音楽ナタリー Power Push - ORIGINAL LOVE

はみ出し続けた25年間

岡本太郎が言った「誤解の満艦飾になれ」

──知識や経験を積み重ねた部分を使いつつ、あえて前向きな気持ちで過去を振り返るという感じでしょうか。

年をとると、いろんな音楽の価値がわかってきてどんどん音楽性の幅が広がる分、とんがってる部分や偏ってる部分がよくも悪くもなくなっていくんです。やっぱり、いい音楽にはどこか偏ってるところがありますよね。僕の若い頃の感性もだいぶ偏ってたんですけど、今聴くとそれがまた面白くてね(笑)。なので、25年ということを意識しながら、偏ってた頃の若い自分を意識して今音楽を作ったらどうなるのかなって思ったのが「ゴールデンタイム」ができるきっかけだったのかもしれない。コードの流れとかリズムの感じも、自分が昔よく使ってたようなのを使ってみたんです。でも、そこに今持っている知識も持ち込んで。そういう作り方をしました。

──ファンの人ならみんな気が付くと思うんですけど、歌詞では、いきなり最初のほうに「朝日の当たる道」というフレーズが登場します。

「風の歌」とかね。そういう自分の過去の曲のタイトルが歌詞に入ってるという、今までにしたことのないアニバーサリー的な曲作りをあえてしたんです。

──「皮肉なノイズが囁く 誤解も粋なアクセサリー きみも飾り立てて進め」っていう歌詞は別の意味で印象的でした。今の時代のSNSの使われ方にひとつ釘を刺してる感じがあって。

田島貴男

今は総ツッコミの時代じゃないですか。僕もエゴサとかたまにするんだけど、わりと言いたいことを言われてるわけですよ(笑)。でもそういう人たちに他意はないし、たいして興味なんかないからそういうことを言うんでしょう。腹を立てる必要もないんだけど、そういうのが見えてきちゃうのは面倒臭いことでもある。岡本太郎は「誤解の満艦飾になれ」と言っていたけど、それくらい強い気持ちを持たないとものって作っていけないですよね。もの作りをする最初の段階では、ツッコミにいちいち答えないで、自分が「これだ!」って思ったものを貫かないと面白いものはひらめいてこないわけですよ。

──逆によい意味でのアウトプットもあると思うんです。「Love Jam」でも、ceroやペトロールズの皆さんはORIGINAL LOVEと共演できることをすごく喜んでいたと思いますし、彼らのファンもすごく新鮮にORIGINAL LOVEの音楽に接していたように見えました。新しい世代からのアプローチでは、LUVRAWがトークボックスでカバーした「接吻」がクラブヒットしてますし。

本当ですか? そういうことはぜんぜん把握しきれてないんです。「接吻」に関しては、年上の世代から若い人たちまであまりにもいろんな人がカバーするんで、もはや手放し状態でわからない(笑)。すごくうれしいけど、ほかにもいい曲いっぱいあるんだけどね(笑)。

Negiccoを聴いて三浦康嗣くんがいいなと思った

──カバーと言えば、今回の作品には1994年の「朝日の当たる道」をセルフカバーした「朝日の当たる道 in a tuxedo」が収録されています。

今までだったらこういうことをするのは嫌だったんですよ。でも今回のアニバーサリーでは「やろうよ」という気持ちになったんです。「接吻」は弾き語りのライブバージョンで音源化してるんで、今回は「朝日の当たる道」にしようかなと。ただ、オリジナルバージョンがすごく完成されていて崩すのが難しいので、今回は昔のボードビルショーみたいなジャズっぽいアレンジで、ホーンセクションもいっぱい入れて、「in a tuxedo」というタイトルを付けてやってみました。

──25周年を祝った特別バージョンであると同時に、The Beatlesの「When I'm Sixty-Four」的な、田島さんの未来に向かってこの曲を投げてみせた洒落の効いたアプローチなのかなとも思いました。

田島貴男

いや、そこは何も考えてないですね(笑)。今風にしちゃうよりも、さらにもっと昔風にしちゃったほうが面白いかなと思ったんで。僕のヘッドアレンジをもとに、ビッグバンドとかスウィングジャズの時代を匂わせるようなアレンジにしたくて「クラリネットをいっぱい入れてほしい」とトロンボーンの村田(陽一)さんに頼んでやってもらって。

──さらに、それと対比するかのように、自身の最新曲である「ゴールデンタイム」の三浦康嗣(□□□)リミックスも今回は収録されていて。

うん。Negiccoの去年のアルバム(「Rice&Snow」)で三浦くんが提供してた「BLUE, GREEN, RED AND GONE」を聴いて、いいなと思ったんですよ。Negiccoのライブ会場で本人に会ったら「ORIGINAL LOVE聴いてました」って言われて、話もいろいろと盛り上がったので、「じゃあ、リミックスを頼もう」と思い付いて頼みました。

──□□□もすごくユニークなバンドで、「Love Jam」に出演しててもおかしくないですよね。

そうですね。三浦くんはすごい才能で、破壊的なんだけど、すごく構築的でもあって、頭が切れてるというより壊れてる(笑)。でも、□□□のライブはスケジュールが合わなくて、まだ1回も観れてない。「ライブあるとき教えてよ」ってお願いしてるんだけど、メッセージが来たと思ったら「今日ライブです」って(笑)。今はORIGINAL LOVEのライブメンバーに□□□の(村田)シゲがいるんで、ライブは本当に観たいんですよ。

ニューシングル「ゴールデンタイム」 2016年6月1日発売 / [CD+DVD] / 2160円 / XQKP-1008 / WONDERFUL WORLD RECORDS
「ゴールデンタイム」
Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. ゴールデンタイム
  2. こどものなみだ
  3. 朝日のあたる道 in a tuxedo
  4. ゴールデンタイム(三浦康嗣(□□□)Remix)
DVD収録内容
  • ゴールデンタイム(MV)
  • ひとりソウルショウのテーマ~フィエスタ(Live 2015年11月29日 渋谷 TSUTAYA O-EAST 田島貴男「ひとりソウル・ツアー 2015」より)
  • Hey Space Baby!(Live 2015年11月29日 渋谷 TSUTAYA O-EAST 田島貴男「ひとりソウル・ツアー 2015」より)
ORIGINAL LOVE 25周年 アニバーサリーツアー
  • 2016年6月18日(土)宮城県 Rensa
  • 2016年6月19日(日)神奈川県 横浜関内ホール
  • 2016年6月25日(土)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2016年6月26日(日)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2016年7月2日(土)新潟県 新潟LOTS
  • 2016年7月3日(日)岩手県 岩手県公会堂
  • 2016年7月9日(土)東京都 昭和女子大学人見記念講堂
  • 2016年7月17日(日)福岡県 福岡市民会館
ORIGINAL LOVE(オリジナルラブ)

1985年結成のバンド・THE RED CURTAINを経て、1987年よりORIGINAL LOVEとしての活動を開始。1991年7月にアルバム「LOVE! LOVE! & LOVE!」でメジャーデビューを果たす。同年11月発売の2ndシングル「月の裏で会いましょう」がフジテレビ系ドラマ「BANANACHIPS LOVE」の主題歌に採用され全国的に注目を集めた。その後も「接吻 kiss」「朝日のあたる道」などのシングルでヒットを記録し、1994年6月発売の4thアルバム「風の歌を聴け」はオリコン週間アルバムランキング1位を獲得。以降もコンスタントに作品を発表し、柔軟な音楽性を発揮している。近年はバンドスタイルでのライブのみならず、田島貴男1人での「ひとりソウルツアー」や「弾き語りライブ」も恒例化している。2016年6月には、メジャーデビュー25周年記念シングル「ゴールデンタイム」をリリースした。