方法を取り入れていて。1つ目は、映画を1本作るくらい緻密に練りまくった「RUMBLE feat. Masato from coldrain」のような曲。2つ目はその日感じた感情を日記のようにアウトプットして曲にする方法。「I'm sorry」は後者で、1日で完成した曲なんです。「佐久間宣行のNOBROCK TV」というYouTubeチャンネルで、風吹ケイさんがドッキリを仕掛けられる動画シリーズがあるんですけど、最後のほうになると風吹さんが仕掛け人の青木マッチョに泣きながら告白するところまで企画が発展していくんですよ。その告白がめちゃくちゃピュアで、観てたら泣けちゃって。泣いてたらこの曲のイントロが聞こえてきたんです。で、この2人の出会いに華を添えるような曲を書くぞ、と。

Paledusk

Paledusk

──思わぬところからスイッチが入ったんですね。そこから歌詞はどのように……?

KAITO 今の話を聞くと動画のイメージに引っ張られちゃうと思うんですけど(笑)。俺はオケを聴いて、そのときのバンドの状況も含めてサッドな方向の強さを感じたんです。自分の弱いところから発せられる叫びみたいなものがまだアルバムで出せていなかったので、そういう歌詞を書かせてもらいました。アルバムに“PALEDUSK”というタイトルを付けた以上、バンドの歴史や、Paleduskという“生命体”について書き切りたかった。ラスト3行の日本語詞が一番書きたかった部分で。これからも生きていくしかないけど自分は1人じゃない、バンドがあるということを表現しました。それを聴いている人にも感じてほしいですね。

──弱い部分も含めて詞にするのは大事なことですよね。

KAITO そうですね。「HUGs」を機に書けるようになったんですけど、それ以前のPaleduskは「パーティ最高!」みたいな曲や、周りへの怒りを書いた曲が多かったんです。もちろんそれも本当の気持ちですけど、結局俺なんて福岡のジャガイモやし、カッコつけてもなあ……って。むしろカッコつけないことがカッコいいときもあるということを、このアルバムを作りながらいろんな人たちに教えてもらったので、そこは大事にしたかったところですね。

──最後、叫ぶように歌うボーカルに絡むギターソロが最高にエモーショナルでした。

DAIDAI 曲が進むにつれて崩れていくようなギターソロが弾きたかったんです。今の時代、素晴らしい機材があるから誰でもクオリティの高い音源を出せるけど、逆に人間味が薄くなったように感じていて。だから、この曲の制作ではあえて1週間くらいギターを弾かない時間を作りました。普段は毎日練習しているので、1週間も弾かなかったら指がちょっと固まるんですけど、その鈍った状態から即興で弾きました。昔、Red Hot Chili Peppersのジョン・フルシアンテがそういうことをやっていたんですよ。彼は1年とか、もっと長い期間を空けていたと思うけど……そうやって気持ちを高めて、悲しいこともたくさん蓄えて、「今だ!」というタイミングで……パンツ一丁で弾きました。BOBに「横で見とけ」と言って。

BOB 「俺は何を見せられてるの?」と思いました(笑)。でも、そのスタイルも含めて、DAIDAIらしさが音に乗っていると思います。

TSUBASA すごくソウルフルですよね。合計3回くらい録ったんですけど、やっぱり最初のテイクがいいよね、と満場一致で。

DAIDAI 鍵はパンイチっすね! 全員ギターソロはパンイチで弾いたほうがいいです(笑)。

TSUBASA 確かに、あとの2回は服着てたもんね(笑)。

──さまざまな感情が詰まった、まさにセルフタイトルにふさわしいアルバムになりましたね。今作を携えての初のワンマンツアー「What is Paledusk?? TOUR 2026」では、どんなライブを見せていきたいですか。

KAITO ツアータイトルは俺が考えました。「Paleduskってどんなバンド?」と聞かれたときに、初期は「メタルコアバンドです」と自己紹介ができたんですけど、今はいい意味でどう答えるべきかわからないんですよね。ロックンロールもハードロックもラップもあって……と、いろいろ説明しないといけないスタイルこそがPaleduskだから。アルバムが完成して、今できる最善のセットリストを引っさげてみんなのところに行ったときに、来てくれた人がどう捉えるのか。日本中を回りながら今一度Paleduskとはなんなのかを考えることができたら、今後の自分たちの活動のモチベーションになるんじゃないかなと思います。

Paledusk

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公演情報

Paledusk「What is Paledusk?? TOUR 2026」

  • 2026年2月15日(日)福岡県 Queblick
  • 2026年2月17日(火)奈良県 奈良NEVER LAND
  • 2026年2月18日(水)京都府 ROKA
  • 2026年3月12日(木)岐阜県 yanagase ants
  • 2026年3月13日(金)石川県 vanvanV4
  • 2026年3月18日(水)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
  • 2026年3月19日(木)広島県 Hiroshima CAVE-BE
  • 2026年3月22日(日)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
  • 2026年3月23日(月)千葉県 千葉LOOK
  • 2026年3月24日(火)宮城県 仙台MACANA
  • 2026年3月26日(木)岩手県 the five morioka
  • 2026年3月27日(金)秋田県 LOUD Affection
  • 2026年3月29日(日)北海道 KLUB COUNTER ACTION
  • 2026年4月16日(木)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2026年4月17日(金)大阪府 BIGCAT
  • 2026年4月20日(月)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)

プロフィール

Paledusk(ペイルダスク)

2015年に福岡で結成されたロックバンド。海外の名門レーベルと多数契約し、各国の音楽フェスやライブに出演するなど、ラウドロックシーンで存在感を示してきた。目まぐるしく展開する刺激的なサウンドはメタルにとどまらず、ハードコアやヒップホップなど、さまざまなリスナーからも支持を集める。近年はDAIDAI(G)がBring Me the Horizonのアルバムにプロデューサーとして参加したほか、ONE OK ROCKのアルバムでは収録曲の共作や編曲を担当。バンドとしてONE OK ROCKのヨーロッパツアーに同行するなど、世界的アーティストとのコラボレーションを実現させている。2025年7月にはテレビアニメ「ガチアクタ」オープニング主題歌「HUGs」でavexのA.S.A.Bからメジャーデビューし、11月に初のフルアルバム「PALEDUSK」をリリースした。

スタイリング / Peter Gunn Sho
ヘア / RIN. from MEY TOKYO
メイク / Natsuki Ota

衣装協力
00(Instagram:@00_zerozero_
KIKO KOSTADINOV / MATT.(INFO@THE-MATT.COM
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メチャ(Instagram:@mecha_vintage
bemerkung(Instagram:@bemer_kung
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