今の時代、音楽を主張するだけではダメだ
──さてメジャーデビュー盤は、インディーズ時代の楽曲と新曲で構成された内容です。
「What's 岡崎体育」というか、ベタですけど名刺代わりの1枚を意識して作りました。とにかく世の中に知れ渡ることが一番重要なポイントですから、ライブでお客さんの反応が大きい曲とかを入れて。あと僕の音楽は音だけでは表現しきれない部分があるので、初回限定盤はMVを入れたDVDを付けた形にしました。
──音だけでは表現しきれないというのは、自分の音楽は映像やパフォーマンスがあって完結するという意識が?
はい。それは強く思ってるところですね。今の時代、音楽を主張するだけではダメだと思ってて。岡崎体育の音楽を知らないお客さんの層に、僕のCDをレジまで持って行ってもらうのは難しいかなと思ってるんです。だからまずは面白い動画で注目してもらうことから始めようと。
──確かに岡崎さんの曲は、映像が浮かびやすいものが多いですね。詞先なんですか?
2タイプあって、真面目に作った曲、例えば今回のアルバムの中だと「スペツナズ」や「エクレア」は歌詞は曲が完成するまで浮かばないんです。逆にライブでよくやってるいわゆるネタ曲は、作る時点でテーマがあってMVの映像まで浮かんでる。中でも今まで、後輩の映像作家・寿司くんに撮ってもらった曲のMVは、歌詞が脚本みたくなってるんですよ。だから寿司くんは「楽や」って言ってますね(笑)。
──全曲ではないにしろ基本的にMVを作ることも考えると、1曲を完成させるのにお金も時間もかかりますよね。
かかりますねえ……。でも「スペツナズ」とか「エクレア」とか真面目に作った自信作も世の中の人に聴いてもらうためには、岡崎体育という存在をまずは広めなきゃいけない。それを考えたとき、映像って一番とっつきやすいんですよね。二面性のある音楽性を知ってもらうためにも、MVは必要だと思ってます。岡崎体育はふざけているだけじゃなく、ちゃんと真面目に音楽もやってるんだぞって理解してもらえることが僕にとって幸せなんです。
──ネタ曲がとかく注目されがちですが、岡崎さんは楽曲提供もされていて。NHKで放送されたアニメ「想いのかけら」の劇伴は、美しいメロディが印象的でした。
ありがとうございます。楽曲も提供しますし、リミックスもやりますし、表舞台に立つだけじゃなく裏方の仕事も好きなんです。そういうところで、作曲家になりたいっていう小学校の卒業文集で書いた夢を体現できているので、すごく幸せですね。
──「エクレア」で「いい曲はいい人とともに」という一節がありますが、岡崎さんにとっての「いい曲」の定義とは?
嘘偽りのない言葉や思いで書かれた曲ですね。前向きなメッセージソングも好きですけど、ダメなやつがダメなことを歌ってる、ありのままの情けない自分をさらけだしている曲が好きなんですよ。そういう意味で、僕がライブでやっているネタ曲「FRIENDS」「家族構成」もいい曲なんです。ネタ曲で売れたい!っていう僕の意識が、嘘偽りなく出てる曲なので。
──「FRIENDS」に至っては曲の展開もすごいですよね。
めちゃくちゃですからね(笑)。歌詞もバンド活動におけるあるあるを赤裸々に書いているし。それも自分にとっては嘘偽りのないところなんで。
盆地テクノとは?
──ご自身の音楽のジャンルを盆地テクノと位置付けられていますが、これはいつから?
岡崎体育として初めてやったライブのときですね。深い意味があるわけじゃないんですよ。盆地っていう言葉のキャッチーさと、テクノっていう言葉の響きがいいなと思って。あとはテクノって言ってますけど、そんなにちゃんとしたテクノじゃないもので……。
──はい(笑)。
ミニマルテクノみたいに正統派じゃなくてJ-POPとかテクノポップ寄りの音楽性だし。ただテクノミュージックが大好きだし、テクノっていう言葉もカッコいいし……でもこれをテクノって言っちゃ怒られると思って「盆地テクノ」と名付けてお茶を濁しています。
──でも、それが岡崎体育さんの音楽だと早くも浸透しつつありますよね。そんな盆地テクノを言葉で表現するとしたら?
ライブでやっている曲に関してはメタ的表現ですね。アルバムの中だと、曲の中で曲の説明をするとか(「Explain」)、ミュージックビデオの曲でミュージックビデオあるあるを歌うとか(「MUSIC VIDEO」)、2番の歌詞を丸々忘れることを歌にしちゃうとか(「Voice Of Heart」)。第三者の視点で見ている楽曲が岡崎体育の音楽=盆地テクノだと思います。
──岡崎さんは、さいたまスーパーアリーナで口パクワンマンライブを目標として掲げられてますが、なぜ日本武道館や東京ドームでなく、さいたまスーパーアリーナなんでしょうか?
大学を卒業して働いているときに、友達に誘われて歌い手さんがたくさん出演するイベントに行ったら圧倒されて。中高生が歌い手さんたちに熱狂的になってて、すさまじい熱気だった。それで、僕も同じステージに立って、彼らと同じような感覚を味わってみたいと思ったんです。それ以降ずっと目標として口にしてますね。さすがに最初はさいたまスーパーアリーナは無理かなと思って「SSAでワンマンライブやる」ってごまかしてたんですけど。
──SSAにはほかの意味があるんですか?
無理やりですけど、佐野サービスエリアもSSAなんで(笑)。でもメジャーデビューした以上は、堂々と「さいたまスーパーアリーナでライブをやります」と言うようにしてます。
──そのほかに実現させたい目標はありますか?
長く太くメジャーの場で活動できること。ほかのアーティストにはない独特の空気感を作ることですね。笑いだけじゃなく、岡崎体育の音楽を聴いたり、ライブを観たりしていろんな感情を呼び起こしてもらえるような活動をしていきたいですね。
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- メジャーデビューアルバム「BASIN TECHNO」/ 2016年5月18日発売 / SME Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 2800円 / SECL-1879~80
- 通常盤 [CD] / 1800円 / SECL-1881
CD収録曲
- Explain
- MUSIC VIDEO
- 家族構成
- FRIENDS
- Voice Of Heart
- Outbreak
- スペツナズ
- エクレア
初回限定盤DVD収録内容
- Outbreak
- MUSIC VIDEO
- Explain
- Voice Of Heart
- FRIENDS
- 家族構成
- 岡崎体育ワンマンライブ「クソワロタ共和国」
- 2016年5月27日(金)東京都 TSUTAYA O-WEST
- ※チケットソールドアウト
- 岡崎体育ワンマンライブ「バリウケル帝国」
- 2016年6月5日(日)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
- ※チケットソールドアウト
- 岡崎体育ワンマンライブ「バリイケメン王国」
- 2016年6月17日(金)奈良県 奈良NEVER LAND
- ※チケットソールドアウト
岡崎体育(オカザキタイイク)
1989年生まれ、京都府出身の男性ソロアーティスト。2012年より地元のスーパーマーケットで働きながら「盆地テクノ(BASIN TECHNO)」の伝道師として活動を開始する。自主制作アルバムを発表しながら、関西を拠点にライブ活動を展開。キャッチーなテクノポップサウンドと独創的な歌詞の妙、口パクによる強烈なライブパフォーマンスが注目を集める。Twitterに投稿した「冷蔵庫に貼ってあったメモ書きを英語風に読んでみた」と題した動画や、歌詞世界を忠実に再現したミュージックビデオが話題になる。2016年3月にメジャー(巻尺)に音源を付けた“メジャーデビューアルバム”「MEASURE」を、5月にSME Recordsから正真正銘のメジャーデビューアルバム「BASIN TECHNO」をリリース。