大森靖子×峯田和伸(銀杏BOYZ)|2人の間を往復する愛

辿り着いたのが「規律」だったんです(峯田)

左から大森靖子、峯田和伸(銀杏BOYZ)。

峯田 ないものねだりじゃないですけど、僕自身まだ満たされていないところがあるんです。そこが満たされて、次の段階にピューッて行ければいいんですけどね。まだまだやれてないんじゃないかな。そういうときに芝居の仕事があるっていうのはすごくいい。お金が入ってくるので。

大森 芝居をしなくったって、お金、あるでしょ(笑)。

峯田 いやいや、芝居があることで音楽のほうで「売れるには」とか考えなくてよくなったんですよ。もうわがまま放題というか、自分のやりたい音楽を突き詰められる。だから最近の状況は、冷静に見てやりたい音楽をやるための下地作りみたいなところもあって。実際取りかかっている新曲とかは「ようやく出てきたぞ」という感覚がありますね。

──「出てきたぞ」というのは?

峯田 真っ暗な部分ですね。もうちょっと欲しいんですけど、そこは自分の中でも割合を探っているところなんですよね。6対4とか、7対3とか、まだわからないですけど。

大森 私はそこはアルバム1枚ごとに変えてますね。閉じる、開く、閉じる、開くって。「クソカワPARTY」は閉じてる、「kitixxxgaia」は開いてる、「TOKYO BLACK HOLE」は閉じてる……。

──そんなはっきり切り替えられるものなんですか。

大森 「自分の中のことを表現する言語」と「人としゃべるときの言語」って違うじゃないですか。開いているときは対話してたり、他人のことを歌っていたりするんですけど、閉じているときは完全に自分の中だけで完結して、言わなくていいことまで全部歌ってしまう。

峯田 わかる気がする。歌詞も大森靖子語じゃないけど、言葉が多くて、どう読み取っていいかわからない曲もあるじゃないですか。「他人に伝わらなくてもいいや」みたいな。その一方で、絵が浮かびやすかったり、すごくわかりやすい曲もあるし。伝わる伝わらないも含めて、大森靖子の言葉ってどちらも僕は面白いなと思っていて。今回の曲のメロディを考えているときに、僕が大森靖子に対して何ができるだろうかと考えたんです。そこでたどり着いたのが「規律」だったんですよ。普段、大森さんって自分で言葉を書いてメロディも作るときは、自分の好きなように隙間を詰め込んでいくでしょ。

大森 そう、私、空間恐怖症なんです。何もしていない時間とかも怖いし。間奏を作ってもらっても「ここはしゃべってセリフをいれなきゃ」って思っちゃう。

峯田 僕はそこに「ここまでは歌わない」とか「半拍溜める」とか、メロディで規律を作ろうと思ったんです。もちろん大森靖子の世界の魅力や面白さは十分にわかる。でも、そこに僕が外側の世界として規律を持ち込むことで、今まで大森靖子を聴いたことがない、あるいはネットでながら聴きしていたような人たちを、スピーカーの前で正座して聴く感じにしたかったんです。どうせ規律を課しても、大森さんの言葉はそこからあふれてくるし、超えてくるだろうという読みもありました。実際、大森さんの言葉が乗ったことでちょうどいいバランスにはなったと思います。

「俺、童貞じゃねえし」から何も成長してない(大森)

──最初に大森さんも言ってましたが、5年寝かしたからこそできる共作でしたね。

大森 私はね、ずっと峯田さんが音楽を楽しくやってくれてればいいと思うんです。

峯田 音楽はSNSとかで出さないだけで、ずっとやってますからね。取材なんかでは「役者やってまーす」って感じで言ってますけど、どうしてそれが言えるかというと、普段から「ごはんを食べる」「寝る」とかそういうのに加えて「曲を作る」というのが入っているからなんです。それがないと、取材でもふざけたことは言えないんですよ。大森さんも何かのインタビューで言っていましたよね。「ちっちゃなことを積み重ねて、しょうがない自分っていうものを毎日ちゃんと生きることでしか夢とか目標とかに近付けない」って。

大森 私のインタビューなんて読むことあるんですか(笑)。

左から大森靖子、峯田和伸(銀杏BOYZ)。

峯田 ありますよ。それ読んでホントその通りだなって。でも、実感としてはそうだとしても、僕は言えないんですよ。「そんなの9回裏に逆転サヨナラっすよ」みたいな(笑)。だからもう、あとは作品で見せるしかないですよね。

大森 峯田さんってホントにむだ打ちしないですよね。私はむだ打ちばっかり。

峯田 そんなことないでしょ。

──大森さんを見て、時代の違いを感じることはありますか。

峯田 違い……というところまではないですね。大森さんは今31? これから30代、楽しみですよ。大森さん、絶対面白いと思いますよ。僕も乗っかっていきたい。

大森 ふふふふ(笑)。峯田さんの40代も楽しみですよ。最近、「バツイチ」ってウソついてるらしいじゃないですか。

──なんですか、それは(笑)。

峯田 いや、会う女性、会う女性、「お若いですね」って言ってくれるんですけど、「僕も、もう40代ですよ」って言うと、明らかに顔色が変わるんです。「40を超えて独身なんて何か問題があるんじゃないか?」という目で見てくる。そこで「いやあ、実は1回結婚に失敗して」と言うとまた見る目が変わるっていうか、人並みにいろいろやってきた感じが出てくるでしょ。

大森 出ないよ! ヤバくないですか(笑)。「俺、童貞じゃねえし」から何も成長してないし。

峯田 おい! リスペクト足りてないだろ!

私が峯田さんに返せることも意外にあるのかも(大森)

──最後に「Re: Re: Love」というタイトルについても聞いておきたいんですが。

峯田 泣けるよね。1回だけだっけ? 俺が大森さんのメールに返信したの。

大森 2回ですね。

──まだファン時代の大森さんが、当時、峯田さんが公開していたメアドに毎日メールして、2回だけ返事がきたというお話ですね。

峯田 メールを返すと、タイトルに「Re:」がつくじゃないですか。それにもう1回返しての「Re: Re:」というのがいいですよね。

──もらったものを返す。先日、峯田さんが出演した「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」の特別編を見たときにも、通じるものを感じました。

大森 峯田さんが描いたカルタの絵、かわいかったですよね(笑)。

峯田 あの収録の数日後に、この曲をレコーディングだったんですよ。なんかすごく不思議な感覚だったな。平成から令和にかけて、(遠藤)ミチロウさんが亡くなったりもしたじゃないですか。自分がすごく好きで神様だと思っていた人たちがいて、それが例えばダウンタウンだったら、一緒に番組に出てしまったことで、それまで13歳から27年間ずっとあったものが終わってしまったんですよね。その寂しさ……悲しいとも違うし、単に楽しいでもない、新しくやらなくちゃならないなっていう気持ちが生まれたタイミングで、大森さんと作ったこの曲があって。

大森 私はあの「ガキ使」を観て「Re: Re: Love」に「出会った髪型がときめくものね」という歌詞を書いてますからね。

──松っちゃんのオールバックが好きだったという峯田さんのエピソードですね。

大森 峯田さんの言うことっていつもよくわからないんですけど……。

峯田 おい(笑)。

大森 でも私も峯田さんの髪が長いときが好きだったから、あの感覚は「わかる!」と思った。私も自分でやっていかなきゃいけないことはいっぱいあるけど、そうやって私が峯田さんに返せることも意外にあるのかも。それを音楽でできるのは幸せなことだなって。

公演情報

超歌手大森靖子2019 47都道府県TOUR“ハンドメイドシンガイア”
  • 2019年6月5日(水)神奈川県 横浜BAYSIS
  • 2019年6月7日(金)千葉県 柏ThumbUp
  • 2019年6月11日(火)山梨県 KAZOO HALL
  • 2019年6月20日(木)群馬県 高崎clubFLEEZ
  • 2019年6月27日(木)福島県 郡山CLUB #9
  • 2019年6月28日(金)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2019年7月4日(木)福岡県 BEAT STATION
  • 2019年7月5日(金)熊本県 熊本B.9 V2
  • 2019年7月7日(日)宮崎県 SR BOX
  • 2019年7月8日(月)鹿児島県 SR HALL
  • 2019年7月14日(日)島根県 松江 AZTiC canova
  • 2019年7月15日(月・祝)鳥取県 米子 AZTiC laughs
  • 2019年7月19日(金)徳島県 club GRINDHOUSE
  • 2019年7月20日(土)高知県 X-pt.
  • 2019年7月21日(日)愛媛県 松山サロンキティ
  • 2019年7月24日(水)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2019年7月27日(土)京都府 磔磔
  • 2019年7月28日(日)兵庫県 神戸VARIT.
  • 2019年7月31日(水)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
  • 2019年8月3日(土)愛知県 ElectricLadyLand
  • 2019年8月4日(日)三重県 CLUB ROOTS
  • 2019年8月9日(金)長崎県 DRUM Be-7
  • 2019年8月11日(日・祝)佐賀県 RAG・G
  • 2019年8月12日(月・振休)大分県 DRUM Be-0
  • 2019年8月17日(土)石川県 Kanazawa AZ
  • 2019年8月18日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2019年8月23日(金)和歌山県 和歌山CLUB GATE
  • 2019年8月24日(土)奈良県 奈良NEVER LAND
  • 2019年8月25日(日)滋賀県 滋賀U★STONE
  • 2019年8月29日(木)山口県 周南RISING HALL
  • 2019年8月31日(土)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
  • 2019年9月1日(日)広島県 広島セカンド・クラッチ
  • 2019年9月3日(火)香川県 DIME
  • 2019年9月7日(土)岐阜県 yanagase ants
  • 2019年9月13日(金)福井県 福井CHOP
  • 2019年9月14日(土)富山県 Soul Power
  • 2019年9月16日(月・祝)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2019年9月21日(土)青森県 青森Quarter
  • 2019年9月23日(月・祝)宮城県 darwin
  • 2019年9月28日(土)沖縄県 桜坂セントラル
  • 2019年10月5日(土)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2019年10月6日(日)静岡県 Shizuoka UMBER
  • 2019年10月11日(金)岩手県 Club Change WAVE
  • 2019年10月12日(土)秋田県 Club SWINDLE
  • 2019年10月14日(月・祝)山形県 山形ミュージック昭和Session
  • 2019年10月31日(木)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2019年11月13日(水)東京都 新木場STUDIO COAST