大橋トリオ|ひたすら駆け抜けた10年を経て、今音楽家として目指すべきもの

自分もできればSteely Danみたいにやってみたいですよ

──大橋さんの音楽を聴いていていつも思うんですが、曲によってジャズ寄り、ファンク寄りみたいな色合いはあるにしろ、どの曲にもいろんな要素が入っていて、ジャンルを特定しにくいんですよね。

それ、自分でもよく考えますけど、僕の声が乗っかるからなんじゃないかなって。作っているときに「ちょっとジャズ方面に行きすぎたかな」とか「アンダーグラウンドな感じになりすぎたかな」って思うような曲でも、最終的にはちゃんとアルバムの1ピースとして存在できている……と言うか、そうなってしまう。もっとソウルフルに歌い上げたりすればソウルっぽくなるけど、僕にはできないから。大橋トリオに歌える範囲内の歌しか作れない。歌手として幅が狭いってことでしょうね、悪く言うと(笑)。

──それが個性とも言えますよ。

大橋トリオ

僕自身これでいいとは思っていなくて、もっとやりようがないかな、と常に模索してはいるんですけどね。例えばブルーノ・マーズみたいな曲を作りたいなと思って、ピアノを弾きながら歌うじゃないですか。でも歌えないから、そういう曲にはならないんですよ。けっこう挑戦的なリズムやコード進行を作っても、歌でできることが限られているから、そこまでは突っ切れない。それが毎回のパターンです。

──曲を作るときはピアノからが多いですか?

ピアノだったりギターだったり、ドラムのリズムからだったり。シンセもときどき使っています。生音で極力やりたいなっていうのがありましたけど、最近は「アコースティックじゃなきゃ」というタガがどこかで外れたんでしょうね。あんまり電子的に見られたくなかったんですけど、自分の歌が乗ればそこまで大それたことにはならないってわかったと言うか。

──理想とする音楽って何かありますか? 単に好きということでもいいんですが。

「フェイバリットミュージシャンは?」って聞かれたら答えないようにしているんです。「やっぱりね」とか思われそうなので(笑)。ライブで言うと、さっき話したルーファス・ウェインライトが理想ですね。あと去年、ブルーノートにPunch Brothersを観に行ったんですけど、最初から最後までマイク1本でやるんですよ。それを真似しようと思って、去年と今年のツアーでライブの中盤に“マイク1本コーナー”を設けてみました。コンサートの内容にすごく幅が出るんですよね。お客さんも喜んでくれたし、鉄板メニューにして続けていこうと思っています。

──大橋さんの音楽から僕が思い出すのは、Steely Danとか、1970年代のA&MやCTIレコードの一連の作品とか、当時はMOR(Middle of the Road)と言われていたような音楽なんです。

おおー。Steely Danはうれしいですね。

──ドナルド・フェイゲンも自分の声が嫌いだったそうですし、フィジカルな限界を悟ったところから作り上げていった音楽という意味でも重なるかなと。

そういえばSteely Danって、あんまり歌がいいなって思いませんもんね。音楽への情熱、こだわりが半端ないので有名じゃないですか。一流ミュージシャンを呼んでオーディションしたりとか。自分もできればそこまでやってみたいですよ。憧れちゃいますね。実際にやると嫌われそうな気はしますけど(笑)。それはイヤなので、いい人でありつつ、こだわりを刻んでいくというのは、なかなか難しいです。でもなぜか、自分の周りにはいい人しかいないんですよ。いい奴しか相手してくれないっていうことなのかもしれないけど。僕は幸せなんでしょうね。ありがたいです。

最近、歌に向き合うようになったんです

──ベタな質問ですが、10年間の活動を振り返って何か思うことってありますか?

数字で考えるのってあんまり好きじゃないんですよ。そもそも数字って、物事を合理的に進めるために生まれたものじゃないですか。だからあんまり考えないようにしているんですけど、それでも10年やってきて思うのは、大橋トリオとして皆さんに知ってもらえていることは奇跡だし、それを10年もやってこれたのはもっと奇跡だなと。まあ、自分の感覚としては「ひたすら駆け抜けた」「あっという間」というだけなんですが。いいことも悪いこともありましたけど、音楽家として存在するための糧として、すごく恵まれていたと思います。ありきたりですけど、心からそう思いますね。

──心から思うことって、けっこうありきたりになっちゃいますよね(笑)。

大橋トリオ

そうなんですよ。日常で「あ、これ歌詞に使えるかも」みたいに、言葉を思い付くじゃないですか。書かないけど。でも調べると、だいたいもう当たり前に使われている歌詞なんですよ。自分の中ではハッとしても、実はすごくありふれていたりする。誰もが感動するようなシチュエーションって日常の中ではめったに訪れないんだけど、表現としてはもう出尽くしているんでしょうね。だから、その中でどう個性を出していくかっていうのは、そうとう難しい作業です。曲も同じですよ。「このメロディ、めちゃくちゃいいじゃん!」って思ったら、スティーヴィー・ワンダーだったとか(笑)。本当に考えて考えて考え抜かないと、オリジナルな曲ってできないです。

──最後に、大橋トリオという名義からも感じますけど、大橋さんはご自分の歌をちょっと突き放して捉えているところがあるんでしょうか?

ああ、最初の頃はかなりそうしていましたね。でも最近はちょっと変わりました。具体的には言えないんですけど、2年前に自分にとってものすごい出来事があって、そこから歌に向き合うようになったんです。簡単に言うと「気持ちを込めよう。言葉をちゃんと言おう」と。ライブでは音源よりも、もっとそうなっているんじゃないかな。ただ、込めすぎると歌のクオリティが下がっちゃうので、そこは気を付けなきゃいけませんけど。歌っているときは気持ちよくても、録音を聴くと「ああ、やりすぎた」ってことになっちゃうんですよ(笑)。

大橋トリオ「鳥のように」
「鳥のように」:TBSテレビ系「世界遺産」メインテーマ
「つくる世界」:TBSテレビ系「世界遺産」エンディングテーマ
2017年10月25日配信リリース / rhythm zone
大橋トリオ「鳥のように」

1000円

iTunes

収録曲
  1. 鳥のように
  2. 鳥のように (TV Version)
  3. つくる世界
  4. つくる世界 (TV Version)
大橋トリオ「SHE」
キリン「淡麗グリーンラベル」ツリーハウス篇CMソング
2017年8月30日配信 / rhythm zone
大橋トリオ「SHE」

500円

iTunes

収録曲
  1. SHE
  2. HONEY(Disco Klubb Remix)
大橋トリオ「AMY SAID」
映画「AMY SAID エイミー・セッド」テーマ曲
2017年9月27日配信 / rhythm zone
大橋トリオ「AMY SAID」

500円

iTunes

収録曲
  1. AMY SAID
  2. AMY SAID(MT'S Sunrise REMIX)

公演情報

大橋トリオ「ohashiTrio 10th ANNIVERSARY SPECIAL CONCERT "TRIO ERA"」
  • 2017年12月8日(金)東京都 東京国際フォーラム ホールA(※SOLD OUT)
WOWOWライブ「生中継!大橋トリオ 10th ANNIVERSARY SPECIAL "TRIO ERA"」
  • 2017年12月8日(金)19:00~
大橋トリオ「ohashiTrio HALL TOUR 2018(仮)」
  • 2018年3月30日(金)千葉県 千葉市民会館大ホール
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2018年4月6日(金)鹿児島県 かごしま県民交流センター 県民ホール
    OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2018年4月8日(日)福岡県 福岡市民会館
    OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2018年4月12日(木)兵庫県 神戸文化ホール 中ホール
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2018年4月14日(土)広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
    OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2018年4月19日(木)長野県 キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)中ホール
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2018年4月21日(土)新潟県 新潟市音楽文化会館
    OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2018年4月27日(金)京都府 ロームシアター京都 サウスホール
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2018年5月6日(日)宮城県 若林区文化センター
    OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2018年5月11日(金)北海道 道新ホール
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2018年5月25日(金)東京都 NHKホール
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2018年6月2日(土)愛知県 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
    OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2018年6月10日(日)長崎県 とぎつカナリーホール
    OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2018年6月14日(木)石川県 石川県立音楽堂 邦楽ホール
    OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2018年6月16日(土)大阪府 NHK大阪ホール
    OPEN 17:00 / START 18:00

チケット代:全席指定6800円

※OPEN / 開演時間に関しましては、諸事情により変更になる可能性もございます。ご了承ください。
※年齢制限:3歳以上よりチケット必要 3歳未満は入場不可。

大橋トリオ オフィシャルファンクラブ「CAFEプレタポルテ」にて、11月6日(月)13:00よりチケット先行販売。

大橋トリオ(オオハシトリオ)
マルチプレイヤー大橋好規によるソロプロジェクト。音楽大学を卒業後、2003年に映画「この世の外へ クラブ進駐軍」にピアノ演奏とビッグバンドアレンジで参加。その後も映画やCMの音楽制作や楽曲提供、サポート演奏などで幅広く活躍する。2007年に大橋トリオ名義のアルバム「PRETAPOTER」を発表し、2009年にはミニアルバム「A BIRD」でメジャーデビュー。以降もコンスタントに作品をリリースし、2010年3月にカバーアルバムシリーズ「FAKE BOOK」をスタートさせた。2017年には活動10周年を記念し、3カ月連続で配信シングルをリリース。第1弾として8月にキリン「淡麗グリーンラベル」のCMソング「SHE」、第2弾として9月に本人役で出演している映画「AMY SAID エイミー・セッド」のテーマ曲「AMY SAID」、そして第3弾として10月にTBSテレビ系「世界遺産」のオープニングテーマ&エンディングテーマである「鳥のように / つくる世界」をリリースした。