今年4月にベリーグッドマン率いるレーベルTEPPAN MUSICからメジャーデビューした大阪出身の4人組ボーカルグループOverToneが、6月の1stミニアルバム「Prologue」に続き、早くも2ndミニアルバム「POP APP」をリリースした。
10月に配信したバラード「赤い線」、11月に先行配信したポップナンバー「論外」をはじめとする収録曲は、キャッチーで人懐っこい曲ばかり。OverToneの現時点での音楽性のバリエーションとボーカルグループとしてのトータリティを突き詰めた自信作である。
「POP APP」のリリースを記念して、音楽ナタリーはOverToneに2022年3度目のインタビューを行った。アルバムの内容はもちろんのこと、2022年の振り返り、2023年への意気込みなども語ってくれた。
取材・文 / 高岡洋詞撮影 / 入江達也
GUCCHIは“あえたい”
──収録曲のクレジットは全6曲中、GUCCHIさんが3曲、匠さんが1曲、グループ名義が2曲という構成ですね。前作「Prologue」には昔から歌われていた曲も入っていたと思いますが、今回はメジャーデビュー後に作ったものが中心ですか?
GUCCHI グループ名義の「それと、愛」だけは去年の春ぐらいに作りましたけど、ほとんどがそうですね。
──1曲目の「Prologue」はちょっと俯瞰的な視点が面白い楽曲でした。前にYouTubeの「オバトンちゃんねる」でメンバー同士で好きなものを当てるクイズをしていたときに、みんなが「GUCCHIは客観的にものを見られる」と言っていましたが、そういうことと関係があるのかなと。
GUCCHI 「Prologue」は「前のアルバム名が新しい作品に入ってたらオモロいよな」と思って、タイトルから作り始めた曲です。自分たちの人生を映画風に描きたいと思って、あとはアイデアが浮かぶままに書きました。歌詞に出てくる「不朽の名作」という言葉は映画や小説によく使われるワードですけど、歌詞に使われることは少ないなと思って入れてみました。
──“あえて”の感じがありますもんね。
GUCCHI 基本的には“あえたい”っていうか……。
八上和希 いや、そんな日本語ないから(笑)。
──この曲の歌い出しは誰ですか?
NOWAR The 匠 僕です。
──今作ではGUCCHIさんから始まる曲が多いですよね。
GUCCHI そうですね。「赤い線」「論外」「つよがり」「Have a nice day!!!」も僕です。
八上 前作ではほぼ匠くんからやったんですけどね。みんなで誰がこのバースに合うかを相談しながら決めるんですけど、その結果、AメロはGUCCHIと匠が多いです。アマノは絶対的鉄壁のBメロを担当しています(笑)。
アマノ いやいや(笑)。
──「赤い線」はストーリーの組み方がロジカルで、GUCCHIさんらしい曲だなと思いました。少し理屈っぽいというか。
GUCCHI 理屈っぽいのは完全に性格からきてますね(笑)。最初と最後で辻褄が合わなかったら台無しなので、この曲では1番のAメロに出てきた「ズボンのポケット」という歌詞をサビでもう1回出したりとか。「サビまで聴かないと、歌詞の本当の意味はわからないよ」というふうにしたかったんです。
八上 この曲は僕も「GUCCHIっぽい」と思っていたんですよ。起承転結がしっかりしていて、ちゃんと“国語”をやってるなって(笑)。この歌詞は自分には絶対に書けないと思いました。
匠 GUCCHIの曲って、メロディが付いてなくても歌詞を観ると世界観が伝わってくるんですよ。小説を読んでいるような感覚で、詩人やなって思います。
アマノ 歌詞とメロディが合っているんですよね。懐かしんでいる部分は低めの音程で、感情を込めやすい曲やなって思います。
鼻歌を信じてる
──「論外」もまさにGUCCHI節ですね。タイトルで「論外って?」と疑問を抱かせて「君の居ないLifeなんて論外だ」で「なるほど」と納得させるという。
GUCCHI この曲はメロディがまず出てきたんですよ。洋楽っぽいというか英語の歌詞が似合うメロディが最近よく浮かぶんですけど、そこに日本語を入れたほうがカッコいいんじゃないかと思えて。「この英語っぽい、でたらめな歌詞に合う日本語ってなんやろ?」で「論外だ」が出てきたところがスタートです。
──メロディを作るときは歌いながら? それともキーボードを弾くんですか?
GUCCHI どっちもありますけど、まず歌で作ってみて、出てこなかったらキーボードですね。でも基本的には鼻歌で出てくる直感的なメロディを信じてますね。でたらめ英語で歌ってます。
──「論外だ」のところは?
GUCCHI 「オーライナウ(All right now)」ですかね。
一同 (笑)。
GUCCHI これをうまいこと日本語に変えていく作業が楽しいんですよ。韻を踏むみたいに、めちゃくちゃ耳に残したいと思って。いつもは歌詞に英語はあまり入れないんですけど、この曲にはあえてちょっとちりばめてみたり。僕は英語が不得意なので、誰でも知っている単語から入れようと意識しました。自分が聞いたことのない言葉は入れないでおこうと。
──というのが作者の弁ですが、ほかの皆さんは歌ってみてどうですか?
八上 めっちゃ楽しいですね。ポップスですけど若干のR&B要素も含まれてるし、歌が下手な人には歌えない曲やと思うんですよ。僕は前からGUCCHIに「歌っていて気持ちよく酔える曲を作ってほしい」とリクエストしていたので、「GUCCHIありがとう!」と思いました(笑)。
GUCCHI 確かに「論外」は歌っているやつが一番気持ちよくなれる曲にしたかったんですよ。イキれる曲というか。
アマノ こういう感じの曲って、僕らには今までなかったんですよ。ROVERさんのアレンジのおかげもあって、聴く人もノリやすそうやし。ライブでやって楽しいのが一番いいなと思います。お客さんとの一体感も出るやろうし、ライブで映える曲なのかなって。
匠 お客さんの反応を見てると、バラードは聴き入ってしまうからどうしても直接的な反応が薄くなるんですよ。この曲を歌うと目に見えて反応がいいから、需要と供給がマッチしたというか。僕はこのアルバムの中で一番好きな曲ですね。
──ROVERさんは「Prologue」もプロデュースされていますね。
八上 ROVERさんの作る曲がめっちゃカッコいいことは知っていたんです。実は2020年に途中まで進めていた曲があったんですけど、コロナ禍でリリースの計画がバラしになったことがあって。でもどうしてもROVERさんと一緒にやりたかったから、GUCCHIが「論外」を作ったときに「これは絶対にROVERさんにアレンジしてほしい!」と、改めてお願いしました。
──「それと、愛」もR&Bっぽい曲ですね。アカペラというか、オケなしで歌だけで始まるパターンで。去年の春頃に作った曲とのことですが。
八上 当時お世話になっていたVillage Again Associationというレーベルの社長に「ちょっと大人のビターな感じのラブソングを書いてほしい」と頼まれたんです。HiDEXさんのトラックに合わせてGUCCHIがサビの歌詞を書いてくれたんですけど、「例えばネイビーのコート フレンチのコース」という部分の「背伸びして見栄張りたいけど、そんなにお金ないなあ」という感じって、リアルに伝わってくるんですよ。そういうつもりで書いたのかわからないですけど。
GUCCHI ネイビーのコートは僕の中で大人っぽい服装の代表的なイメージなんです。
八上 浅いな(笑)。もっとあったやろ。
GUCCHI これもでたらめ英語で、メロディから作り始めました。最初にハマった歌詞が「コース」と「コート」だったので、「ネイビーのコート」「フレンチのコース」が出てきて。大事なのはそのあとに出てくる「それと愛」なんですけど、耳が行くのはそっちかなと思って、“あい”という2文字にあてるメロディを複雑にしてみたり、ちょっと新しいこともしてみました。
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匠が作るデモは闇を感じる