音楽ナタリー Power Push - 尾崎裕哉×蔦谷好位置×いしわたり淳治
もがき続けた日々からの解放
プロの洗礼浴びちゃいました(尾崎)
──では、改めて今回の制作のお話を伺えればと思います。最初に着手したのはどの曲だったんですか?
尾崎 スタジオで最初に録ったのは「サムデイ・スマイル」と「Stay by my Side」でしたね。
蔦谷 うん。裕哉くんのデモの段階でどっちもしっかりメロディと歌詞があったんだけど、一緒に話し合いながらブラッシュアップしていった感じで。「サムデイ・スマイル」はAメロの出だしがホントに素晴らしいんですよ。「これは発明だな」と思えたんで、それは絶対に生かそうと。なのでBメロやサビを調整して最終的な形に仕上げた感じでした。
尾崎 歌詞はだいぶ紆余曲折がありましたよね。
いしわたり うん。全部を3回くらい書き直してもらいました。Aメロの「あと何度」っていうフレーズのリフレインは残す方向で進めてたんだけど、1回そこから離れたこともあったもんね。それを残してるせいで歌詞がうまくまとまらないんじゃないかって話になって(笑)。
蔦谷 マジで「あと何度立ち止まるの」って感じだったもんね、歌詞の通りに(笑)。
尾崎 あははは(笑)。いや、この曲の歌詞に関してはもう「つらい」のひと言でしたね。締め切りまで時間もなかったんで、「ヤベエヤベエ!」言いながら書いてました。
蔦谷 プロの洗礼だな(笑)。
尾崎 洗礼浴びちゃいましたね(笑)。
垣根のない時代だからトライするべき(蔦谷)
──「サムデイ・スマイル」にはラップパートもありますよね。この部分のリリックはSALUさんが手がけています。
尾崎 もともとはただの間奏だったんですけど、「なんかひとクセつけたいね」っていう話になって僕がまず語りを入れてみたんですよ。そうしたらちょっと80'sっぽくて、いなたい感じになってしまって。どこか尾崎豊的になってしまうというか。なので、コンテンポラリーなラップと昔のラップを混合させたパートにしてみようと思い、僕がフロウを作ったんです。で、歌詞に関しては実際にラップをやっている人に書いてもらったほうがいいなと思ったので、レーベルメイトであるSALUくんにお願いしました。
──尾崎さんがフロウを考えたっていうのはちょっと驚きですね。これまでラップミュージックも聴いてきたんですか?
尾崎 小学6年生のときの寮のルームメイトが黒人で、彼の目覚ましが必ずリュダクリスだったんですよ(笑)。それを1年中聴き続けたってこともありますし、当時はネリーとかエミネムが流行ってたからダンスパーティに行くと必ず流れてたんですよね。だからわりとラップが身近にあったとは思います。あとは僕、KREVAさんが大好きなんで、そういう影響もあるかな。
蔦谷 最近だとエド・シーランなんかもヒップホップの影響をかなり受けてるじゃないですか。だから裕哉くんの曲にそういう要素が入ってきても絶対面白いものになると思ったんですよね。世界的に見ても今やラッパーが歌って、歌手がラップする垣根のない時代ですから。そういうトライは全然やるべきだなって。
英語と日本語をちゃんぽんすることが許されるのは宇多田ヒカルだけ(尾崎)
──「Stay by my Side」はミディアムテンポのラブソングですね。
尾崎 これは僕が散文的に書いた仮歌詞の中の「ひとは何のためにひとを愛してしまうの」っていうフレーズを蔦谷さんが気に入ってくれて。そこから広がっていった曲ですね。
蔦谷 メロディに対して、大喜利で言うところの正解みたいなフレーズだなって思ったんですよ。これ以上ハマる言葉はないっていうか。だから淳治くんとも相談して、そこから広げて作っていきました。
いしわたり 残すフレーズが決まっていたので、テーマとしては明確でしたね。メロディにちょっと80'sっぽさがあったんで、言葉でもちょっとそういう雰囲気を出してもらったところはあります。
蔦谷 あとこれ、オケが薄いし、リズムもそんなに強調されている曲ではないから、英語を歌詞に入れてみたら面白いんじゃないかなっていう提案もさせてもらったんですよ。
尾崎 そうなんです。でも最初、それがすごいイヤで(笑)。僕、英語と日本語をちゃんぽんすることが許されるのは宇多田ヒカルだけだと思ってるんですよ。
いしわたり あははは(笑)。確かに英語が入ってないよね、ほかの曲にも。
尾崎 使うべき曲で使うのはいいと思うんですけど、基本的にはダメなんですよね。だから今回そういうトライができたのは自分としてはすごく新しい。「英語使うのはイヤです!」ってだいぶ戦ったけど、すごくいい仕上がりになったんで気に入ってますね、今は(笑)。
蔦谷 裕哉くんは柔軟なんだよね。イヤなことでもとりあえずやってみようっていう姿勢がある。やってみたら「意外といいね」ってこともあるからね。なんでも試してみる性格は絶対的な長所だと思う。
尾崎 そうっすね。試してなんぼなんで(笑)。
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収録曲
- サムデイ・スマイル
- 27
- 始まりの街(Soul Feeling Mix)
- Stay by my Side
尾崎裕哉「LET FREEDOM RING TOUR 2017」
- 2017年2月26日(日)
福岡県 BEAT STATION - 2017年3月2日(木)
大阪府 BIGCAT - 2017年3月11日(土)
東京都 EX THEATER ROPPONGI - 2017年3月15日(水)
愛知県 THE BOTTOM LINE - 2017年3月24日(金)
新潟県 新潟LOTS
尾崎裕哉 ライブツアー
- 2017年10月6日(金)
大阪府 NHK大阪ホール - 2017年11月3日(金・祝)
東京都 東京国際フォーラム ホールC
尾崎裕哉(オザキヒロヤ)
1989年、東京都で生まれる。2歳のときに、父でありシンガーソングライターの尾崎豊と死別。その後母と共にアメリカに移住し、15歳までボストンで過ごす。帰国後にバンド活動を開始し、大学生活と並行しながらライブや楽曲制作などを続ける。2010年から2013年に「CONCERNED GENERATION」、2013年から2015年に「Between the Lines」と、InterFMのレギュラー番組でナビゲーターを務めた。大学卒業後、2016年7月にTBSテレビ系「音楽の日」で初のテレビ生出演を果たし、大きな注目を集める。同年9月には東京・よみうり大手町ホールで初のホールコンサートを開催し、初の配信シングル「始まりの街」をリリース。2017年3月に初のCD「LET FREEDOM RING」を発表した。
蔦谷好位置(ツタヤコウイチ)
1976年生まれ、北海道出身。CANNABISのメンバーとして2000年にメジャーデビューし、その後NATSUMENの一員として活躍。2004年よりagehaspringsに在籍し、YUKI、Superfly、ゆず、エレファントカシマシ、木村カエラ、Chara、JUJU、絢香、back numberなど多くのアーティストのプロデュースを担当する。映画、CM音楽なども手がけている。3月17日公開のアニメ映画「SING / シング」日本語吹き替え版では音楽プロデューサーを担当した。
いしわたり淳治(イシワタリジュンジ)
1977年8月21日生まれ、青森県出身の作詞家 / プロデューサー。1997年にロックバンドSUPERCARのメンバーとしてデビューした。SUPERCAR解散後以降に作詞家、音楽プロデューサーとしての活動を本格化させる。Superfly、少女時代、SMAPなどの作詞や、チャットモンチー、9mm Parabellum Bullet、ねごとのプロデュースを務めた。3月17日公開のアニメ映画「SING / シング」日本語吹き替え版では日本語歌詞監修を手がけている。